レッドハットは4月24日、同社の2014年度(2013年3月~2014年2月)の事業方針を説明した。同社社長の廣川裕司氏は「2014年度は、日本で市場の2倍のスピードで成長する。Linux市場が10%成長するのであれば、20%伸びるのがレッドハット。オープンソース(OSS)のパワーと、レッドハッドの価値で市場をリードすることになる」と語り、売上高で前年比20%以上の成長に意欲をみせた。成長戦略として、廣川氏は2つのテーマを掲げる。
ひとつは、“Beyond Linux”とする新規事業の拡大だ。
ここでは「オープンハイブリッドクラウド」「JBossミドルウェアの大幅シェア拡大」「クラウドやビッグデータを支える最適なストレージの提供拡大」の3点をあげる。
廣川裕司氏
廣川氏は「新規事業を統括する、製品・ソリューション営業統括本部を発足。さらに、エンタープライズ分野におけるソリューション営業を推進するために20%増員した。Linux以外の事業を成長させる考えであり、そのために組織も変えていく」と述べ、現在、約15%の新規事業領域を、5年後には半分程度にまで引き上げていく考えを示した。
オープンハイブリッドクラウドの訴求により、クラウド、仮想化、OSSのクラウド基盤管理ソフトウェア「OpenStack」関連製品事業を倍増させる一方、JBossでは事業規模を2倍にするとともに、大幅なシェア拡大を目指す考えを示し「新たな組織を通じて、新規事業を倍増させたい」と語った。
ふたつめがパートナーとの協業強化だ。
パートナーにおけるエンジニア育成を徹底的に支援し、これまでの認定資格「Red Hat Certified Engineer」のほかに「プロダクトスペシャリスト」制度を開始。「Partner Developer Program」を通じて「パートナーにおけるエンジニア育成を加速し、国内におけるエンジニアを100倍規模に拡大したい」などとした。
プロダクトスペシャリストは、全世界で日本が先行して実施したもので、すでに日立製作所やNECが1000人を対象にしたプログラムをスタートし、それぞれ100人規模で認定。富士通でも50人規模のプロダクトスペシャリストを認定している。「すでに300人規模のエンジニアコミュニティができあがっており、今年中には1000人規模になるだろう。3年間で1万人のエンジニアコミュニティを作り上げる」(廣川氏)
パートナーとの協業強化でメインフレームやUNIX、商用アプリケーションサーバから、LinuxやJBossアプリケーションサーバへの移行を加速させる。NECや富士通、日立製作所、日本ヒューレット・パッカードなど8社が参加するパートナープログラム「JBoss プレミア・ビジネス・パートナー」を通じた展開に加え、3社の「Red Hat Storageパートナー」、NECが加盟している「OpenStackパートナー」を通じた新規事業拡大に取り組む。
「(ストレージ構築ソフトウェアの)Red Hat Storageパートナーは年内には10社にまで増やしたい。日本は、世界一のメインフレーム、UNIX人口が多い国。Windowsユーザーが47%、Linuxが15%程度。これに対して、米国ではWindowsが50%、Linuxが40%となっている。眠れるメインフレームやUNIXのシステムをコンバージョンするビジネスチャンスがある」(廣川氏)
2013年度の概要
2009年6月に世界に先駆けて設立した、エンタープライズ向けOSS初のユーザー会である「レッドハットエンタープライズユーザー会(REUG)」には設立当初の3倍以上となる300人が参加した。ユーザー間の交流が活発化し、2012年は大阪でもユーザー会を開催したことにも触れた。
「2011年は311人のお客様、パートナーの役員に会った。2012年は461人と会った。そこでビジネスにおける優先事項は何か、それを実現するテクノロジは何かを聞いている。お客様は事業成長と新規顧客獲得、コスト削減や効率アップを課題としている。レッドハットが提供する価値は、OSSによる選択の自由と、スピード、イノベーション、コスト削減であり、インダストリーソリューション、ビジネスソリューション、インフラソリューションの3つのソリューション群を提供していくことになる」(廣川氏)
インフラソリューションでは、アプリケーションサーバ「JBoss Enterprise Application Platform(EAP)」やスケールアウト型のNoSQLデータストア「JBoss Data Grid」、Red Hat Storageなどでオープンクラウド基盤、仮想化、IT基盤の標準化などを加速させる。