独立系BIベンダーの生き残りは厳しいとする声もあるが、Sheedy氏は「SASのような大手であれば十分生き残るだろう」と話す。「SASは優れたBIプラットフォームを持っている上、特に分析の分野ではトップを走り続けている。データマネジメントツールも充実してきており、優良顧客も数多くついている」とSheedy氏。
同社のプラットフォームについてSheedy氏は、「SASのソフトウェアを一部でも購入すれば、ユーザーはSASのプラットフォーム全体を手に入れたことになる。つまり、CRMの分析機能をSASから購入したユーザーが新たに人事関連の分析機能を購入したいと思った場合、すでにその機能はSASプラットフォームに組み込まれている。そのため新たなインテグレーションは必要なく、機能をオンにするだけで使えるようになる」と説明する。
SASはあくまでもBI専業ベンダーのため、IBMのように情報マネジメントプラットフォーム全般をカバーしているわけではない。ただ、SASも広範囲なソリューションに対応するため、例えばデータウェアハウス分野でTeradataと提携するなど、自社にないソリューションはパートナーシップでカバーしている。それに、「現時点ではデータを全く活用できていない企業がまだ多い。そういう企業にとっては、SASの分析ツールを導入するだけでも十分意味がある」とSheedy氏は述べ、SASが強みとする分野だけでもまだ飽和状態に達していないとした。
今後のBIの方向性は?
「BIの市場は確実に広がっている。顧客が欲しいという理由だけでBIベンダーを買収するのもわからないではないほどの成長率だ」とSheedy氏。しかし、市場の成長と同時に新しいイノベーションが求められていることも事実だ。BIのイノベーションの方向性についてSheedy氏は、「人間が判断するのではなく、アプリケーションがさまざまな判断をする組み込み分析や運用BIといわれる分野での発展が進むだろう」と話す。例えば、サプライチェーンではすでに実践されているように、在庫が一定の個数を切った場合自動的に発注システムが作動する、といったようなものだ。このように「人間がかかわらずしてアプリケーションが決断を下すといったことは、ほかにもさまざまな分野で活用できるはずだ」(Sheedy氏)という。
こうした新しい分野に乗り出しているベンダーはいるのかとの問いにSheedy氏は、「SASはすでに充実した分析ツールを持っているため、この分野でもいいポジションにいる」という。ただし、この分野のソリューションは業界によって求められる機能も異なってくるため、業界別にカスタマイズが必要だ。SASが業界別ソリューションに力を入れているのもそのためだ。
現在、いったん落ち着いているように見えるBI業界の買収だが、Sheedy氏は今後も統合の動きは続くと見ている。特定の業界に向けたニッチなソリューションのみを提供するBIベンダーが、さらなる業界別ソリューションを求める大手の買収ターゲットとなるのはもちろん、Sheedy氏はデータマネジメント市場も断片的になっていて統合の余地があると指摘する。BI市場の動きには当面目が離せそうにない。