様々なビジネスニーズに応じて用意された多くの社内アプリケーションは、異なるシステム基盤/アーキテクチャの基で開発されている。加えて、IoT/ビッグデータの潮流により、企業のアプリケーションに接続されるデバイスの数・種類も増大と多様化を続け、アプリケーション運用の複雑性は増す一方となっている。これらのアプリケーションを効率的に運用するためのツールとして、レッドハットは「コンテナ」の普及に力を注ぎ、コンテナ技術を活用したエンタープライズITソリューションの開発・提供に意欲的に取り組んでいる。果たして、レッドハットのコンテナソリューションの特徴・優位性はどこにあるのか──。ここでは、米国レッドハットのソリューションズ マーケティグ担当シニアディレクター、マーク・コギン(Mark Coggin)氏に話を聞く。同氏は、2016年10月5日に東京で開催された「RED HAT FORUM 2016 Tokyo」のために来日、同イベントで「エンタープライズにおけるコンテナ」と題された講演も展開している。
膨れ上がるアプリケーション運用の負荷
企業の中には、ビジネス要件に従って開発された数多くのアプリケーションが存在しており、その数が数百~数千に及ぶケースも珍しくない。これまで、そうした企業アプリケーションの開発には異なる言語やデータベース、ツール、手法が用いられ、結果として、アプリケーション運用の煩雑化や負荷増という問題を生じさせている。
もちろん、アプリケーションに求められる要件は個々に異なる。そのため、開発に異なる技術・手法が使われるのは、ある意味で自然な成り行きである。
とはいえ、アプリケーション毎に使用する言語やデータベース、ツールが異なれば、それらの開発・展開(デプロイ)、あるいは維持管理のために個々の技術に精通した技術者のスキルが必要とされるばかりか、企業IT全体が複雑化する。それに加え、新たなアプリケーションを開発・提供する際にも、既存の人的リソースやシステムリソース、さらにはノウハウの有効活用が図りにくくなり、結果的にIT部門がビジネス要求に即応するのも困難となるのである。

米国レッドハット
ソリューションズ
マーケティグ担当
シニアディレクター
マーク・コギン
(Mark Coggin)氏
「企業アプリケーション開発・デプロイの従来プロセスは、要件に従って技術を選び、アプリケーションを開発して、サーバにOSを載せ、その上にアプリケーションをデプロイして実行させるといったものでした。サーバ上のOSでアプリケーションを実行させるには、ランタイムライブラリやデータベース、各種サービスなどの稼働要件を一からそろえる必要があり、それだけでも多くの工数と時間がかかります。しかも、それらのアプリケーションを、まったく同じ構成で別の新しいサーバに移動したり、複製したりすることも難しく、IT部門にとって大きな悩みの種となっている。」と、米国レッドハットのマーク・コギン氏は指摘する。
デジタル変革の土台
こうした企業ITの課題を抜本解決するソリューションとして、レッドハットが普及に力を注いでいるのが、アプリケーションとその実行に必要なコンポーネントをすべてパッケージ化する「コンテナ」のテクノロジーである。例えば、仮想化技術の場合、仮想マシン(VM)やゲストOSも含めてアプリケーションの実行環境を個別に構築するのが通常である。これに対してコンテナは、OSのコアコンポーネントまでは共通して利用し、その共通基盤上で、ランタイムライブラリなどの実行環境やデータベースなどのミドルウェアを含めたアプリケーションを、いわば"パッケージ化"するのである。
「コンテナ技術を使うことで、アプリケーションは"イメージフォーマット"として扱われるようになり、コンテナの中には、アプリケーションの実行に必要な構成要素をすべて含ませることが可能となります。そのため、OS側での個別の設定は一切不要になり、手順の簡素化やオペミスの軽減などITプラットフォームの複雑性が大きく低減されることになります。このコンテナ技術は企業にさまざまなベネフィットをもたらし、デジタル変革の土台として大いに活用できます。」(コギン氏)。