運用管理の自律化を実現するHPEのInfoSight

HPEのInfoSightが実現したこと

 ITインフラの維持管理に多大な負荷が掛かることはこれまでもずっと課題として認識されてきたものの、企業活動におけるITの役割が高まり続けており、万一ITがトラブルを起こした際の企業活動に与えるダメージが極めて大きくなってきていることから、「維持管理に多大な労力とコストが掛かっても仕方がない」「万一止まったときの損害に比べれば維持管理のコストの方がまだ安いはず」といった考え方で受け入れられてきた経緯がある。しかしながら、自動化/合理化が望まれていたことは間違いなく、それ故「データセンターの自律化」という目標が繰り返し語られてきたのも事実である。

 だれもが考えていながら効果的な実現策が見つからずにいたデータセンターの自律化というテーマに関して、具体的な成果を挙げたことで注目されたのがHPEの"InfoSight"だ。InfoSightは、"BIG DATA""IoT""AI"という現在の最先端技術の組み合わせで成立した、予測分析サービスである。元々は、2017年にHPEが買収したNimble Storageで開発/運用されたもので、そのためもあって当初はNimble Storage製品を対象としたサービスとして、ユーザーが運用中のストレージ製品の各種統計情報やセンサーデータを収集し、クラウドベースのAIプラットフォームで分析することで知見を得ることに成功した。

 InfoSightで収集しているデータは、電源電圧やファン速度、シャシー内温度といった基本的な環境情報から、CPU使用率、Cache使用率、容量使用率、Read/WriteのIOPSやレイテンシといった詳細な統計情報まで多岐に渡る。1万2,000社を越える顧客ベースがあり、1ヶ月で40兆のデータポイントに達する規模だという。Nimble時代から既に7年以上に渡ってデータ蓄積が行なわれている。同種のデータ収集を行なっているベンダーは複数存在するが、InfoSightが先進的だったのは、開始当時にはほとんど例がなかったAIによる解析を積極的に採り入れたことだろう。現時点では、データ解析にAIを活用するのはむしろ当然と言うべき状況になっているが、NimbleがInfoSightを開始した当時はまだまだ懐疑的な見方が主流だった時期であり、IBMのWatsonなどのいくつかの事例が注目され始めた位のタイミングである。いち早く着手したことの成果は、それだけ大量のデータを蓄積できたことと、その解析にも十分な時間を掛けることが出来たという2点だ。

 大量のデータを機械学習によって解析した結果は、InfoSightの「予測分析エンジン」および「レコメンデーション(推奨)エンジン」として、ユーザーに知見を提供している。ストレージのトラブルは、発生頻度が高いが単純で一般的なトラブルと、頻度は低いものの複雑で固有の問題とがある。影響度は発生頻度に反比例しており、頻度では80%を占める単純な問題の影響度は20%、残る20%の重大問題は80%の影響度を与えるという。単純で一般的な問題に対してはほぼ自動的な対処が可能で、予測分析エンジンが対応する。一方、複雑で固有な問題に対しては、運用担当者の知識や経験も活用する形で、レコメンデーションエンジンが推奨を行なうことで負担軽減を図っている。

 競合他社の取り組みでは、データを収集し、それを可視化することまでは実現しているが、データから何を読み取れば良いのか、今何をすればよいのか、といった問いに答えることはできないでいる。しかし、InfoSightはAIを活用することで、単純な問題に対しては自動的に解決策を提示し、複雑な問題に対してはいくつかの推奨案を示すことで、競合サービスとは次元の違う負荷軽減効果を生んでいるのである。この結果、従来であればユーザーが異常に気付いてサポートに連絡し、そこから解決に向けた対応が始まるところを、InfoSightでは異常の発生時点で解決策が判明しており、ユーザーが異常発生に気付く前に対処方法が提示されるといった状況まで実現できているのである。

 こうした状況を踏まえ、Nimble StorageではInfoSightに接続されている場合には99.9999%の可用性が保証されている。これは、年間の計画外ダウンタイムが31.536秒以下という水準であり、上回った場合はサポートクレジットが提供されるという内容となっている。そして、実績値として可用性99.999928%が達成されたという情報も公表された。

自律データセンターに向けた取り組み

 InfoSightはNimble Storageが起源のサービスなので、当初はNimble Storage製品を対象としていた。しかし、HPEと統合されてからは、そのコンセプトを維持しつつ対象領域の拡大を図り、現在ではデータセンター全体の自律化/運用管理負担の劇的な軽減に向けた強力なツールとしてさらに機能強化が行なわれている。HPEが擁するもう一つのストレージブランドである3PARのストレージに対しては、2018年に入りInfoSightのVMVision(仮想化環境の可視化)が対応済みだ。さらに、将来的にはサーバやネットワーク機器もInfoSightの対象とすることで、ITインフラ全体でどのようなトラブルが起こったとしても、的確な対応が迅速に行なわれる体制が整うはずだ。

 IT業界では企業買収は日常茶飯事ではあるが、被買収企業の製品/サービスや基礎技術を上手く活用できる例はさほど多くはない。いつの間にか消えてしまう例も珍しくはないが、HPEはIT業界そのものを生み出した企業とも言え、自身も大規模な買収や合併を経験していることもあって、InfoSightの技術を自律データセンターの実現という大きなビジョンのためのブロックとして巧みに取り込むことに成功している。また、HPEはポイントソリューションではなく、ITインフラ全体を一社で提供できる数少ないベンダーであることから、ITインフラ全体をカバーする高度な自律化の実現も可能となる。実際に自社製品としてストレージのみならずサーバやネットワーク機器も全て揃っているからこそ、InfoSightでその全体をカバーするというコンセプトが現実的なソリューションとして意味をもつわけだ。

 AIに関しては、人間の仕事を奪うといった否定的な捉え方もあるようだが、InfoSightに関してはIT部門を運用管理という後ろ向きの業務から解放し、新たなサービスの実現という前向きな作業に取り組む余裕を与えてくれるものと期待できる。"攻めのIT"といった言葉は以前から語られているものの、トラブル対応やメンテナンスなどの"後ろ向きの業務"を処理する手段がないままではどうにもならないというのが現実であった。InfoSightによってようやく、IT部門が後ろ向きの業務を手放すことが可能になったのである。

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提供:日本ヒューレット・パッカード株式会社
[PR]企画・制作 朝日インタラクティブ株式会社 営業部  掲載内容有効期限:2018年6月30日
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