SAP NOW 臼杵
地方自治体がチャレンジする持続可能なまちづくり
~デザインシンキングから始める地方創生~

8月2日に開催された年次カンファレンス「SAP NOW」にて、大分県臼杵市がチャレンジする「持続可能な都市づくり」についてのセッションが行われました。
6月22日・23日に臼杵市で行われた「ラグビーワールドカップ観戦のために来日した外国人が臼杵市に立ち寄り、また来たい!と思う体験を提供するには?」というテーマのデザインシンキングは、「SAP HANA」の開発から拡販などを共に行うSAPグローバルテクノロジーパートナー・インテルと共同で開催されました。
デジタルを活用したまちづくりや観光誘致など、地方自治体にもデジタル変革の波が押し寄せる中、地方創生の新たなステージへいち早く突入した地域が目指す未来とは? 多彩なパネリストによるセッションの模様をレポートします。


地方自治体×テクノロジー企業。
2つの異分子が起こす化学反応とは

 大分県の東南部に位置する臼杵市は、醤油・味噌などをはじめとする醸造の町。さらに多くの文化財が今もなお残ることから、歴史の町としても知られています。その町とSAPジャパン、インテルが手を取り、デザインシンキングを開催したのは6月22日・23日のこと。翌年に開催が迫るラグビーワールドカップ日本大会を、インバウンド観光需要に対応した持続可能な都市づくりの起爆剤とするべく、様々なテクノロジー企業や機関と個人が参加したワークショップでは、多くの化学反応が促進されました。この取り組みから生まれた観光戦略や、新たな繋がりによる効果について紹介すると共に、約1ヶ月でクィックに作成されたSAP Cloud Platformベースのデモンストレーションを披露したのが今回のセッション。パネリストとして登壇したのは、大分県臼杵市の中野五郎市長、国連開発計画(UNDP)の岡橋麻美氏、ANAホールディングス株式会社の野島祐樹氏、国立大学法人 東京農工大学の坂根シルック氏、インテルの三浦健豪氏の5名。モデレーターはSAPジャパン原弘美が務めました。


 パネルセッション前半のテーマは、「臼杵市×Design Thinkingの化学反応」。まずは中野五郎市長が「デザインシンキングの開催は臼杵市にとって、非常に意義深いものとなりました」と会場に語りかけ、6月のイベントを振り返っていきます。デザインシンキングは同市にとって初めての試みであったため、実際に開催されるまで、その全貌が職員の誰にもわからなかったこと。多彩な経歴を持つ約60名の参加者らにより、どのようにワークショップが進行され、議論をされていくのか見当もつかなかったことなど、開催前の心境が語られていきました。しかし、世代や肩書き、国境を超えたコラボレーションが化学反応を生み、新たなアイディアの創出に成功。“行政だけがインバウンドの推進に取り組むのではなく、市民が一丸となって訪日旅行者を迎える”という地域全体の意識改革にも繋がったと話しました。

 ワークショップの参加者でもある3名のパネリストも、先進的なこの取り組みついて言及。「このような活動では、自治体トップのコミットメントが非常に重要です。しかし、今回のワークショップの中で中野市長は“良いアイディアは必ず採用する”と話されており、とても素晴らしいと思いました。外国人訪日客の視点から臼杵市の町を歩いた際には、地域全体の強い協力体制が感じられました」(岡橋氏)。東京農工大学の坂根氏は、参加者全員が積極的に課題に取り組む姿勢や、多様なアイディア創出の背景には、経歴や文化が異なる幅広い人材の起用があると指摘。新たな価値を地域にもたらすイノベーションは、多様な価値観とのかけ算により生まれるのだと教わりました。


 ANAホールディングス株式会社・野島氏は、10チームに編成されたワークショップで、アイディアを最も評価されたチームのひとり。セッション冒頭にてワークショップの映像が上映され、その際に開発が発表されたソリューションの提案者が野島氏でした。地域に点在する案内掲示板の多くが日本語表記だけであること、多様化する決済方法への対応、交通機関の利便性の改善など、浮き彫りになった課題を解決するツールとして、ICチップを組み込んだオリジナル絵馬や、パプリックビューイングの採用を提案した経緯や着眼点を説明してくれました。

地域に沿ったデジタル革命が、訪日インバウンドを促進。

 パネルセッションは、いよいよ後半へ突入。「地方自治体とテクノロジー企業のタッグ」をテーマに、その中で起きた化学反応を紐解いていきます。官民連携という視点から“持続可能な都市づくり”という課題に普段から取り組む岡橋氏は、従来の商品またはソリューションの提供にとどまらず、デザインシンキングという革新的な手法で、地方自治体の運営をサポートした今回のケースは、地方が抱える課題解決の新たな光であると話します。自らの市政に“住み心地の良い町”というテーマを掲げていると話す中野市長も、「今後はデザインシンキングを様々な課題解決に活用していきたい」とコメント。さらに「市民の立場に立ち、物事を考えていくというこの思考が、効率的で公正な市民サービスの提供に役立ち、地方自治体に新たな解決策を示してくれると信じています」と、力強い言葉を続けました。少子高齢化や産業・雇用創出など、様々な問題が地方自治体を取り巻くなか、多様化する市民ニーズに的確に対応し、これまでの概念に捉われずに行政課題に積極的に向き合うー。市民の視点に立ち返ることができるデザインシンキングは、“提供者と享受者のギャップ”を限りなく埋める可能性を秘めているのかもしれません。


 いよいよパネルセッションのバトンは、デザインシンキングの仕掛け人であり、臼杵市の出身者でもあるインテルの三浦氏へ。ワークショップのコーディネーターという視点から、開催の経緯や参加者の選出といった工夫などが明らかにされていきました。特に印象的だったのは、新たなことに挑戦し、変わっていくために必要なキーワードとして、プロセスや多様性といった単語が次々と挙げられていくなか、臼杵市や一般の方々に参加を呼びかける際、三浦氏が最も大切にしていたのが“パッション(情熱)”という言葉であったということ。ワークショップには参加者1人ひとりの情熱があふれ、優位意義なディスカッションが繰り広げられました。その背景には開催前から少しずつ起きていた、三浦氏の思いによる化学反応が作用したのかもしれません。

 最後の登壇者は、臼杵市デザインシンキングのフォローアップパートナーとして、大分より参加をする株式会社ザイナスの山本竜伸氏。パネルセッション冒頭の映像でも紹介したソリューション・オリジナル絵馬とパブリックビューイングの全貌を、デモンストレーションにて披露していただきました。開発が進んでいるのは、2つの優勝アイディアのプロトタイピング。それらの開発により提供するのは、システムを活用したスマートな観光体験です。スマートフォンアプリと連動する絵馬は、初期登録を済ませるだけで多彩なツールに変身。観光スポットの掲示板に絵馬をかざすだけで、案内文が母国語に変換されるほか、デザインシンキングの際にインバウンド対応の課題として挙げられた、買い物代金の決済やキャッシュのチャージ機能なども兼ねているといいます。さらにそれらのデータに基づいた観光クーポンの配信や、パプリックビューイング会場への誘導といった仕組みも検討。ほかにも、テクノロジーを活用したインバウンドへのアプローチが多く組み込まれていくといいます。


 「あの地域に行ってみたい。だけど大丈夫?」。外国人訪日客なら誰もが抱く不安を、地域に沿ったデジタル革命が解消に導き、地方自治体の新たな可能性を開拓していくー。テクノロジー企業と自治体による、新たなまちづくりのモデルケースが九州の地方都市・臼杵市から生まれようとしています。

提供:SAPジャパン株式会社
[PR]企画・制作 朝日インタラクティブ株式会社 営業部  掲載内容有効期限:2018年12月28日
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