・地政学的な理由でグローバル企業のCEO*¹の32%(日本企業のCEO*² 31%)が投資計画を一時中断
・89%(日本94%)の回答者が、成長を確保するため今後1年以内にM&Aを含むトランザクションを活用する見通し
・日本企業のCEOは人材やデジタルへの投資が、企業の競争優位性を向上させ景気低迷から立ち上がるための手段と考えている
EYは、最新のM&Aに関する調査レポート「The CEO Outlook Pulse January 2023 (リンク ») 」(以下、「本調査」)を発表したことをお知らせします。本調査は、EYがグローバルで活躍する企業のCEOに調査を行い、1,200人(日本70人)の回答を分析し、今後の見通し、課題、そしてビジネスチャンスなどに関する意識を調査したものです。本調査では、2023年のビジネス環境を定義すると考えられる不確実性が浮き彫りになっています。CEOの大多数である98%(日本99%)が景気低迷に備えていますが、その期間や深刻さに関する予測に関しては意見が分かれているようです。グローバル全体のマクロ経済に関する回答を見ると、深刻さは中程度と考えているCEOが48%、重大な深刻さとの回答が50%となっています。また、日本企業のみの結果を見ると、CEOの大部分(74%)が自社の運営拠点における深刻な景気後退に備えていると回答しています。ただしその期間については一時的と考えているとの回答が41%になった一方、中長期的との回答も33%と、多くのリーダーがこれまでの経験値から景気後退への予測が難しい現状が明らかになりました。
本調査によると、グローバル全体のCEOの28%(日本29%)が、投資計画変更の主な理由として、制限の多い法規制および貿易・投資関連政策を挙げています。投資計画変更の主な理由が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連の課題(19%)(日本16%)を上回るのは、2020年以来初めてとなります。地政学的理由により、CEOの97%(日本97%)が計画を見直しており、44%(日本36%)が計画していた投資を延期、サプライチェーンの見直しを行ったとの回答が41%(日本36%)、また、およそ3分の1(32%)(日本31%)が、計画された投資を一時中断しています(複数回答)。
本調査に回答したCEOの約3分の1(32%)(日本34%)が、自社の将来成長に対する最大のリスクとして、金融政策の方向性の不透明さ、投入価格の上昇(31%)(日本36%)を挙げています。また日本を含むアジア・パシフィック地域のCEOがコロナ関連の不透明性を最大のリスクと考える割合は、前回の調査から大きく減少しました(日本の結果2022年10月調査時の44 %から21%へ減少)。
EYJapanストラテジー・アンド・トランザクションリーダーの梅村 秀和(うめむら ひでかず)のコメント:
「予想している経済停滞が穏やかなものであれ、厳しいものであれ、今回の景気後退がこれまでの経験だけを生かして予測できるものではないことは多くのCEOが認識しているようです。地政学的再編からグローバル・サプライチェーンの再考まで、新たな要因の組み合わせが、既存の問題に加わり、投資計画を脅かしています。新型コロナウイルスに関係する不確実性への懸念が、今回は日本を含むアジア・パシフィック地域の間でこれまでと比べて低い数値となりましたが、これは中国のゼロコロナ政策の緩和や国境の再開が大きく関わってきていると思われます。本格的なWith コロナ時代への突入を意味し、CEOはこの経済不況を乗り切るための喫緊の課題へ対策をシフトしていることを示しています。他国と比べるとまだ低い日本のインフレ率が今後上昇し、投入価格および資本コストの上昇への懸念が今後顕著になると予想されます。そのためCEOにとっては自国を含む各国政府の財務政策および法規制が最大の関心事となっているようです」
CEOは自社成長の手段としてディール締結およびサステナビリティと人材への投資に注目:
CEOは経済見通しに懸念を抱いていますが、競争で優位に立つための機会を狙っています。本調査に回答したCEOの大半(89%)(日本企業94%)にとっては、今後1年間で何らかのディールを成立させることが、引き続き優先事項となっています。こうしたCEOのほぼ半数(46%)(日本40%)はM&Aを、58%(日本47%)はジョイントベンチャーまたは戦略的提携を、34%(日本27%)はダイベストメントを推し進める計画です。
大胆に方向転換して、さらに強く、より競争力を増して、今回の経済停滞から立ち上がるために、CEOの39%(31%)は、戦略およびサービス提供のコアとして、ネットゼロや他の環境的・社会的優先事項を含むサステナビリティへの投資を増やす計画です。さらに、3割以上のCEO(36%)(日本34%)が、従業員のウェルビーイングやスキル開発を含む、人材への投資を増加させる計画です。また、大半のCEO(70%)(日本75%)が、従業員の離職を減らし、新たな人材を引きつけるために最も重要なのが、フレキシブルな働き方であることに同意しています。
EY Japan ストラテジー・アンド・トランザクション トランザクション・アンド・コーポレートファイナンス リーダーの川口 宏(かわぐち ひろし)のコメント:
「CEOは自社をトランスフォームし、将来成長できる組織にするための戦略を注意深く模索しています。グローバル全体では、スタートアップ企業への投資が直近で取るべき戦略的アクションとして上位となる結果でしたが、日本企業は同投資を必要と認識しつつも、やや慎重な姿勢がうかがえる結果となっています。これまでの経験から投資リスクをできるだけ抑制することを目的として、ジョイントベンチャーやアライアンスを選択するCEOが多いことも納得できます。今後はトランザクションにおいても再編を考える企業のCEOも増えると考えられます。また喫緊の課題として、日本企業のCEOが従業員の離職防止、人材プールの拡大、ニューノーマル時代に急激に発達した新しい働き方への適応を考え、その施策にフォーカスすることも想像に難くありません」
また梅村も次のように述べています。
「逆境に直面しているとき、コストの削減や投資の減速、規模の縮小など企業は生き残るための防衛的な手段に訴えがちです。ただし、2023年は困難な時期に組織を導き、競争優位な立場を得るための戦略的で確固たるリーダーシップが求められています」
本調査のすべての内容は、ey.com/CEOOutlook (リンク ») でご覧いただけます。
*¹グローバル企業のCEO=日本企業を含むグローバルでビジネスを展開している企業の回答者。本調査では全回答者がこれに該当する。
*²日本企業のCEO=今回の調査で回答のあった企業のうち、日本に本社を置くグローバルで展開している企業。
※本ニュースリリースは、2023年1月11日(現地時間)にEYが発表したニュースリリースを翻訳し、日本の見解を加えたものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。
英語版ニュースリリース:
Majority of CEOs fear recession could be worse than the financial crisis (ey.com) (リンク »)
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<EY 2023 CEO Pulse Surveyについて>
「EY 2023 CEO Pulse Survey」は、世界の主要企業に影響を与える主なトレンドや動向について、また、今後の成長と長期的価値創造に対するビジネスリーダーの期待に対し、有益な知見を提供することを目的としています。
本調査は、世界の大企業の経営層を対象に、フィナンシャルタイムズ社のLongitude Research Limitedが定期的に実施しているものです。
2022年11月、LongitudeはEYの代理として22カ国、6セクターの1,200名のCEOを対象に調査を行いました。回答者が所属するセクターは次の通りです:アドバンスト・マニュファクチャリング・アンド・モビリティ、消費財・小売、エネルギー・リソース、金融、ヘルスサイエンス・アンド・ウェルネス、TMT(テクノロジー、メディア・エンターテインメント、テレコム)。
調査対象企業の年間の全世界売上別構成は次の通りです:5億米ドル未満(20%)、5億~9億9,990万米ドル(20%)、10億~49億米ドル(30%)、50億米ドル以上(30%)。
CEO ImperativeシリーズではCEOが自社の未来を再定義するために役立つ、重要な答えとアクションを提案しています。本シリーズで紹介している知見についてはey.com/ja_jp/ceoをご覧ください。
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