(2)のワークフローでは、契約書などの業務プロセスの自動化を図ろうとしており、2014年9月に開催されたイベントで「Box Workflow」が発表された。契約書といったファイルをシステム上で自動的に処理されることを進めている。契約書に記載される契約金額や契約期間などのメタデータを利用する。
例えば、契約金額が100万円までは課長が決済するが、それ以上は部長が決済するといった処理プロセスを自動化することを狙っている。現在、このメタデータは手作業で入力しているが、入力作業も自動化することを進めている。古市氏は、ワークフローの自動化では機械学習などを活用してメタデータを処理するサービスを検討していることを明らかにした。
(3)のガバナンスでは、データがどのように見られているのかリアルタイムでログを取ることができ、IT部門が管理できるようになっている。「ログを取っているというのは抑止力になる。“つい、やってしまった”という個人を救うことにもなる」。Box上にあるデータは、米国の裁判で必須の電子証拠開示(eディスカバリ)にも対応しているという。
(4)のセキュリティでは、日本市場からの要望も取り入れているという。「日本企業はかなりのこだわりがある」ためだ。
Boxは現在、アクセスするIPアドレスを制限できるようになっている。例えば、会社からはアクセスできるが、自宅やネットカフェからは利用できないといった具合だ。
このIPアドレス制限の要望を本社に伝えると「どこでも仕事できるのがBoxのメリットの1つだ。制限してどうするんだ」という反応だった。日本法人が「日本企業はセキュアにコラボレーションしたいんだ」と説得し続けたことで、IPアドレス制限が盛り込まれるようになっている。
セキュリティ面では、IPアドレス制限をさらに進めて、証明書などの技術を活用してアクセスする端末も制限している。安全確認が取れた端末だけがアクセスできるようになっている。
データそのものに対する保護策としてIRM(Information Rights Management)も取り込んでいる。データにあるテキストのコピー&ペーストの防止、データの印刷防止といった機能を提供するとともに、電子透かし機能を搭載して、画面が盗撮されても、そのデータがどの企業のものなのかを判別できるようになっている。
業界ごとに特化
業務に活用されることを狙うBoxは、システム連携でAPIを用意している。統合基幹業務システム(ERP)パッケージ「SAP ERP」やSaaS型の顧客情報管理システム(CRM)「Salesforce」、社内ポータルの「Microsoft SharePoint」などとAPIで連携できるようになっている。2014年9月のイベントでは、「Microsoft Office 365」との連携が発表され、「Box for Office 365」のベータ版が提供されている。
ここまで見て分かるように、クラウドストレージサービスのBoxは、同じ情報系システムのメールやグループウェアと同様に汎用的なツールと言える。EFSSからECCに拡大するのは、汎用的なツールとしての進化とも表現できる。
主にSaaSの領域では現在、どんな業種や業態でも活用できる汎用的なツールから業種や業態に特化した業界クラウドへの変化が見られるようになっている。Boxでも、同様の動きを見せており、例えば、クラウド上で医療データ共有ツールを提供するMedXTを買収して、業界ごとの業務にあわせた機能を提供することを考えている。すでにM&Eやヘルスケア、流通小売向けを提供している。今後は、製造やハイテク、建設土木などあらゆる業種への対応を検討している。