オープンソースソフトウェア(OSS)でIaaS基盤を構築、管理する「OpenStack」の勢いが増してきた。
レッドハットは5月22日、14社のパートナー企業と販売契約や協業で合意。これまで直販で展開してきた「Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform(RHEL OSP)」のパートナー企業経由での販売を始めた。
ワールドワイドでは同様の販売提携、協業をスタートしており、225社のパートナーとのエコモデルを構築し、すでに900のアプリケーションが存在する。この中に日本語アプリケーションはなく、今回の販売契約と協業の合意を皮切りに、日本で商用OpenStackのクラウド構築支援サービス、エンジニア育成などを進め、OpenStackの商用利用を増やしていく計画だ。
レッドハット 代表取締役社長 廣川裕司氏
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レッドハット代表取締役社長の廣川裕司氏は、「調査会社によれば、OpenStackは2012年時点で20億円程度の市場規模であったが、2016年には322億円に成長すると試算されている。これだけ市場が伸びるものは限られているが、OpenStackはそれだけ期待されている。当社は大企業向けOpenStack市場を牽引していく」と市場拡大に意欲を見せている。
ミッションクリティカルなOpenStack
レッドハットは今回、日本のパートナーとして伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、SCSK、サイオステクノロジー、シスコシステムズ、新日鉄住金ソリューションズ、TIS、デル、日本IBM、NEC、日本ヒューレット・パッカード(HP)、ネットワンシステムズ、日立製作所、富士通、ユニアデックスの14社と販売契約と協業で合意した。
「レッドハットは2002年に初めて企業向けLinuxのディストリビューションを開始し、日本では2003年からビジネスを開始している。そこから11年経ったが、今回の発表は次の10年に向けた発表となる。日本のITを支えるSIパートナー各社に支えられ、大企業向けOpenStack市場を開拓していく。これまで直販で製品を販売してきたが、これはパートナーの皆様がOpenStackをテストする意味での購入も多かった。商用販売はこれから本格化する」(廣川氏)
Red Hat インフラストラクチャ ビジネスグループ シニアバイスプレジデント Tim Yeaton氏
OpenStackでは、Red Hat自身もコミュニティに参加し、開発に協力してきた。「当社はLinuxでナンバーワンのコミッターとしての地位を確立したが、OpenStackの開発でも大きな貢献をしている。われわれが持っている経験と知識は、どうすれば堅牢でミッションクリティカルなOpenStackの提供ができるのかを理解している」(米Red Hat インフラストラクチャ ビジネスグループ シニアバイスプレジデント Tim Yeaton氏)
RHEL OSPは、企業向けLinuxディストリビューション「Red Hat Enterprise Linux(RHEL)」に最適化されたOpenStackディストリビューション「Red Hat OpenStack」とRHELベースの「Red Hat Enterprise Server」が統合されている。RHEL OSPでは、ミッションクリティカルなサポートを提供しハードウェア、ストレージ、ネットワーク、ソフトウェア認定によるエコシステムを構築していく。
特にエコシステムでは、現段階ではワールドワイドで225社のパートナーが存在し、認定ソリューション数が900存在するなど、世界最大のOpenStackパートナーエコシステムという。
今回、日本のパートナー14社との提携で商用のOpenStackのクラウド構築支援サービスの提供、2013年2月発表の「Red Hat Developer Program」を拡張し、パートナーのOpenStackエンジニアの増加とスキル増強を進める。今後3年で5000人のエンジニア育成を目標とする。