デジタル化はビジネスの世界を一変させた。今や、商品の売買から事務・契約手続き、決済に至るまで、ビジネスのあらゆる場面にITが浸透しており、ITはビジネスの成長をもたらすエンジンとなる。
今日の企業にとって、ITは単なるツールにとどまらず、競争力の源泉となっている。例えば、eコマースにおいて、購買履歴などの顧客データに基づいて顧客の潜在ニーズを探りあて、最適な商品をレコメンドする仕組みが既に実現されており、ITは企業の収益拡大に貢献している。
ビジネスのアナログからデジタルへの移行がさらに進むことで、IT需要は高まり続け、その結果IT部門への負荷はますます高まるであろう。ビジネスのデジタル化がさらに進み、市場での競争が激化することで、ITはこれまで以上に必要不可欠なものとなる。
2020年、ITはどうなっているだろうか。A.T. カーニーの調査によると、2020年までの間に、3分の2の企業において、ビジネスの全領域で積極的なIT投資が継続され、特に営業、顧客接点領域が重点的な分野として位置づけられていることが分かった。
これは、企業の総予算に占めるIT投資の割合が増え、ITへの期待値がさらに高まることを意味するだけでなく、今後のITに対する取り組みを誤ると途端に危機にさらされることを示している。この重圧に立ち向かうため、先進的なIT部門は、ビジネス部門との連携をより一層進めていくことになる。しかし、現実にはビジネスに精通したIT要員は企業の内外問わず不足しており、容易なことではない。
今後のIT課題の根本は、需要と供給の問いに答えていくことである。先進企業は、この課題と対峙し、ITのコストと価値のバランスを最適化させ、中長期的な成長を実現するだろう。
本稿では、3回にわたって需要と供給の側面から、ITの未来像を考察したい。
需要サイド: ビジネスにおけるITの役割を進化させる
A.T. カーニーは、大規模・中規模グローバルリーダー企業の最高情報責任者(CIO)150人以上に対し、調査を実施した。その結果、以下の通り、2020年までにIT需要は急速に高まることが分かった。
- 約85%の回答者が「IT需要サイドの変化は今後数年間に起こる」と予想
- 約75%の回答者が「より短期間のIT導入を迫られ、これに対応することがIT部門の重要な成果指標になる」と予想
また、61%の回答者が、営業・顧客接点が今後のIT投資の主な領域になると回答している【図表】。かつて、業務プロセス改善や生産・製造ラインの自動化に振り向けられていたIT投資は、顧客ごとに特化したマーケティングキャンペーンやデータ分析、オンライン受発注システムといった顧客リレーションの維持、向上へと移行しつつある。