クラウドやモバイルデバイスの普及など、企業ITを取り巻く環境は急激な変化を遂げている。こうした状況に対応し、ビジネスに直接貢献するためのITの新たなあり方についてもさまざまな提言が行なわれているが、足下の現実として、既存のITインフラの維持管理に人手と予算を割かざるを得ず、新たな取り組みに着手する余裕がないという問題もある。こうした問題は以前から繰り返し指摘されてきた「古い問題」ではあるが、一方でこれまで効果的な解決策が見つからなかった問題でもある。しかし、ここに来て新たなアプローチでこの問題を解決し、データセンターの自律化に向けて大きく踏み出すことができるようになってきた。それが、AI技術をベースとしたHPEの"InfoSight"である。
進化を迫られるIT部門
IT部門がその責務としてITインフラの維持管理を行なうのは当然とは言え、既存のITインフラにいくら人手とコストを費やしても、新たな価値が生まれるわけではない。ITインフラに関しては、正常に稼働し、業務に支障をきたすことがないのであれば、その維持管理に費やす労力やコストは低ければ低いほどよい、というのが正直なところだ。しかしながら、ITが企業活動に密接に関わる重要な役割を担うようになって数十年経っているにも関わらず、未だにITは「正常に稼働させ続けるだけでも多大な負荷が掛かる厄介な仕組み」であり続けている。自動車にたとえれば、バスやタクシーの助手席に整備士が同乗し、ことある毎に何か修理をしているような状況だろうか。モータリゼーションの黎明期には助手席には本当に助手が同乗していた時代もあったが、今時の自動車は運行中の整備どころか、ほぼメンテナンスフリーに近い信頼性が実現されている。自動車ほどの歴史の長さはないとはいえ、現在のITは機能や性能の伸びに比べて運用管理面での洗練度がやや置き去りにされてきた感が否めない。
一方で、デバイスの進化やネットワークの普及により、現在では誰もがスマートフォンを持ち、いつでもどこでも高度なITサービスを享受できるのが当たり前と考える時代になっている。こうした環境に対応するためには、企業内IT部門も従来の"メンテナンス担当"から、より高度かつ洗煉されたITサービスの提供者へと自らの立ち位置を進化させる必要がある。そのためには、ITインフラの運用管理の負荷軽減は必要不可欠であり、それなくしては新たなサービスの実現に取り組むマンパワーも予算も捻出できないことになってしまう。