3年計画で「弥生」をSaaS化--弥生新社長が戦略発表

柴田克己(編集部)

2008-04-22 15:59

 業務パッケージソフト「弥生シリーズ」で知られる弥生は、4月22日に今後の事業戦略に関する記者説明会を行い、今後約3年の期間をかけ、弥生製品のSaaS(Software as a Service)化を進める計画を明らかにした。

岡本浩一郎氏 4月1日付けで弥生の代表取締役社長に就任した岡本浩一郎氏。

 2008年4月1日付けで、前任の飼沼健氏から弥生の社長を引き継いだ岡本浩一郎氏は、1969年生まれの39歳。東京大学工学部卒業後、カリフォルニア大学ロサンゼルス校経営大学院を経て、野村総合研究所でシステムエンジニア、ボストンコンサルティンググループで経営コンサルタントを務めた。2000年には、IT戦略に特化した経営コンサルティング会社であるリアルソリューションズを設立している。

 岡本氏は同社のミッションを「日本における中小企業、個人事業主、起業家の事業の立ち上げと発展を支える社会的基盤(インフラ)であること」と定義。この市場における圧倒的なマーケットリーダーとなることを目標に掲げた。

 弥生のビジネススキームには、弥生シリーズのソフトウェア開発とユーザーへのサポートサービス提供の2つの側面がある。製品面での具体的な方策としては、ソフトウェア品質のさらなる向上と、SaaSへの進出を軸とした新技術への取り組みを行っていくとする。

「SaaSは万能ではなく、導入、運用、アップデートが容易というメリットがある一方で、カスタマイズの難しさ、情報漏えいやネットワークの安定性に対する不安といったデメリットもある。しかし、弥生の顧客となる中小規模、スタートアップのユーザー層にとっては、大企業に比べてSaaSのメリットはより大きい」(岡本氏)

 弥生では、今後3年をめどに段階的に各アプリケーションのSaaS化を進めていく計画だ。1年目はパイロットプロジェクトとして、ユーザビリティの検証、採用技術の見極めを行い、2年目は新規SaaSアプリケーションの開発と立ち上げ。3年目には、本格的にSaaS方式でのサービス提供を開始し、ユーザーが自らの希望によって、パッケージソフトかSaaSかを選択できる環境を整えたいとしている。

 さらに、起業家としての経験を持つ岡本氏は、日本における起業家のスタートアップを「徹底的に支援していく」方針であると述べた。これには、決算期の税務、会計業務だけでなく、起業準備段階での事業計画策定から、必要な手続き、物資の調達までの包括的な支援が含まれる。現在提供している起業家向けサービスの拡充と合わせて、新たなパートナー開拓も含めた準備を進めているという。

 そのほか、サービス面での強化については、弥生ユーザーからの問い合わせが多い「税務・仕訳」について、一般仕訳に関しての相談サービスを近日中に開始する計画という。本来、税務に関するユーザーサポートへの問い合わせには、税理士法上、応じることはできなかったが、一般仕訳に関する相談については、特定の条件の下で実施できる見通しがついたとしている。弥生では、カスタマーセンター内に仕訳相談を受ける有資格者を含む専門チームを組織し、税務当局に業務の範囲について確認がとれ次第、サービスを開始する予定という。

 また、弥生ユーザーの中小事業者に対する福利厚生サービスの提供や、就職支援、起業家支援としての「弥生会計無料講座」の拡充等により、サービスビジネスの強化を図る。

弥生の新経営陣 弥生の新経営陣。向かって左より、取締役副社長の五月女尚氏、代表取締役社長の岡本浩一郎氏、常務取締役の相馬一徳氏

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