デジタル庁の発足で加速する政府/
自治体のクラウド活用
新型コロナ禍が終息する兆しが見えない中、多くの企業が“ウィズコロナ”の長期化に備えてテレワーク環境の導入/強化を進めている。同様の動きは政府/自治体でも強まっており、国民や職員の安全/安心を保ちながら行政サービスをスピーディかつ効率的に提供していくためのIT環境の整備が喫緊の課題となっている。
日本マイクロソフト
業務執行役員 デジタル・ガバメント統括本部
統括本部長の木村靖氏
その中で活用がさらに加速しつつあるのが「クラウド」だと、日本マイクロソフト 業務執行役員 デジタル・ガバメント統括本部 統括本部長の木村靖氏は話す。
「政府/自治体の職員の働き方を新型コロナ禍にスピーディに適応させていくうえで、クラウドは大きな役割を果たしました。2021年9月にデジタル庁が発足し、政府共通のクラウドサービスの利用環境として“ガバメントクラウド”が検討される中、クラウドを活用する動きはさらに進むでしょう。実際、“クラウド・バイ・デフォルト”のポリシーの下で以前よりクラウドへの関心を強めていたお客様からは『オンプレミス一辺倒からクラウドへのシフトが一気に進みそうだ』とのご相談を多数いただいています」(木村氏)
ヴイエムウェア
公共SE部 統括部
統括部長の中島淳之介氏
ヴイエムウェア 公共SE部 統括部 統括部長の中島淳之介氏は、同様の動きは地方自治体にも広がっていると説明する。
「新型コロナ禍への対応では、ワクチン接種システムのように緊急性やスケーラビリティが求められるシステムや、住民/職員の安全を守りながら業務/サービス提供を行うテレワーク/デジタル行政の実現においてクラウドの有効性が再認識されたほか、従来から利用してきた業務システムについてもクラウドの活用を検討する動きが早まっているようです。このようにシステムの特性に応じて、最適な技術とクラウドを選択することが求められてきています」(中島氏)
特に現在、地方自治体でニーズが高まっているのが仮想デスクトップ環境である。具体的な用途としては次の2つが挙げられる。
- 新型コロナ禍に対応するためのテレワーク環境の整備
- 三層分離のインターネット接続系セグメントに構築されたインターネット/Web閲覧環境の更新(強靭性向上モデルの更新)
マイクロソフトとヴイエムウェアは両社の連携により、以前からDaaSサービスとしてVMware Horizon Cloud Service on Microsoft Azureを提供してきたが、今回新たにVMware Horizonの環境をAzure VMware Solution上に展開が可能なVMware Horizon on Azure VMware Solutionのサポートも開始した。
「前回の強靭性向上モデルへの準拠の際にオンプレミス型の仮想デスクトップソリューションを導入されたお客様の中には、『利用者数に波があった』あるいは『急に必要なることに対応できなかった』といったところもあるようです。パブリッククラウド型の仮想デスクトップサービスなら、利用ユーザー数の増減が柔軟かつ迅速に行えるため、現在のように先行きが不確定な状況にも対応しやすいと言えます」(中島氏)
デスクトップだけでは不足。
システム環境全体のクラウド対応を
一方、中長期的な観点では、デスクトップ環境だけでなく、システム環境全体をクラウドの活用を前提に整備していく必要がある。
「例えば、Microsoft 365などを利用して快適なテレワーク環境を実現されたとしても、業務システムがオンプレミスにある場合、そのシステムを使う業務はテレワークに対応できないといった問題が生じる可能性があります。地方自治体様でも、今後はクラウドの活用を前提にしてシステム環境全体の最適化に取り組まれることを強くお勧めします」(木村氏)
その中では業務システムもパブリッククラウドに置くことが考えられるが、具体的な検討に際しては次のようなことが懸案課題となるだろう。
- オンプレミスのVMware vSphere環境をそのまま移行できるのか、簡単に持っていけるのか?
- オンプレミスのVMware vSphere環境で組んだネットワーク構成やIPアドレスを変更せずに移せるのか?
- 移行に際してダウンタイムは発生するのか?
- これまでの運用で培ったスキルセットやツール群、運用手法はそのまま生かせるのか?
現行システムをそのままスピード移行。
“クラウドへの最初の一歩”に最適なAVS
これらの課題の解消に向け、マイクロソフトとヴイエムウェアがタッグを組むことで実現したソリューションがAzure VMware Solution(以下、AVS)だ。AVSはVMwareによって検証済みのMicrosoft Azureのサービスであり、Azureインフラストラクチャ上で実行される。オンプレミスにvSphereで構築した仮想化環境をパブリッククラウドへスムーズに移行することを可能とするものだ。
AVSが地方自治体のクラウド活用にもたらす大きなメリットの1つは、既存のシステム環境を改修なしでパブリッククラウドに移せることだ。オンプレミスに組んだネットワーク構成やIPアドレスなどの変更も不要である。
「クラウドにシフトすると言っても、これまで多くの公金を使って構築/運用してきたシステム資産はできるだけ生かしたいという自治体様が大半でしょう。AVSなら、現行のシステム環境をそのままパブリッククラウドに移行できるため、過去の投資を最大限に保護できます。AVSによる既存システムの移行を、パブリッククラウド活用の最初の一歩にしていただければと思います」(木村氏)
中島氏も「クラウドにスムーズに移行できる」というAVSの利点を強調する。
「例えば現在、政府は地方自治体が使う17業務システムを標準化してガバメントクラウドに移行するプロジェクトを進めていますが、作業を担当されている事業者様からは、標準化作業に加えてクラウド移行のためのシステム改修が大きな負担になっているという声をよくお聞きします。その点、AVSならばVMware HCXなどの技術によってオンプレミスのシステムをそのまま移行できますので、クラウドのメリットを最大限に生かせるソリューションだと感じています」(中島氏)
移行に際してダウンタイムが発生しないため、業務や行政サービスの提供に支障が及ぶこともない。もちろん、クラウドへの移行後も、これまでに培ったスキルセットやツール、手法を用いてシステムの運用管理を行っていける。
また、Azureは日本国内のデータセンターで提供されているため、地方自治体は自前のデータセンターやサーバーなどの物理インフラを廃止し、運用管理の負担軽減を図ることも可能である。
ISMAP対応だから安心して使える。
先進サービスでクラウド移行後のIT活用を加速
AVSには、古くなったシステムを、より安全に使えるというメリットもある。
「自治体様はITインフラを5年ごとに更新されるケースが多く、タイミングによってはサポート切れのOSやミドルウェアを次の更新時期まで使い続けなければならないことがあります。AVSを含むAzureでは、サポートが終了したOS/ソフトウェアに対して重要なセキュリティパッチを毎月提供する『拡張セキュリティ更新プログラム(ESU)』が無償でご利用いただけます※1。古くなったシステムをより安全かつ低コストに使えるという面でも、AVSによるAzureへの移行は大きなメリットをもたらすのです」(木村氏)
※1 AVSを含むAzure上で対象製品を利用する企業に対してはESUが無償で提供される。例えば、Windows Server 2008のESUは2025年1月まで、SQL Server 2008のESUは2024年7月まで無償で提供されるほか、間もなくサポートが終了するWindows Server 2012、SQL Server 2012についてもAzure上で利用する場合はESUが無償で提供されることが決まっている。
地方自治体にとっては、Azureのサービスの多くが「政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(通称:ISMAP:Information system Security Management and Assessment Program)」に登録されていることも大きな安心材料になるだろう。ISMAPはクラウドベンダー各社が提供するサービスの安全性を国が評価し、適合したサービスを登録する制度だ。政府が求めるセキュリティ要求を満たしたクラウドサービスを評価/登録しておくことで、クラウド調達におけるセキュリティ水準を担保し、導入の円滑化を図る狙いがある。
「ISMAPは1,600以上もの項目に対して第三者監査法人による監査が毎年実施される、クラウドベンダーにとっては非常に厳しい評価制度です。マイクロソフトはOffice 365やDynamics 365などのSaaSのみならず、Microsoft Azureで提供するIaaS、PaaSについてもISMAP認証を取得しています。VMware vSphereによる仮想化環境については大手クラウドベンダーの中でもいち早くISMAP対応サービスとなるため、その点を重視されるお客様にとっては最良の選択肢になるはずだと自負しています」(木村氏)
地方自治体での活用も検討されているガバメントクラウドはISMAP登録サービスから選ぶことが予定されているが、現在のところ地方自治体が選定するクラウドサービスについてISMAP認証の取得は義務付けられていない。とは言え、国が継続的に安全性を評価したサービスを利用することは、地方自治体側の評価/監査の負担を軽減し、住民に対してサービス選定についての説明責任を果たすうえで大きなメリットがあるだろう。
「地方自治体様は17業務システムのほかにもさまざまなシステムをお持ちですが、それらで利用するクラウドサービスについてもISMAP対応が1つの指針になってきているという話を伺います。そうした状況の中、VMware製品をご利用いただいている多くのお客様に対してISMAP対応クラウドの選択肢をご提供するのは大変意義のあることだと考えています」(中島氏)
そして、クラウドへの移行後は、Azure上に用意されたさまざまな先進サービスを次のように活用し、行政サービスの向上や業務効率化のための新たなシステムを開発したり、移行した既存システムを近代化(モダナイゼーション)したりできることも大きなメリットだ。
- システムにAI機能(コグニティブサービス)を組み込んで高度化する
- クラウドをビッグデータの活用基盤として利用し、AVS上のシステムと連携させる
- AVS上のシステムをMicrosoft 365やDynamics 365などのSaaSと連携させる
- ローコード開発基盤であるPower Platformを用いて自治体職員が自らアプリケーションを作り、業務の効率化を図る
AVSはマイクロソフトが自ら提供するファーストパーティのソリューションであり、移行したシステムはAzureの各サービスとネイティブに連携させることができる。地方自治体のシステムをクラウド時代を通じて発展させていくという観点でも最適なソリューションなのだ。
クラウドの活用を検討する地方自治体に、
さまざまな支援/特典を提供
マイクロソフトとヴイエムウェアは現在、AVSの活用を支援するさまざまな活動を展開している。
「AVSは昨年末に国内提供を始めたばかりであり、まだご存じないお客様が沢山いらっしゃいます。そこで、AVSがどのようなサービスかを解説した動画コンテンツをご用意しましたので、まずはこれをご覧いただきたいと思います」(木村氏)
関連情報 『Azure VMware solution:ソリューション概要や特徴について』 ※ 視聴に際しては登録が必要です
AVSを活用したクラウド移行を検討中の組織に向け、アセスメントやPoC(Proof of Concept:概念実証)、本番移行などを支援するキャンペーンも準備している。
また、ヴイエムウェアはクラウド移行に際しての検討事項などを学ぶワークショップを随時開催しているほか、デジタル人材の育成支援にも力を入れている。
「地方自治体様がクラウドの活用を進めるうえで鍵となるのは、適切な技術を選んで正しく使うことのできる“人材”です。そこで、クラウド及びそのネットワーク・セキュリティなどについて、正しいソリューションを選択して活用できる人材の育成に関しても、ご要望に応じてさまざまなお手伝いをさせていただいています」(中島氏)
VMware Horizon Cloud Service on Microsoft AzureおよびVMware Horizon on Azure VMware Solutionの導入を検討している組織に対して、VMware Horizonのライセンスを60日間無償で提供するキャンペーンを実施しているほか、ヴイエムウェア公式ブログでは、AVS専任スペシャリストとして活躍するマイクロソフトコーポレーションの前島鷹賢氏によるAVSの解説記事などを掲載しており、「今後はこうした場も使って地方自治体様向けの情報発信にも力を入れていきたいと思います」と中島氏は話す。
関連情報 『VMware Horizon 特別お試しプログラム』 『VMware Japan Blog(AVS関連記事)』
加えて、マイクロソフトはオンプレミスで利用しているWindows ServerやSQL Serverのライセンスをクラウドに移行した場合にAzureの利用料金を大幅に割り引く「Azureハイブリッド特典」も提供中だ。
「先にご紹介したESUとAzureハイブリッド特典をご利用いただけば、クラウドへの移行によって地方自治体様のITコストを大きく削減できます。『仮想基盤の更新』」や『テレワーク環境整備』『強靭性向上モデルの更新』などをご検討の際は、ぜひこれらの特典と合わせてAVSの活用をご検討いただきたいと思います」(木村氏)
関連情報 『Azureハイブリッド特典』
最後に、「クラウドの普及によってIT基盤の選択肢が多様化する中、地方自治体などのお客様にとって最も重要なのは、システム特性に応じて最適なテクノロジーと技術を選択できることです。そして、そのような多様化した環境でも同じ手法で構築/運用管理していける“一貫性”です」と改めて強調する中島氏。その一貫性を提供するのが、マイクロソフトとヴイエムウェアのタッグが実現したAVSなのである。