データセンターはもっと高効率になれる
--ITとファシリティ・マネジメントの隔絶が生む弊害について、もう少し具体的にお聞かせください。
前田氏:1つは、ファシリティ面の「ムリ、ムダ、ムラ」が長期にわたって放置される可能性が高まることです。
そもそも、どんなIT機器が、どのタイミングで、どれだけ導入されるかが読めなければ、確保すべきスペースや電源容量を見積もることはできません。また、必要とされる受変電設備・空調設備の規模感もつかめないでしょう。結果、場当たり的な対応に終始し、電源設備に無理を生じさせたり、不必要な冷却で電力を浪費したりといった事態に陥るわけです。
-- 逆に、ITとファシリティの両面からデータセンターの最適化を図ることで、経済的効果を得られる可能性もあるわけですね。
前田氏:そう言えます。
例えば、一般的なオフィスの電力量は、1平米当たり100VA程度ですが、標準的な19インチ・ラックの場合は、電気容量が20kVAで設置面積は約4平米。要は、ラックの1平米当たりの電力量は5,000VAで、オフィスの50倍に相当するわけです。ですから、データセンターの電力消費の「ムダ」をなくすことは、オフィスの場合の「50倍効果」があると言えます。
ちなみに、データセンターのエネルギー効率を示す指標に、「PUE(=データセンター全体の電力消費量÷IT機器による電力消費量)」があります。この値は、「1」に近ければ近いほど「高効率」と言えるのですが、グーグルのデータセンターのPUE値は実に「1.07」。これは、彼らが独自にサーバを設計し、冷却の仕組みを作り、稼働温度を決め、電力消費の無駄を徹底的に排除したことによる成果です。
もちろん、PUE 1.07というのは驚異的な値で、そう簡単に達成できるものではありません。ですが、少なくとも、PUE 1.07が実現可能な値として存在しているのは確かです。一般の企業も、導入するIT機器をオープンソースで設計・開発すれば、データセンターの設定温度を数度上げられるかもしれません。それだけで、データセンターのエネルギー効率はグンと高まるのです。
-- 今日、ビジネスにしても、ITにしても、変化が激しく、5年先・10年先の将来を見通すのはほぼ不可能と言えます。そんな中で、IT計画・戦略に則ったファシリティのプランを立てるのは至難ではありませんか。
前田氏:確かに、ITの潮流がこの先5年・10年のスパンでどう変化するかは誰にも予測できません。またそれは、ビジネスについても同様に言えることでしょう。
だからこそ、ITはビジネスの変化に即応できなければなりませんし、データセンター・ファシリティは、ITの変化に柔軟に対応できなければなりません。ですから、ITとファシリティ・マネジメントには一体感が必要であり、両者が両輪となってデータセンターの最適化が実現されなければならないのです。
現在、企業でのクラウド利用が進展しています。ですが、それでもすべてのITシステム・ITリソースをクラウドプラットフォームに移行させようとしている(あるいは、移行させた)企業は少数派です。大抵は、ITシステムやデータの特性・重要性によって、オンプレミスとクラウドのいずれかを適材適所で用いるというアプローチを採用しています。ですから、ITとファシリティの両面からデータセンターの最適化を考えることは将来的にも重要ですし、結果的にそれが、企業ITのクラウド化プランの最適化につながるかもしれません。
-- 最後に、データセンターの最適化に取り組むユーザーに対して、IBMがどのような価値を提供できるかについて教えてください。
前田氏:それは、ITとファシリティ双方に精通しているというスペシャリティです。IBMならば、企業ITの改革・革新を支援しながら、その計画に基づいたデータセンター・ファシリティの最適化も支援することができます。つまり、ITとファシリティの一体改革をサポートできるということです。
このようなソリューションが、ワンストップで提供できるのはIBMならでは特徴であり、強みです。
自社のデータセンターの将来に不安を感じている。あるいは、データセンターの効率性・経済性に不満を抱いている。そうした方は、是非、IBMにお声がけいただきたい。