クラウド事業者選択の鍵、それは"エコシステム"だ! - (page 3)
レガシーが多い日本はクラウド事業者にとっての巨大市場?
「それにしてもクラウドベンダって数が多いよね。本当に迷っちゃったよ」とビールから焼酎に切り替えたカワシマはいい気分になりながらクラウド談義を続ける。ふだん無口なオオクボも今日は反応が早い。「そういう意味では日本は世界的に見てもかなり特殊な市場だと言えます。IaaS、PaaS、SaaSと大手のクラウドベンダが次々と世界中から参入し、国内ベンダも数多くサービスをローンチしています。プライベートクラウドへの関心も高い。新興国に比べてレガシーが多い日本は、それだけクラウドへの移行の余地があるということでもありますから」なるほどーさすが元コンサル、業界事情もよく知ってるなあ…カワシマは素直に感心する。「あとは、クラウドのセキュリティなど重要な領域で、日本の組織が国際標準化に積極的に関与しているということも大きいですね。クラウド情報セキュリティ監査制度なんかは国際標準化より1年先を行ってますから」へー、日本がITでリードを取っていることもあるんだ。「そうそう、カワシマさんが選んだニフティですが、日本のコンテンツをクラウド経由で海外に届けるためのプラットフォームを構築するために、官民連携でグロザスという会社を作っています。クラウドへの移行が遅いと言われる日本ですが、クラウドのビジネスチャンスがここまで大きい市場は世界にそうないですよ」 - なんだ、悪くないどころか、けっこういいセンスしていたんじゃないかオレ…とカワシマは少し嬉しくなる。IT専任になってからというもの、こんなふうにITを語れるのは初めてかもしれない。
終電まで続いたクラウド談義に興じながら、カワシマはクラウドのさらなる魅力に気付き始めていた。クラウドは、ITによるこれまでの制約をすべて取り払うパワーがある。マシンがないから、ソフトが用意できないから、モバイルでは見られないから…そうした制約がすべて過去のものになり、ビジネスを一歩二歩どころか、数十手先まで先に進めることだってできそうだ。今度のファイルサーバリプレースが無事に済んだら、もう少しクラウドの可能性について突っ込んで調べてみよう。ウチの会社が3年後に予定しているらしいアジアでの事業展開にもクラウドはきっと大きな力になるはず。小さく始めて大きく育つクラウドのように、オレの小さな野望もいつか大きな現実になるかもしれない…その前にまずは明日、Windows Server 2003リプレースについて社長に最終説明しなきゃ! 小さな組織の小さなIT改革が、世界への大きな一歩につながることもある、そしてそこには必ずクラウドがあるはずだ。