情報通信白書に見る情報通信政策の現在と未来(後編)

田島逸郎

2013-10-04 10:14

 「平成25年版 情報通信白書」は、日本の情報通信技術(ICT)や情報通信政策の現況について、広くまとめている重要な資料である。前編に引き続き、後編では電子行政やオープンデータ、社会的課題の解決、イノベーションについて解説した上で、「スマートICT」の全貌についてまとめる。

ICTが変える行政、市民の関係

 最近のICTの変化は、2005年に提唱されたWeb2.0の考え方をさらに推し進めている。大きな「プラットフォーム」としてウェブサービスがあり、そのデータが自由に利用できるようになっていることで、サービスの提供者と利用者双方に新しいチャンスが生まれるという発想は、クラウドコンピューティングの普及などでさらに一般的になりつつある。

 行政分野でも、この考え方の影響を非常に強く受けた大きな変化が起こっている。国や自治体がサービスをウェブなどで提供する電子行政は、クラウド化や標準化などでバラバラなサービスを統合し、行政内部、さらには市民へのサービスの向上を目指している。また、行政に関するデータを可能な限り公開することで、行政の透明性を確保するとともに、データを活用した市民参加やコラボレーションを可能にする「オープンデータ」の取り組みが始まっている。

 電子行政の取り組み

 行政の手続きや書類などの情報をコンピュータで行えるようにする電子行政は、数十年間進化を続けている。インターネットの普及に伴って、電子政府や業務効率化などさまざまなことが実施されてきた。

 近年の主な取り組みは、政府共通のプラットフォームでデータを集中管理したり、仮想化技術で情報システムを導入する「クラウド化」である。政府で共通のクラウドを用意するとともに、民間のSaaSなどには利用ガイドラインを設ける。また、政府や省庁にCIOやCIO補佐官を設けて情報システム関連の統括を行うことで、さらにガバナンスを強化する。


政府共通プラットフォームの概要 出典:「平成25年版情報通信白書」(総務省)

 一方で、電子行政の試みについては一般の市民までうまく浸透していない。このため、さらに使いやすいサービスの提供、地方自治体の情報システムの標準化、番号制度の導入などさまざまな施策が始まっている。

 海外では、デンマークが行政サービスの電子手続を義務付けようとしている。市民ポータル「Border.dk」では、例えばあらゆる診療所の情報を閲覧でき、医療制度の利用のために登録できるなど、ニーズに応じたサービスを実現している。また、韓国では行政サービスをスマートフォンやタブレットに徹底的に対応させ、電子政府システムの仕組みを輸出している。

 注目を集めるオープンデータ

 オープンデータとは、国や地方自治体の持っている行政データを、コンピュータで読み込みやすい形式で、使いやすいライセンスで提供するものだ。さまざまな利点があるが、「電子行政オープンデータ戦略」では、オープンデータの推進によって、「透明性・信頼性の向上」「国民参加・官民協働の推進」「経済の活性化・行政の効率化」を目的としている。

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