攻めのIT投資とともにシャドーITが増加--ガートナー調査

山田竜司 (編集部)

2015-03-03 14:46

 ガートナー ジャパンは3月3日、「2015年度国内IT投資動向」を発表した。ガートナーが2014年10月から12月にかけて国内企業703社を対象に実施した調査によると、2015年度はIT投資の増加ペースがやや鈍化するが、ビジネスの「変革」「成長」につながる投資は引き続き増加する見通しという。一方で、IT部門が把握していないIT投資が年々拡大しているという結果が出ている。

 暦年の金額ベースによる日本企業のIT支出規模予測によると、2014年は、景気が底堅く推移したことに加え、Windows XPの保守切れや消費税増税に向けたシステム対応が2013年中に完了せず、期中にずれ込んだことや、中堅中小企業向けの設備投資減税の影響もあり、前年比2.5%増だった。2015年は、2013年から2014年にかけての比較的強いプラス傾向の反動もあり、0.6%の増加にとどまるとした。


日本企業のIT支出規模予測 出典:ガートナー (2015年1月)

 2015年度の投資額そのものは微増だが、2013年11月調査に引き続き、今回の調査でも、「攻め」のIT投資へと転換を図ろうとする投資傾向が見られるという。

 今回の調査では、2014年度のビジネス目的別に見た日本企業のIT予算の内訳は、76%が「運営」(継続的なビジネスのオペレーションを実現するIT支出。固定費なども含む) に費やされ、ビジネスの「成長」「変革」のための予算はそれぞれ14%と10%にとどまる。一方、いずれの目的に対しても過半数の企業が「不変」を選択していおり、変化を嫌う日本企業の投資傾向が見られるものの、ITの成熟とともに削減傾向に転じている「運営」と比較し、「成長」「変革」のための投資を相対的に増加させる企業の比率は高まるという見通しを示した。

 この背景には、新規参入企業の脅威や、新たな代替技術の登場、規制環境・制度の変化などがあるという。従来保守的と言われた日本企業でも、市場における強いポジションを確保することで競争優位を獲得し、持続的な成長と変革を実現しようという意識が強まっているとした。


ビジネスを軸とした2015年度IT総予算額の増減傾向 出典:ガートナー (2014年11月)

 今回の調査では、IT部門がビジネスのニーズに対応しきれず、ビジネス部門が独自にIT投資を行うケースが増加しつつある状況も浮き彫りなったという。

 過去3年間のIT部門と利用部門のIT予算の管理状況について尋ねた結果によれば、「利用部門が管理するIT予算は存在しない」の比率が減少する一方、「IT部門が管理・把握していない利用部門独自のIT関連予算が存在」する企業の比率は全体の2割以上へと増加し、「利用部門に独自のIT関連予算が存在するか否かが不明」の比率も少ないながら増加傾向が続いているとした。

 調査の回答者は主にIT部門であることから、実際は、いわゆる「シャドーIT(情報システム部門が把握しないまま現場で利用されている情報システム) 」の比率が水面下でさらに拡大している可能性を指摘している。


IT総予算における利用部門が管理する予算状況出典 出典:ガートナー (2014年11月)

 ガートナーは、環境の変化が速い状況では、IT投資に関する権限をある程度IT部門から各ビジネス部門に移譲することは有効とした一方、過剰な権限移譲は、IT投資の戦略的方向性を不明確にしてしまい、場当たり的な対応が多くなるリスクをはらむと指摘。各企業で、IT部門が中央集権型で管理するシステムと、ビジネス部門が分散型で管理するシステムの切り分けが意識的に進むと予測している。

 IT部門が直接管理するIT投資の比率は現在の水準よりも低下する見通しであるものの、中長期的には、個々の企業の戦略と経営環境に基づき、分散型とのバランスが取られるとの見解を示した。

 昨今のビジネス部門におけるIT投資額の拡大に関しては、全社的な経営課題を部分最適だけで解決することは現状では考えにくいとし、当面のところIT部門がメインのビジネスプロセスを支える構図は変わらないとしている。

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