とはいえ、ビジネスとして顧客の囲い込みを図るのは当然だ。むしろ、当初進めたユニークな協業形態にマイクロソフトのクラウド戦略における試行錯誤を垣間見ることができて興味深い。
「オープンシステムを提供する当社としては、今後もWindowsプラットフォームに対してコミットしていく」
日本ユニシスの黒川茂 代表取締役社長
日本ユニシスが先頃、2014年3月期(2013年度)中間連結業績について記者説明会を開いた。黒川氏の冒頭の発言は、その会見の中で、銀行の勘定系システムにも採用しているWindowsプラットフォームへのコミットを改めて表明したものである。
2013年度中間連結業績については、売上高が前年同期比2.9%増の1281億円、営業利益が同43.5%減の24億円、経常利益が同38.2%減の27億円となり、純利益は16億円と前年同期25億円の赤字から黒字に転換した。
黒川氏はこの業績について、「売上高は期初の計画で減収になると見ていたが、増収を果たすことができた。ただ、営業利益は前年同期に計上した高採算案件の反動をカバーできず、減益となった。売上高は今後も好調に推移する手応えがあるので、利益を押し上げるようにしたい」と語った。
2013年度の通期連結業績については、売上高で前期比2.2%増の2750億円、営業利益で同44.4%増の120億円、経常利益で同35.9%増の113億円、純利益で同5.6倍の70億円との期初の予想を変更していない。
ちなみに同社では2012年度から中期経営計画に取り組んでおり、2012年度実績で3.1%だった売上高営業利益率を、2013年度は4.4%に、同計画の最終年度となる2015年3月期(2014年度)は5.0%(売上高2800億円)に引き上げる構えだ。
黒川氏は中期経営計画の取り組みについて、「システムインテグレーション(SI)や運用・保守サービスといったコアビジネスの拡大によって収益基盤の安定化を図るとともに、顧客との共創/BPOビジネスモデルの確立や社会基盤ビジネスへの進出によって、持続的な成長軌道を形成していきたい」と説明した。
中でもコアビジネスの拡大については、ここにきて10行目となる地銀勘定系パッケージ「BankVision」の新規採用が決定。大手信用金庫の勘定系システムも新規獲得。さらにANA国内線旅客システムを刷新し、安定稼働を続けているなど、好調な流れにあるという。
注目されるのは、これらの勘定系および基幹系の大半がWindowsプラットフォームによるオープンシステムであることだ。同社は大規模基盤構築力、サポート力、業務知識・ソリューション力を強みとしているが、それらをWindowsプラットフォームによるオープンシステムに注いできたことで、確かな実績を上げつつあるようだ。
ただ、気になるのは、マイクロソフトがここにきて「クラウドOS」ビジョンのもと、クラウド化をにらんだWindowsプラットフォーム構想を掲げていることだ。勘定系および基幹系システムを手がける日本ユニシスもその流れを踏まえて、引き続きWindowsプラットフォームにコミットしていくのか。
会見の質疑応答でのこうした筆者の質問に対し、黒川氏が答えたのが冒頭の発言である。さらに同氏は、「クラウドサービスは今後、さまざまな形態で企業に利用されていくだろう。当社のソリューションもそうしたニーズにしっかりと対応していきたい」と語った。
筆者としては、クラウドOSビジョンに困惑しているところもあるのではないか、との推測から質問したものだが、黒川氏の発言からはむしろマイクロソフトとさらに連携を深めていこうという姿勢がうかがえた。マイクロソフトにとっては頼もしいパートナーといえるだろう。
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