レッドハット、企業向けOpenStackディストロ--VMWare環境をサポート

大河原克行

2014-07-24 17:45

 レッドハットは7月23日、OpenStackディストリビューション「Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform(RHEL OSP) 5」の説明会を開催した。企業向けのLinuxディストリビューション「Red Hat Enterprise Linux(RHEL)」をベースにしている。

 すでに提供されているRHEL OSP 5は、レッドハットのOpenStackディストリビューションとしては第3世代になる。コード名「Icehouse」で進められていた開発プロジェクトの成果を盛り込んだOpenStackのリリースに基づいている。企業向けでのOpenStackの採用推進やクラウドプラットフォームとしての信頼性や安定性を向上させたのが特徴という。クラウドユーザーや通信事業者、インターネットサービスプロバイダー、パブリッククラウドホスティングプロバイダーなどがOpenSatckをクラウド基盤としての利用を想定して強化している。

 商用OpenStackパートナーエコシステムを活用するとともに、クラウド環境に必要なサポートを3年間に延長する。VMWare環境をサポートするとともに、ワークロード配置も改善できるという。米国と英国の新たな暗号セキュリティ要件に対応する仮想マシンのサポート向上、ネットワークスタックの相互運用性向上を実現したという。

 VMWare環境を対象にしたサポートでは、既存のハイパーバイザ「VMware vSphere」「VMware ESXi」上のリソースを、仮想化環境を管理する“OpenStackコンピュート(Nova)”ノード用の仮想化ドライバーとして使用し、管理コンソールである“OpenStackダッシュボード(Horizon)”からシームレスな形で管理できるという。

 仮想ネットワークを管理するコンポーネントの“OpenStackネットワーキング(Neutron) ”でネットワーク仮想化プラットフォーム「VMware NSX」に対応するプラグインと、ブロックストレージを管理するための“OpenStackブロックストレージ(Cinder)”で仮想マシンディスク「VMware Virtual Machine Disk(VMDK)」プラグインをサポートするという。

 ワークロード配置の改善では、サーバーグループで分散アプリケーションの柔軟性を最大化することを目的に、ワークロードを分散できる。通信の遅延を軽減する必要があるアプリケーションの性能を最大化するために、同一化したり、近接化したりといった配置が可能になる。

土居昌博氏
レッドハット クラウド・仮想化事業部 事業部長 土居昌博氏

 レッドハットのクラウド・仮想化事業部事業部長の土居昌博氏は「新しいワークロードが求められる中でそれに対応したIaaS基盤が求められている。RHEL OSP 5は、こうした流れに最適なものであり、OpenSatckコミュニティの利点に加えて、企業向けにコードを強化するとともに、他のレッドハット製品とも連携できる」と説明する。

 新版では、“OpenStackデータ処理サービス(Sahara)”コンポーネントがテクノロジープレビュー版として搭載されている。このコンポーネントは、OpenStack上で稼働する分散並列処理プログラミングフレームワーク「Apache Hadoop」のクラスタのプロビジョニングを高速に処理できるとともに、容易に管理できるようになるという。

 HadoopとSaharaを組み合わせることで「データ駆動型アプリケーションを短時間で作成して、オープンでハイブリッドなクラウド上にデプロイするための強力なプラットフォームを提供できる」(土居氏)という。

 RHEL OSP 5は、2ソケットのサーバ1台あたりの価格設定となっており、OpenStackの各コンポーネントに加えて、ホストOSとしてのRed Hat Enterprise Linuxが含まれる。サービスレベルは、平日9~17時のスタンダードサポートのほかに、土日を含めた24時間体制サポートのプレミアサポートも用意される。

 価格は、“コントローラノード”と“コンピュートノード”で異なる。コントローラノードは、ゲストOSとしてのRHELが含まれない、OpenStackに含まれるすべてのコンポーネントを利用可能で27万9400円から。コンピュートノードは、ゲストOSとしてのRHELが含まれ、稼働させるゲストOSのRHELの数が制限されず、44万8400円から。どちらもスタンダードサポートを受けられる。

廣川裕司氏
レッドハット 代表取締役社長 廣川裕司氏

日本のクラウドを世界最先端に

 レッドハット代表取締役社長の廣川裕司氏は「2009年にクラウド事業部を設置し、3年前から単体製品を本格投入してきたが、ようやくここにきて、クラウド戦略を体系化して語れるようになってきた。レッドハットがクラウドサービスを提供するわけではない。SaaSは提供しないが、IaaSとPaaSを提供する。エンドユーザーが世界最先端のクラウドサービスを提供できるように支援する」と前置きして、こう続けた。

 「データセンターの仮想化のための“Red Hat Enterprise Virtualization”では最新版の3.4を6月に発表。DevOpsにも対応したPaaSソフトウェアの“OpenShift Enterprise 2.1”を7月16日に発表。それに今回、新たにエンタープライズ版OpenStackとしてRHEL OSP 5を投入する。エンタープライズ版は初めての製品投入となる。2013年11月に発表した(運用管理ソフトウェア)“Red Hat CloudForms 3”でIaaS、PaaS、仮想化を統合管理できる形に発展させた。オープンハイブリッドクラウド対応のマネージメントとして唯一のものになる」と語った。

クラウド関連製品概要 クラウド関連製品概要
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 同社では、この4月にクラウド・仮想化事業部を5人の専任体制で発足。国内パートナーアライアンスを5月からスタートし、OEMやシステムインテグレーターなどを含む15社体制で展開することも明らかにしている。

 「デルや日本IBM、NEC、富士通、日本ヒューレット・パッカード、日立製作所などが参加。これら15社のエコシステムで日本のIT市場の95%をカバーできる。3年後には30億円の市場が300億円に拡大するとみている。Linux市場全体の85%をRed Hat Linuxで占める。これにより、日本のクラウドを世界最先端に持っていける」(廣川氏)

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