モノのインターネット時代のCIOやIT部門の役割--ガートナー池田氏

齋藤公二 (インサイト)

2014-05-07 07:30

 ガートナーが4月23〜25日に開催した「ITインフラストラクチャ&データセンター サミット 2014」のクロージング基調講演に、ガートナー リサーチのリサーチ ディレクター池田武史氏が登壇。「あらゆるモノやコトがつながる時代に企業が準備すべきこと」と題し、"モノのインターネット"時代において最高情報責任者(CIO)やIT部門が担うべき役割を解説した。


ガートナー リサーチのリサーチ ディレクター池田武史氏

 ガートナーの定義によると、モノのインターネット(Internet of Things: IoT)とは「物理的なモノ(物体)のネットワークである。また、その物体には、自らの状態や周辺環境をセンシングし、通信し、何かしらの作用を施すテクノロジが埋め込まれている」ものだという。ガートナーの予測では、2020年に330億個を超えるモノがつながり、1兆9000億ドルの経済価値を創出する。330億個のうち60億個はPCやスマートフォンなどのパーソナルデバイスで、残り270億個は、車や工場、プラント、街角の照明といったあらゆる機器だ。

 「ここで注目すべきはモノではなく、その内部や周辺で起こっているコトだ。たとえば、ここにエビアンのペットボトルがある。これがモノのインターネットにつながって、中身が減ったことをセンサで調べられたとしても、ほとんど何も起こらないし、たいして面白くない。だが、過去1時間以内に中身の水が世界中でどのくらい減ったか、誰が持っていた水が減ったかといった情報が瞬時に集められたとすると、そのことでいろいろとビジネスを考える人がでてくる」

 モノのインターネットという言葉がモノ限定で価値を少しイメージしにくいような場合は「すべてのインターネット(Internet of Everything: IoE)」という言葉が使われることもある。モノ、ヒト、場所、情報などのすべてがインターネットを介してつながり、新しい価値を生み出すことを示したものとなる。もっとも池田氏自身は、すべてがつながる世界ということで「Connected World」という言葉を使うことが多いという。

 では、そのような、あらゆるモノやコトがデジタル化されインターネットに接続された世界では、いったい何が起こるか。すでに起こっているものとしては、自動車が外部とつながるケースがある。たとえば、車両の実際の走行データをもとに走行可能な道路を地図で示すホンダの「インターナビ・リンク」は東日本大震災や先日の大雪で実際に活躍した。ゼットエムピーが提供する「コネクティッドカー」向けの接続ツールやSDKは10万円代から入手できるなど、だいぶ身近になってきた。

 農業もそうだ。富士通やNECがこれまでの勘に頼った農業をITで近代化しようと、農作物の栽培を数値化し、他の農地への展開などをはかっている。また、物流では、ヤマト運輸のように、データを共有して効率的な配送システムや顧客との関係構築を進めようとしている事例がある。製造業やプラントでは、現場で発生したイベント情報を共有し意思決定をする「smart-FOA」の取り組みや、日立製作所や村田機械が支援する稼働中の工作機械やプラントの状態をリアルタイムに把握するためのシステムなどがある。

 医療やヘルスケアの分野では、医師や患者の負担を減らすセンサや、遠隔医療のためのロボットを使った取り組みが進められている。宇宙開発でも、宇宙ロケットの管制システムを小規模化し、数台のノートPCだけで管制しようというプロジェクトがある。

 すでに身の回りを見渡すだけでかなりのものがインターネットにつながっていることがわかる。たとえば、テレビやデジカメ、エアコン、冷蔵庫、体重計、血圧計、時計、メガネ、歯ブラシ、テニスのラケットなどだ。

 「あらゆるモノやコトがつながることで、新しい世界が生まれている。従来の役割分担を超える、新しいビジネススキームに対して、すでに取り組みを始めている企業も少なくない。すべての企業がこの新しい世界での動向に対し、警戒すべき状況になりつつある」

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