「情報通信白書」に見る情報通信政策の過去、現在、未来(1)--ICT産業の30年 - (page 2)

田島逸郎

2015-08-17 11:00

 通信自由化以降の競争は、まず電話から始まった。国際電話の料金は劇的に安くなり、NTT以外の事業者による電話網の全国ネットワークも整備された。次に、パソコン通信や携帯電話などの新しいサービスが普及した。

 最盛期には会員数575万人を数えたパソコン通信は、メール、フォーラム、チャットなど現在のインターネットにつながるコミュニケーションを提供した。


パソコン通信会員数の推移
出典:「平成27年版情報通信白書」(総務省)

 携帯電話については、端末が従来の貸出から利用者が所有できる売り切り制を導入したことで、端末の面での多様化や競争が進み、自動車電話から小型の携帯電話へと技術革新が進んだ。また、料金の低価格化やエリアの拡充もあいまって急速に普及した。

 このほか、パケット通信を中心としたデータ通信、ファクシミリ、衛星通信などの新しいサービスが生まれ、光ファイバーの本格的な整備も始まった。現在のスマートフォンにはこれらのほとんどすべての要素が含まれており、携帯電話での端末料金の競争は現在も活発である。その意味で、通信自由化は現在にも大きな影響を残していると言えるだろう。

 第二期は、インターネットと携帯電話の時代である。インターネットの商用利用は1993年に始まり、さまざまインターネット接続サービスやウェブブラウザの普及、政府の「e-Japan戦略」にも指定された高速なブロードバンド回線の導入によって、1998年には世帯普及率10パーセントを超え、2002年末には81.4パーセントと爆発的な伸びを見せた。

 これにより、インターネットサービスプロバイダ(ISP)事業、データセンター業、電子商取引、コンテンツ配信などのインターネットに立脚したさまざまなサービスが登場した。


我が国における主な情報通信メディアの
世帯普及率10%達成までの所要期間
出典:「平成27年版情報通信白書」(総務省)

 携帯電話については、2000年に固定電話の契約数を超え、高速な通信を可能にする第3世代移動通信システムも急激に普及した。携帯におけるインターネットは、初期はメールが主流だったが「iモード」などによりウェブへの接続も可能になり、2005年にはPCによるインターネット利用者数を上回った。この他、IP電話などの新しい形式の固定電話や、国際通信の業界再編などがあった。

 第三期は現在に当たり、第二期までで整備されたインフラが高度に活用される段階となった。光ファイバーや3.9Gなどの通信インフラが普及し、ブロードバンドの世帯カバー率もほぼ100パーセントとなった。音声通信もIP化がなされつつあり、IPv6の導入も徐々に始まっている。

 その上で、社内システムをアプリケーションやプラットフォームの形でネットワーク上で提供する「SaaS」「PaaS」などが生まれ、個人についても画像、動画を含めた情報発信が普及した。特にスマートフォンの普及は著しく、50代まででも70パーセント位上、60代以上で36.7パーセントという高い普及率である。その上でユーザーがさまざまな行動を行った履歴(パーソナルデータ)をどう活用するかというビッグデータなどの分野で試みがある。


スマートフォンの保有状況
出典:「平成27年版情報通信白書」(総務省)

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