ノークリサーチは8月18日、中堅・中小市場における2014年夏のIT投資に関する定点観測調査レポート「ノークリサーチQuarterly Report 2014年夏版」を発表した。業績が厳しい中でも、多くの調査対象企業が、ITを活用しようとする意図が見えるという。
本調査は、同社が4月、7月、10月、1月の年4回実施している調査で、日本全国の年商500億円未満の国内民間企業1000社(組立製造業、加工製造業、建設業、流通業、卸売業、小売業、IT関連サービス業、サービス業)を対象とし、経営やITに関わる経営層、管理職、社員から得られた回答を基にしている。今回の夏版は7月の調査によるもので、主なトピックは以下の通り。
- 経常利益DIが下落するもIT投資DIは上昇、中堅・中小企業のIT投資マインドに変化の兆し
- 7月以降の経常利益DIは改善の見込み。商品やサービス拡販を目的としたIT活用を提案
- 年商100億円を境にIT投資額は増加と減少に分かれる、それぞれの要因把握が不可欠
- 消費税率改正の影響が薄まるのを単に待つだけでは業績回復を期待できない点に注意
- 業種の特徴を踏まえた上で、「今、IT投資をすべき理由」を具体的に明示する必要がある
同レポートでは毎回、各四半期以降のIT投資予算額が前四半期と比べてどれだけ増減するかを尋ね、「増える」と「減る」の差によって算出したIT投資意欲指数「IT投資DI」と、同様に経常利益変化の回答から算出した経常利益増減指数「経常利益DI」を分析している。
今回は、経常利益DIが4月の消費税率改正の影響などが依然として残っており、前回の8.3から4.3ポイント下落して4.0となった一方、IT投資DIについてはやや持ち直す傾向が見られ、前回の2.9から1.2ポイント上昇して4.1となっている。
経常利益DIが下落している一方で、IT投資DIが上昇するという動きは普段はあまり見られない傾向であり、中堅・中小企業のIT投資に対するスタンスが以前とは少し変化してきている可能性があるという。
7月以降の経常利益の見込についての回答を、7月時点に対する増減指数(経常利益DI見込)として集計したところ、4月から7月にかけては全ての年商帯において経常利益DIが下落している一方、7月以降については多くの年商帯において、経常利益DIは微増するとの見方が示され、特に年商5億~50億円の上昇幅が大きいことが分かる。
4月の消費税率改正を主な要因とする経常利益の減少は、7月現在が底であり、以降は徐々に回復していくと予想される。
この年商5億~50億円の企業層で経常利益減少の理由を聞いた結果からは、「7月以降には消費税率改正の影響も弱まり、商品やサービスの販売量が回復する」という期待感が強いことがわかる。
この傾向を踏まえると、同年商帯に対するIT活用の提案としては「コスト削減」を目的としたものより、「商品やサービスの拡販」につながる解決策の提示が有効だとしている。
7月以降の見通しについては、業種や企業規模などによりばらつきがあり、例えば小売業では消費増税の反動よりも「売り上げが低迷し、IT投資費用を捻出できない」「Windows XPのサポート終了対策が終わったので、今はIT投資を控える」「物価や金利の上昇に備えて投資は控えておきたい」といった理由が上位になっている。
これに対しノークリサーチは、小売業のこうした状況を打破するためには「今、IT投資をすべき理由」を提示する必要があるとする。例えば、小売業であれば「人件費は今後もしばらく高止まりが予想されるため、少ない人材でも業務が回るような仕組みをITを駆使して構築する」などの提案が考えられるとしている。