オープンソースによるIoT時代の新たなモノ作り――レッドハットとアヴネットのパートナーシップが意味するもの(前編)

レッドハットは現在、グローバル技術商社アヴネットとの間で新たにパートナーシップを結び、今後急速に関係を深めていこうとしている。今回のパートナーシップの経緯や狙い、今後の展望などについて、両社のキーパーソンに話を聞いた。

ソリューションビジネスへのシフトに向け有力なパートナーを求めていたアヴネット

 アヴネットは、半導体・電子部品・情報機器・組込み向けハードウェア&ソフトウェアの各製品を取り扱う技術商社だ。創業は1921年、本社は米国アリゾナ州にあり、全世界300以上の拠点を通じて120カ国以上での販売実績を誇る。同社の日本法人では長年に渡り、主に日本の電子機器メーカーへ向けた半導体や電子部品、組込み基板や関連ソフトウェアなどの販売を手掛けてきた。

 アヴネットの米国本社ではエンベデッド事業の強化を狙いこの3月からインテグレーテッドソリューション部門を立ち上げ、その組織を全世界に展開していこうとしている。日本法人での改組は7月からの予定というが、それに向け日本法人スタッフは今まさに慌ただしく動いている。

 エンベデッドソリューション部 部長の小川貴弘氏は、「これまでのような単なる部品再販から、ソリューションビジネスへシフトしていきたいと考えており、そのための準備を進めています」と語る。

 「高度化していく市場の中で、当社の顧客である機器メーカーのニーズも大きく変化しており、従来のような開発支援、部材供給だけでなく、トータルなビジネス企画・提案能力が求められはじめてきています」

 今や、あらゆる機器にコンピュータが組み込まれ、その多くがインターネットへの接続機能を持ち始めており、単純な数だけでなく、その種類や役割も急激に増加している。しかし多くの機器メーカーが本来注力すべきことは、コンピュータそのものの開発ではなく、その機器に新しい付加価値を与え、市場競争力を高めることである。機器メーカーにとってみれば、市場への投入を迅速に行い、さらにユーザーをフォローするといったことまでを考えると、組込み基板だけではなく、OSやミドルウェア、さらには製品を生かすためのクラウドサービスまで、トータルで面倒を見ることができ、かつ信頼できるソリューションパートナーが望ましい。アヴネットは、そういった姿を目指しているのだ。

小川貴弘氏
アヴネット
マーケティング統括本部
エンベデッド事業本部
エンベデッドソリューション部
部長 小川貴弘氏

 「当社でも、取り扱いブランドを拡充し、これまでの組込み基板だけでなくより製品に近い商材も取り扱えるように準備を進めております。従来、米国本社や特定の地域でのみ扱っていたラインカードを日本にも取り込み、産業機械や医療機器、ホームオートメーション機器、アプライアンス機器にも入っていこうという方向性です」(小川氏)

 こういった組込みコンピュータをシステムとして役立てられるようにする上で欠かせないのが、OSや各種ミドルウェアだ。その強化のため、米国のラインカードにあったレッドハットが自然とパートナー候補として浮上したと小川氏は語る。

 「当社では他のOSも扱っていますが、より多彩な要件に対応したエンド・ツー・エンドのソリューションを提供し、我々の事業を隣接領域に拡大していくためには、さらなる有力パートナーが必要です。そこで米国本社をはじめとした情報を収集しつつさまざまな協業のスタイルを模索していました。その中でもレッドハットは、実績あるOSに加えてミドルウェアのラインアップも豊富で、提案の幅を拡大するための新プランの軸として考えるのは自然なことでした」

組込み分野での採用拡大を目指すレッドハットとの間で協業を交渉

 そうして、ソリューション拡充を進めるアヴネットとレッドハットが、日本においても出会うこととなる。レッドハット側から応じたのは、パートナー・アライアンス営業統括本部 OEM事業本部 Embedded営業 シニアパートナーセールスマネージャーの田中勝幸氏だ。田中氏は組込み向けパートナープログラムを担当しており、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)をはじめとする同社ソフトウェアの組込み製品への採用を促進させることが大きなミッションだ。

 レッドハットはこれまで、エンタープライズ系ソフトウェアが中心で、組込み分野の強化が課題となっていた。しかし近年では、IoTの広がりにつれて組込みとエンタープライズの領域がオーバーラップしはじめ、組込み分野でもエンタープライズ系のソフトウェアが求められるようになってきている。例えば小川氏が例に挙げたようなアプライアンス製品には、フットプリントの小さな組込み専用OSではなく、エンタープライズ系と同じくフル機能のサーバOSやサーバ用ミドルウェアが必要だ。いわばレッドハットにとっての大きなチャンスが、組込み市場の流れの中で発生してきていることになる。この市場での存在感を高めていくためにも、パートナー選びは重要だ。

田中勝幸氏
レッドハット パートナー・アライアンス営業統括本部
OEM事業本部
Embedded営業
シニアパートナーセールスマネージャー 田中勝幸氏

 「ソフトウエアベースのソリューションから商談へつなげる取り組みは着実に進めていましたが、組込みの市場ではまず利用したい「デバイス」からビジネスが始まることがとても多く、デバイスからの商談の入口にいるパートナーとの協業ができないか常々考えていました。こうしたタイミングで、アヴネットとの出会いがあったのです。アヴネットはレッドハットの既存のエンベッデッドパートナーとも補完関係になるため、我々としても渡りに船といったところでした」と、田中氏は言う。

 両社は協業に向けた調整を進め、近く正式なパートナーシップ契約が締結される見通しとなっている。この夏にも共同でのマーケティング活動など実際の施策を開始する計画だ。さらに今後は、日本法人どうしだけでなくアジアパシフィックなどグローバルでのアライアンスも拡大していく予定だ。グローバル企業どうしのアライアンスが、各国の市場に合わせた新たな体制を作るというのは、なかなか珍しいケースではないだろうか。

 後編では、両社の技術スタッフも交え、アヴネットの小川氏が「当社の出番がくる」というARM版RHELなど、テクニカルな話題を中心に両社の考えを紹介する。

提供:レッドハット株式会社
[PR]企画・制作 朝日インタラクティブ株式会社 営業部  掲載内容有効期限:2018年1月31日
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