人口動態を踏まえてIT活用意向の把握を--ノークリサーチ

NO BUDGET 2015年02月05日 07時00分

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 ノークリサーチは2月3日、同社が実施した中堅・中小市場における2014年秋のIT投資に関する定点観測調査の分析結果を発表した。中堅中小企業では、IT投資、経常利益がともに改善傾向にあることが分かった。

経常利益DIは2.8、IT投資DIは3.1へと小幅な改善、消費税率8%改正や円安の影響が存続


 分析によると、年商500億円未満の中堅・中小企業全体におけるIT投資DIと経常利益DIの変化(上図)を見ると、2015年1月時点のDI値は2014年10月時点と比較して、IT投資DIが1.2から3.1へ1.9ポイントの改善、経常利益DIが0.5から2.8へと2.3ポイントの改善となった。

 ただし、経常利益の減少理由として、8%への消費増税や円安による原材料高を挙げる割合は減っておらず、これらの影響がまだ存続しているという。また、年商別、業種別、所在地別で見た場合に留意すべき事項も幾つかあり、さまざまな企業属性を踏まえたアプローチが重要となってくる。

 なお、IT投資DIは、今四半期以降のIT投資予算額が前四半期と比べてどれだけ増減するかを聞き、「増える」と「減る」の差によって算出したIT投資意欲指数で、IT投資の実績値ではなく、投資意向を反映した見込み値を示す。

 一方の経常利益DIは、前回調査時点と今回調査時点を比較した場合の経常利益変化を尋ね、「増えた」と「減った」の差によって算出した経常利益増減指数を指し、今回2015年1月時点での値は2014年10月時点と比較した場合の経常利益増減の実績値となっている。

小規模企業は依然厳しい状況、短期の業種別では流通業(運輸業)と組立製造業が有望


(ノークリサーチ提供)

 IT投資DIの変化を年商別にみると、年商5億円以上の企業層ではIT投資DI値が横ばいまたは改善している一方、年商5億円未満の小規模企業層では依然としてDI値がマイナスであり、前四半期と比べ5.5ポイント下落している。

 業種別では、流通業(運輸業)で25.9ポイントおよび組立製造業で8.3ポイントの改善、IT関連サービス業で9.1ポイントの下落である点を除き、いずれの業種も±5ポイント未満の小幅な変化となっている。

 IT関連サービス業については経常利益DI値は改善しているものの、2014年4月の消費税率8%改正やWindows XPサポート終了に続く大きな需要がすぐに見込めないことから、自らのIT投資に慎重になっているものと考えられる。

 ただし、2015年後半に向けてはマイナンバー制度やストレスチェック義務化などの新たな法制度も控えており、それに伴うIT関連サービス業の動きも活発になると予想される。

地域格差は業種も含めて考える、「規模と距離の制約」がなくなる将来にも備えるべき


(ノークリサーチ提供)

 大都市への人口集中などにより、「企業のIT活用においても地域格差が広がっているのではないか?」といった疑問を持つ者も多いだろう。

 年商5億円以上~500億円未満の中堅・中小企業における今回のDI値を首都圏を含む「関東地方」、名古屋を中心とする「中部地方」、大阪を中心とする「近畿地方」、および「その他」に大別して所在地域別の動向をみると、経常利益DIでは関東地方が突出しているが、IT投資DIの差はそれほど大きくなっていない。

 つまり、IT投資意向という尺度で見た場合には「地域毎の企業業績」が示す傾向とは必ずしも一致するわけではない点に注意する必要がある。


(ノークリサーチ提供)

 「サービス業(IT以外)」の業種のみ抽出して同じく地域別にプロットすると、「その他」の地域におけるIT投資DIがマイナスになっている。サービス業はヒトを主な対象とすることから、人口動態における変化がIT投資意向にも影響を与えやすいと捉えることができる。

 一方、中部地方では経常利益DIと比べてIT投資DIの値が高いが(=業績が良くない場合でもIT投資に取り組むケースがある)、近畿地方では逆になっている(=業績が良いにも関わらず、IT投資に対して慎重または消極的なケースがある)。サービス業は他の業種の影響も受けやすい。

 この場合、組立製造業が底堅い中部地方ではサービス業も今後のIT投資に積極的になりやすいが、近畿地方では小売業の経常利益DIが下落しており、それがサービス業におけるIT投資意向にも影響しているなどの要因が推測される。

 こうした分析は、DI値に基づいた「IT投資意向」を扱ったものであり、IT投資における金額規模とは異なるが、少なくとも「所在地(地域)」という属性で中堅・中小企業のIT活用を考える際は人口動態の傾向を単に当てはめるのではなく、「業種」という観点も絡めて捉えるべきと言える。

 一方、クラウドに代表される新たなIT活用基盤は、小規模な販社/システムインテグレーターが、大手IT企業と同等のITインフラを提案し、遠隔の顧客をサポートする能力を与える役割も果たす。ITを提供する側にとっては「規模と距離の制約」がなくなりつつある。

 逆説的ではあるが、距離や規模の違いによって維持できていた地域の商圏(=既存顧客)という意味での「地域格差」が今後は失われていく可能性もゼロではないとしている。

 この定点観測調査は、日本全国の年商500億円未満の民間企業1000社を対象として4月、7月、10月、1月の年4回実施されており、今回は1月分の結果。

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