潜在顧客を掘り起こし、きめ細かに応対することで収益拡大を狙う、グローバルの大手自動車メーカーの事例を見てみよう。この企業は、車載システムから顧客データを得る仕組みの構築を検討しており、ITはビジネス目標を実現する有効な手段ととらえていた。
検討の結果、社内の顧客管理システム(CRM)と、社外のソーシャルネットワークサービスのデータを結びつけるマーケティングツールの導入を決定。顧客ごとのニーズにきめ細かく対応する営業、マーケティング体制を実現した。
この新しい仕組みは、顧客セグメントを特定し、最適なチャネルを通じて広告を打つことで、潜在顧客にアクセスできるようにするものである。事実、この企業の顧客への洞察は深まっており、顧客のレスポンスも大幅に向上させている。
同様のシナリオは、規制や情報セキュリティへの対応が主なIT投資のテーマとなっている、ユーティリティ、通信、金融業界にも当てはまる。
また、A.T. カーニーでは、ITがビジネスの主要な役割を担うようになった今、CIOが取締役に加わるべきかどうかについても調査した。日本ではCIOはIT担当役員と解釈されているが、海外ではCIOが役員や取締役である例は必ずしも多くはない。この調査の結果、約45%が「2020年までにCIOが取締役を務めることになるだろう」と回答している【図表2】。
ただし、ITが「ビジネスのコア」となっていない企業ではこの必要性は低く、業界によって回答の傾向は異なっていた。ITが「ビジネスのコア」である通信・ハイテク・メディアや金融の各業界では、より多くの企業において、CIOが取締役をつとめることになると予想していた。実際に、Citigroupは近年、GEの前CIOであるGary Reiner氏を取締役に任命するなど、この動きが進展しつつある。
一方で、ITが補助的な役割しか担っていない、消費財メーカーや小売、素材メーカーにおいては、CIOが取締役をつとめる、と回答した割合は少ない結果となっている。
第2回に続く。
監訳:A.T. カーニー 東京オフィス プリンシパル 安茂 義洋