ネットワーク版で対象ユーザー層を拡大
日本のPCソフト市場の草分け的存在として知られた日本マイコンとシステムハウスミルキーウェイを母体とする弥生は、その後、米Intuitやライブドア・グループを経て、2007年9月に独立系ファンドの傘下に入った。紆余曲折はあったが、その取り組みは一貫している。PC用会計パッケージを経て、業務ソフト「弥生シリーズ」をすでに20年以上にわたって提供している。
「この業界では“ハン・ザイ・キュウ”といいますが、販売管理、財務会計、給与計算を核に、顧客管理など基本的な業務ソフトを提供しています」と言うのは社長の飼沼健氏だ。
もともとは、従業員10人以下というような小規模法人をターゲットにしていた。日本には事業所が約470万あるといわれているが、そのほとんどがこのクラスに入る。その大きな市場をターゲットにしている。
そのためか、この中堅・中小企業に向けた業務ソフトは他社からもいくつか出ている。しかしこれまで、その棲み分けはおおむね決まっていた。スタンドアロンで使うのかネットワーク対応なのか。流通は家電量販店でいいのか営業マンによる訪問販売なのか、さらにはシステムインテグレーションつきで提供するのか。
「この中で、当社のソフトは家電量販店で販売するスタンドアロン型ということで、その分野のソフトではNo.1の実績を持っています」と飼沼氏が言うように、現在弥生の登録ユーザー数は63万社、サポート契約ユーザー数は14万社に達している。ユーザー数は圧倒的に多い。
しかし、この棲み分けがここに来て多少変わってきた。同社自身がその守備範囲を拡大する製品を投入してきているためだ。
「中堅・中小企業向け業務パッケージの多くはネットワーク対応で訪問販売を通じて提供しているものですが、当社も2005年からネットワーク版の弥生ネットワークシリーズの提供を開始し、他社との競合関係が生まれてきました」
弥生自身が仕掛けた競合だ。同社はかつての従業員10人以下という規模にとどまらず、従業員規模でいえば数十人から数百人へというようにその層を拡大し始めた。
ネットワーク対応からSaaS対応へ
弥生は業務ソフトのトップベンダーであり、MIJSのメンバーとしての資格は十分。しかし、MIJSの主要テーマである「日本のソフトの海外展開」は考えていない。