Office 365への移行で、ネットワーク帯域が逼迫
ITの活用形態としてクラウドが定着し、企業は新たなサービスを導入するときだけでなく、オンプレミスで利用してきた業務アプリケーションもSaaS型のクラウドサービスへ切り替えるようになってきた。ところがSaaSを利用するにあたり、現状の企業におけるネットワークの構成には問題がある、とリバーベッドテクノロジー ソリューションエンジニア SI/SP テクニカルアライアンスマネージャーの中島幹太氏は指摘する。

リバーベッドテクノロジー株式会社
ソリューションエンジニア
SI/SP テクニカルアライアンスマネージャー
中島幹太氏
「現在のネットワーク構成は、社員の端末からいったん自社のデータセンター(DC)にトラフィックが流れて、そこから外部に抜けていく形です。こうすることでセキュリティは守れますが、通常業務で使っているようなアプリケーションをSaaSに移行すると、SaaSベンダーのアプリケーションサーバーが設置してあるDCへの通信が一気に集中して発生するようになり、帯域が逼迫します。さらにグローバルに拠点展開して各地に拠点があるような企業では、それぞれのトラフィックがDCに入ってくるまでに距離があるので遅延が生じます。そうなると社員のパフォーマンスが低下し、生産性が落ちてしまいます。そこが一番の問題です」(中島氏)
この問題が、いま国内の大企業において顕在化しつつある。「Microsoft Office 365」への移行や、クラウドストレージ「Box」の活用が本格化していることだ。リバーベッドテクノロジー セールスマネージャーの横田無我氏は次のように解説する。
「Office 365は、日本に本社がある日本企業の場合、国内のDCにサーバーが設置されますが、海外拠点からアクセスすると距離遅延の影響が出ます。するとレスポンスが悪くなり、ファイルが開くまでの待ち時間が発生します。東京にサーバーがある場合、国内であれば遅延は気にならないレベルです。それが国外に出て、台湾くらいになると確実に体感的に遅いと感じるレベルになります。PowerPointのファイルは数秒待たないと開きません。これがシンガポール、インドネシア、タイあたりだと10MBのファイルを開くのに1分かかってしまうレベルになります。さらに、北米や欧州、オーストラリアになると、もはや遅すぎて利用されなくなるレベルです」(横田氏)
また、Boxの場合は、クライアント側で同期をするBox Syncというアプリを使うと、誰かがアップロードしたファイルを自動的に別の人も同期できる。とても便利な反面、同期の際に大量のデータが転送され、人数が多ければそれだけ転送量も増えてしまう。しかも、流れるのは同じデータだ。