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業界クラウドの中核を目指すクラウドストレージ:ボックス古市社長 - (page 2)

田中好伸 (編集部)

2015-05-14 20:47

 2014年の大規模な個人情報窃盗事件を見れば分かる通り、悪意のある個人が社内にいるという事実から目をそらすことはできない。誰が盗んだのか特定できない状況では、どうやって盗んだのか突き止めることもできない。こうした状況に対してBoxはデータをダウンロードできないように設定できる。プレビューを見るだけだ。「GEがBoxを導入したのは、そうした経験があるため」という。

なぜシャドーITが生まれるのか

 中央省庁が外部のメーリングリストサービスの設定を間違えていたために、関係者以外の誰もが見られるようになっていたという問題が2013年7月に報道された。“シャドーIT”のリスクが顕在化したと言える。

 シャドーITは従来、スマートフォンやタブレット、PCなどの私物端末の業務での利用を解禁するBYOD(Bring Your Own Device)とは正反対に、エンドユーザーがIT部門の許可を得ずに端末を持ち込んで業務システムにアクセスする状況を指していた。

 だが、エンドユーザーがIT部門の管理しないところでSaaSを中心にクラウドサービスを活用する“野良クラウド(rogue cloud)”もまたシャドーITといえる。IT部門が管理していないクラウドや端末から洩れてはいけないデータが意図せずに社外から出てしまうというリスクがあるからだ。

 シャドーITが生まれる背景には、企業のシステムや端末がエンドユーザーの実情にあっていないからだ。個人情報流出などに代表される事件や事故を防ぐために、ノートPCの社外への持ち出し禁止などがその典型だろう。


古市氏は日本ベリサインの代表取締役社長を経験している

 日本企業のIT部門は長い間「コスト削減、リスク低減を優先させてきたが、ともするとエンドユーザーの生産性を犠牲にすることもある」(古市氏)

 コスト削減、リスク低減という意識からか、メールやグループウェア、ファイルサーバに代表される情報系システムは、悪く言ってしまえば2000年から進化していないとも表現できる。メールやグループウェアなどを提供するベンダーは、製品に新しい機能を盛り込んでいるが、ユーザー企業の側で積極的に導入する機運に欠けていたとも言い表せる。

 その間に、スマートフォンやタブレットが普及するとともに、ITに対する感覚も大きく変わってきた。「スマートフォンは気持ちよく使えるのに、会社のアプリケーションはどうして使いにくいのか」――。ITコンシューマライゼーションの影響だ。

 加えて、業務を取り巻く環境も大きく変わってきている。企業の規模や業種によって異なるが、社外とのやり取りが大きくなっているとともに、紙ではなくデジタルデータがベースとなっている。メールに添付してあるファイルを開くところから仕事が始まるとも言える。しかも、やり取りされるファイルは音声や動画もあり、大容量になっている。

 2000年ぐらいの情報系システムでは、現在の業務の実情にまったくあっていない。Boxのようなクラウドストレージが求められる背景はここにある。

 「会社のアプリケーションはイケてないから、業務をスムーズに進めたいという思いからエンドユーザーは勝手に社外のクラウドを使う。そこに悪意はない。これがシャドーITになる」(古市氏)

企業用途を拡大

 古市氏は、Boxが提供するサービスの性格について「“企業向けファイル同期共有”から“企業向けコンテンツコラボレーション”に進化している」と表現する。

 ここで言う企業向けファイル同期共有(Enterprise File Sync & Share:EFSS)は、ファイルを複数のエンドユーザーで共有するとともに、暗号化でセキュリティを保持し、モバイル端末にも対応しているというコンセプトだ。EFSSの機能をより拡大させたのが、企業向けコンテンツコラボレーション(Enterprise Contents Collaboration:ECC)になる。

 ECCでは、EFSSの機能に加えて、(1)Box上でのドキュメント管理を含めたコラボレーション、(2)デジタルのファイルが業務プロセスを流れることを踏まえた“ワークフロー”、(3)Box上に存在するファイルに対する“ガバナンス”、(4)ECC以上の“セキュリティ”――という4点が重要としている。

 ECCに拡大するBoxでは、クラウド上にデータが置かれるが、そこから動くことはない。そのデータにコメントに貼り付くことになる。これが(1)のコラボレーションだ。

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