仮想的な共有ストレージを提供するSIOS DataKeeper
とはいえ、パブリッククラウドに高可用性構成を持ち込むことは、これまで容易なことではなかった。これは「クラウド環境において標準では仮想マシン間で共有可能な信頼性を備えた共有ストレージが提供されていない」という問題に起因するもので、Microsoft Azureにとっても例外ではない。「共有ストレージを置かずに高可用性構成を組むことも不可能ではありません。ですが、これまでオンプレミスで使用した方法とは異なる構成となりますので、綿密な検証が必要となります。」と北川氏は語る。
この課題を解決すべく、日本マイクロソフトがサイオスとの提携によって打ち出したのが、「SANLess Clusters(共有ストレージを必要としないHAクラスター)」を利用して、Microsoft Azure上で稼働するMicrosoft SQL Serverの高可用性を維持するという方法である。SQL Server が稼働する仮想マシンに対して、あたかも共有ストレージが存在しているように見せかける仮想的なディスク領域を提供するのだ。このソリューションのベースとなっているのが、サイオスの「SIOS DataKeeper」(以下、DataKeeper)である。
具体的には、Windows Serverのフェールオーバークラスタリング機能である「Windows Server Failover Clustering(WSFC)」ならびにMicrosoft SQL Serverの高可用性構成を支える「AlwaysOn」機能、DataKeeperの連携によって対象システムの高可用性を維持する。本番系ノードに障害が発生した場合、WSFCが待機系ノードにフェールオーバーをかけるが、その際利用される WSFC クォーラム ディスクとしてDataKeeperが提供する共有領域を設定しておくのである。
オンプレミスでの可用性向上の手段としても汎用的に活用することが可能

キウイフルーツ界の世界的トップ企業であるニュージーランドのゼスプリインターナショナル社は、天候や災害の影響を受けることなく業務継続を支えるIT環境を実現すべく、Microsoft Azure上で実際にこのSANLess Clusters構成を採用したSAP ERPシステムの運用に臨んだ。「万が一、SAP ERPシステムのインスタンスがダウンした場合でも、十数秒以内でフェールオーバーが完了する高度な可用性を実現しています」と北川氏は語る。
※参照元:
https://customers.microsoft.com/Pages/CustomerStory.aspx?recid=11405
なお、日本マイクロソフトでは、データベースファイル領域にPCIeスロット直結のフラッシュストレージを採用することで超高速トランザクション処理を実現した「SQL Server SSD Appliance」を複数のパートナーと提供している。「このアプライアンスの高可用性を維持する手段としても、SANLess Clusters構成を利用することができます。」と北川氏。
DataKeeperは、パブリッククラウドかオンプレミスを問わず、汎用的なHAクラスタリング構成をシンプルかつ低コストで実現する基盤ソフトウェアとして活用できるのだ。
また、SIOS DataKeeperはMicrosoft Azure上で正式に動作認定されており、マイクロソフト社の「Marketplace」において利用が可能だ。