デジタル変革が進展する中、企業や組織のデータやアプリケーションがAPIを通じてつながりあい、顧客とのエンゲージメントを深めていく、いわゆる「APIエコノミー」がビジネス機会を拡大している。しかし、新たなビジネスモデルで成功をつかむためには、それを支えるIT基盤にはこれまでとは異なる新しい思想の設計・構築が必要だ。コグニティブ時代のIT基盤は、より深いエンゲージメントの源泉となる「データ中心」の考え方が必要となり、とりわけデータの保管・蓄積するストレージテクノロジーの選択が、自社のビジネス価値を最大限に高めるための鍵となる。
コグニティブ時代に求められるストレージ基盤の条件とは
デジタル化の進展によって、従来からの基幹システムに代表されるSoR(System of Record)の最適化だけでなく、データから洞察を引き出して新たな顧客体験を提供するSoE(System of Engagement)/SoI(System of Insight)と呼ばれる新しいタイプのシステムへの取り組みが重要度を増している。
SoE/SoIのアプリケーション開発では、ウォーターフォール型の開発を主体としてきたSoRとは、まったく異なるスピード感、スキル/言語、タレント(人材)が求められる。モバイルやソーシャルを利用した顧客とのチャネル拡大、エンターテイメント要素と連携したUX(ユーザー・エクスペリエンス)の向上、使いやすさを重視したUI(ユーザー・インターフェイス)などを、ニーズや市場環境の変化にあわせて柔軟かつ迅速に実現していく“機敏性”が重視されるからだ。
日本IBM
ストレージ・システム事業部長
波多野敦氏
こうした新時代に必須となるビッグデータの蓄積・分析や機械学習、高度な自律性などの機能を備えたコグニティブ・システムの実現で忘れてならないのがストレージ基盤である。日本IBMでストレージ・システム事業部長を務める波多野敦氏は、次のように語る。
「コグニティブ・システムでは、データがいつ、どれくらいの容量までスケールしていくのか先が読めません。アイデア次第で、集めるデータの種類も量もバラバラです。消費者が飽きないよう、速いレスポンスが要求される場合もあります。しかも、ほとんどの場合24時間365日止めることはできず、堅牢なセキュリティも担保しなければなりません」
このようなストレージ基盤をアプリケーションごとに、従来型のSANやNASといったストレージ装置を個別に導入・構築していたのでは、莫大なコストや労力を湯水のように費やすことになってしまう。
したがってコグニティブ・システムを開発・運用するためには、アーキテクチャーを抜本的に見直したストレージ基盤が必要となる。波多野氏は、「桁違いのデータ量を取り扱うには、桁違いのデータ経済性を実現するとともに、小さく始めて迅速に拡大できる伸縮自在な特性を持たせること。その上で各アプリケーションに対して最適なスピード、信頼性、容量を提供することがポイントです」と強調する。
この後のダイジェスト
- コグニティブ時代に求められるストレージ基盤の条件とは
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