IDC Japanは5月25日、ルータ、イーサネットスイッチ、企業向け無線LAN機器を含む国内ネットワーク機器市場の2014年の実績と予測を発表した。2014年の国内ネットワーク機器市場は、LTE(Long Term Evolution)サービス向けの設備投資の継続と、企業向けネットワーク機器市場の堅調さで成長を続けたが、変化の兆しも見え始めているという。
国内ネットワーク機器市場 製品分野別 エンドユーザー売上額予測、2010年~2019年(IDC提供)
製品分野別にみると、ルータ市場と企業向け無線LAN機器市場はプラス成長を達成した。特にルータ市場では前年比12.0%の成長率で、市場規模1223億5600万円に拡大。企業向けルータ市場における拠点用ルータの堅調な更新需要が成長をけん引した。
企業向け無線LAN機器市場は、企業の無線LAN導入意欲が依然として高く、2014年の市場規模は227億100万円で前年を5.0%上回った。ただし、一様に成長を続けるような成長局面からは転換点を迎えている兆候も見えており、イーサネットスイッチ市場では通信事業者向け市場の減速によって前年を割り込み、前年比3.2%減の2007億6300万円となった。
ベンダー別シェアには、いずれの市場でも際立って大きな変動は見られなかったが、その中ではNECとブロケードの成長が目立った。
NECは、大型案件の獲得によって企業向けルータ市場でシェアを拡大し、通信事業者向けイーサネットスイッチ市場でも売り上げを伸ばした。ブロケードはデータセンター向けイーサネットスイッチ分野を伸ばし、イーサネットスイッチ市場で大きく成長した。
IDCでは今後の国内ネットワーク機器市場について、2015年から2019年にかけて緩やかながらも拡大するとみている。ルータ(コンシューマー向けを除く)、イーサネットスイッチ、企業向け無線LAN機器市場を合計した国内ネットワーク機器市場は、2014年の3458億2000万円から、2019年には3920億1900万円になると予測しており、2014年~2019年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は2.5%。
製品としては成熟しているものの、モバイルネットワークが企業活動や生活にさらに強く結び付き、クラウドやインターネット上のサービスの重要性が増すマクロトレンドの中では、モバイルやデータセンターへの投資がネットワーク機器市場の活力になるとIDCは分析している。
今後、ネットワーク機器ベンダーは市場環境の変化の中で、顧客の意識の変化にも敏感に適応しなければならないとした。通信事業者のCAPEX/OPEX削減に対する意欲の一層の高まりや、「所有から利用へ」といったIT全体に流れる潮流が、企業ネットワークにも及ぶ可能性に対応する必要がある。
同社コミュニケーションズ グループマネージャーの草野賢一氏は、「そのような顧客の意識の変化に対して、ネットワーク機器ベンダーが短期的な収益悪化に意識を取られて大胆な自己変革を実現できなければ、将来の収益源を確保できず競争力を失う」とコメントしている。