世界有数の金融センターの一つである東京証券取引所は市場取引の安全・安心を確保するため、事業継続計画(BCP)の取り組みを推進する。その一環として、IIJのクラウドサービス「IIJ GIO」を活用した新たなバックアップシステムを構築し、膨大な取引データの遠隔バックアップを実現する。新システムにより、バックアップ作業のオンライン化が進むほか、運用管理の負荷軽減も実現。さらに柔軟なリソースの追加も可能になり、増大していくデータ管理の効率化とコストの最適化につながる。
ユーザープロフィール
株式会社東京証券取引所
IT開発部 マネージャー 情報システム担当
木俣 亜樹 氏
株式会社東京証券取引所
IT開発部 調査役 情報システム担当
五十嵐 倫洋 氏
株式会社東京証券取引所
設立 1949年4月1日
資本金 115億円
従業員数 407人(2012年3月31日現在)
市場の公正性および信頼性を確保し、利便性と効率性の高い取引・決済インフラを提供することで、市場の持続的な活性化を目指す。具体的には上場制度や売買制度、清算決済制度などの企画・立案や監視など市場の秩序維持のほか、有価証券の売買や市場デリバティブ取引を行うための市場施設の提供、相場の公表などを行う。
http://www.tse.or.jp/
テープバックアップの運搬・保管費用が増大
日本の金融資本市場の基幹インフラとして重要な役割を担う東京証券取引所(以下、東証)。国内外における資金運用・資金調達を支え、金融資本市場の活性化に大きく貢献する。
市場利用者が安心して取引できる機会を安定的に提供するため、東証では市場インフラの利便性・効率性の向上や自主規制機能の強化に積極的に取り組んでいる。「例えば、市場取引の履歴を記録するシステムでは、データの保存期間に係る内規を制定し運用しています。データの種類によっては、数十年あるいは無期限に保管するものもあります」とIT開発部 調査役 情報システム担当の五十嵐倫洋氏は話す。
金融商品の多様化や取引の利便性向上、さらにグローバル化の進展などに伴い、保管すべきデータは増加傾向にある。市場に対して安全・安心な市場インフラを提供する東証にとって、BCP対策は必須の課題だ。
そこで東証では売買システム・相場報道システムなどの取引データを蓄積。そして、そのデータを基に統計データの作成や、市場動向の分析を行うためのシステムであるDWH(データウェアハウス)の更改にあたり、データのバックアップ方式を見直した。「現行システムでは、テープに記録したデータを遠隔地に保管することでリスク分散を図っています」とIT開発部 マネージャー 情報システム担当の木俣亜樹氏は話す。
しかし、バックアップデータは日次の差分データだけで30GB前後という膨大なもの。週次のフルバックアップになるとデータ総量は1500GB以上におよぶ。「これだけのデータをテープバックアップするのは大変な手間とコストがかかります。今後のデータ増大を見据え、リプレースや拡張を意識する必要のない利便性、運用負荷や資産の保有リスクを軽減できる点を評価し、テープの遠隔地保管からクラウド保管への切り替えを目指しました」と五十嵐氏は話す。