「ターゲティング」でお相手像を描こう
次にターゲティングによって、whoを明らかにしなければならない。ターゲットとなるお相手像を明らかにしていこう。ここではイメージの基準として、社会学や心理学における対人認知の研究で知られている「類似性」あるいは「非類似性」に関する知見を採用することにしよう。
類似性とは、環境や容姿、性格、能力などが他者と似ている度合のこと。類似性が、相手の魅力を増加させ、逆に非類似性が相手に対して相補的に機能する、といった知見が報告されている。相補的な機能は相補性とも言われ、相手が不足しているものを補う役割を果たすことだ。
ここでは、いわゆる「似た者夫婦」か「相互作用型夫婦」を目指すことにする。A氏は、結婚相手に対して「現在は働いていて、結婚後は仕事と家庭を両立できる人」を条件にしたと仮定し、類似性と非類似性をもとに、相手の職業をピックアップしてみた。
ターゲットを明らかにすることで生まれるメリットのひとつは、求めるタイプのお相手が紹介されやすくなる点だ。たとえば「旅行代理店で働いている女性を紹介して」と具体的に頼んでおくと、「旅行代理店……、あっ、○○子さんがいいかも!」と思い出しやすいのだ。
「AIDMAの法則」で無理せず段階的に
さて、ターゲットが固まったら、それらの女性たちとの出会いの場、お相手と過ごす時間を有効活用し、ゴールへ向かって一直線に進まねばならない。その具体的なアプローチの方法として、「AIDMA(アイドマ)の法則」と呼ばれる消費者心理プロセスに基づいたプロモーションを適用してみよう。
ちなみに「AIDMA」は、広告や宣伝に対して消費者がたどる心理的なプロセスを表した略語だ。プロセスに沿って、「Attention(注意)」「Interest(関心)」「Desire(欲求)」「Memory(記憶)」「Action(行動)」の頭文字となっている。
行動計画として、図のような5段階のステップを考えてみた。この中でポイントとなりそうなのが、「Desire」のプロセスだ。
おそらく出会って3回目か4回目のデートのタイミングであろうか。このプロセスは顧客の「欲求」に訴えるプロセスである。婚活している女性の欲求は「結婚」そのものだから、デートしてみて「いい感じの人だな、もっとこの人のことを知りたいな」と思ったら、はっきりと「結婚を前提としたお付き合いを」と言葉にすることをお勧めしよう。お相手からOKが得られたときから、明確に結婚が2人の目標地点になる。そして、2人の力で目標地点にたどり着いたら、そこから人生の新たなゴールを設定し、一緒に戦略を立てていけばいいのだ……。
さて、前回と今回で「婚活」を戦略的に考えてみた。くれぐれもお断りしておくが、ここまではあくまでも物事を「戦略的に考えるトレーニング」である。実際の婚活の役に立たなかったという方には、どうかお許しくださるようお願いしたい。
次回からは、これまで練習してきた「戦略的な考え方」をビジネスの中で実践する方法について考えていこう。