課題に合わせてクラウド化のロードマップを策定
それでは、オフィスIT環境のクラウド化はどのように進めればよいのだろうか。

「全面的にクラウド化することが最終地点になりますが、教育コストや体制の整備などを含めた移行コストを考慮すると、ロードマップを策定して段階的に移行することになるでしょう。喫緊の課題としてはWindows Server 2003のサポート終了がありますから、現行システムに2003サーバーが残っている場合は、まずその部分をクラウドに移行することになります」(慎氏)
ここで2件の導入事例を見てみよう。まず、A社の場合。A社ではグループ会社ごとに構築されたActive Directoryをマルチフォレスト構成で運用していたが、それが原因でアカウント管理が煩雑化していたという。
「アカウントの煩雑さは、アカウント連携を必要とするその他のサービスの運用をも複雑にします。A社の場合、事情を熟知した管理者でないと作業できない"システム運用の属人化"があちこちで発生していました」(慎氏)
そこで最初に、Active DirectoryサーバーをIIJ GIOに移行するとともに統合。次に、メール、グループウェアをOffice 365に切り替え、クライアント管理製品もバージョンアップのタイミングでIIJ GIOに移行した。運用負荷を低減するために、システム運用もIIJにアウトソーシングしている。

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次にB社の場合。こちらはホールディングス制への移行に伴い、新たに設立された持株会社に新規システムとして導入したケースだ。
「B社の場合は、導入期間の短縮と将来のビジネスの拡大に備えた柔軟性の確保、小規模なIT部門で運用できることが求められたため、最初からオールクラウドでシステムを設計しています。ローカルに置くことが多いファイルサーバー(ファイル共有領域)も含めて、クラウド化しました」(慎氏)

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オールクラウドを実現するために、オフィス系システム以外の業務アプリケーションはSaaSで調達、アカウント連携などのインテグレーションもIIJが担当した。IT部門を小規模化するために、アカウント管理やヘルプデスクなどのオペレーション業務も含めて、システム運用をIIJにアウトソーシングしているという。
「既存資産のしがらみのない新規システムはクラウド化しやすい案件ですが、既存システムからでも最初にしっかりとアセスメントを行い、ロードマップを策定すれば、無理なくクラウドに移行できます。クラウド化して運用負荷を低減すれば、その分、新規事業や業務改善などに注力できる。インターネット黎明期からの豊富なシステム運用ノウハウを持つ当社なら、ビジネスに貢献できるIT部門への変革をお手伝いできると自負しています」(慎氏)