CentOS移行の選択肢は?
CentOS Linuxは、有償版のRed Hat Enterprise Linux(RHEL)をベースとした無償のLinuxディストリビューションで、十数年の間広く利用されてきた。しかし、CentOSプロジェクトは、当初2029年5月31日までとしていたCentOS 8のサポート終了を2021年12月31日に変更した。これより前のバージョンのCentOS 7は2024年6月30日まで利用できるものの、CentOSのユーザーはほかのLinux OSに移行する検討が必要となる。

SUSEソフトウェアソリューションズジャパン株式会社
アカウントエグゼクティブ
亀田 和大氏

SUSEソフトウェアソリューションズジャパン株式会社
パートナー エグゼクティブ
小川 直樹氏
CentOSの移行先として候補として挙げられるのは、互換性の高いRHELか、CentOS互換の「Oracle Linux」(オラクル提供)や「MIRACLE LINUX」(サイバートラスト提供)、そして「Ubuntu」など無償Linux OSだ。RHELは互換性が高いものの利用料が発生し、Oracle LinuxやMIRACLE LINUXも同様だ。無償Linux OSを利用する場合は、互換性が懸念されるため、移行作業や運用の見直しをしなければならない。
こうした状況において、現状のCentOS環境をそのまま使えるようにするのが、SUSEのCentOSサポートだ。費用はかかるものの、2029年5月までこれまでの環境を引き続き利用できるため、次の環境への移行計画を慌てずにじっくり立てることができる。
「多くのユーザーがサポート終了の2年前くらいから移行先の検証をするでしょう。2022年はCentOS 7のサポート終了も2年前となりますので、移行の準備をされると思います。CentOS 8のサポートが2022年からなくなって心配される方も多いと思いますが、SUSEのサポートであれば2029年まで利用できます」と語るのは、SUSEソフトウェアソリューションズジャパンの亀田 和大氏だ。また、「今回のCentOS8の突然の終了にともない、他のOSに移行する必要があるが、稼働しているアプリケーションの動作確認や移行計画に時間がかかるため一旦CnetOS7に戻してアプリケーションを一時的に利用するという考えのお客様もいらっしゃるかと思います」とSUSEソフトウェアソリューションズジャパンの小川 直樹氏も説明する。

図:CentOS 8移行の選択肢
日本市場向けにリーズナブルな価格で提供するため、顧客対応を行うシステムインテグレーターの日本コムシスや、ハードウェアを提供するデル・テクノロジーズなどのパートナーとともに、CentOSサポートを展開していく。
日本コムシス、中央省庁に納入したシステムに
SUSEのCentOSサポートを適用
日本コムシスが行った、ある中央省庁のシステムでのCentOSサポートの事例を紹介しよう。2019年から2024年7月まで続くプロジェクトで、CentOSサポート終了に伴い、プロジェクト期間中にセキュリティや不具合の修正パッチが提供できなくなるため、当初の入札条件を満たさない事態となってしまった。

日本コムシス株式会社
ITビジネス事業本部
ソリューションビジネス事業部 SE部
課長代理
須藤 康次氏
日本コムシス ITビジネス本部 ソリューションビジネス事業部 SE部 課長代理の須藤 康次氏は「今回のプロジェクトの用途は研究・開発のために高度な計算が必要なシステム向けでした。無償で使えるCentOSなら予算の範囲でより多くの計算ができるサーバー台数を確保できると考えて提案しました。CentOSのサポートが終了することは想定していませんでしたので、驚きました。いろいろな選択肢のなかから、パッチの提供が継続されるSUSEの延長サポートなら現在の環境をそのまま使えるので導入に至りました」と語る。
SUSEを含む複数の選択肢でのアプリケーションの動作や移行の手間などの検証比較を踏まえて顧客にSUSEのCentOSサポートを提案し、採用された。選定の決め手は、SUSEのこれまでのLinuxサポートの実績に加え、コストや移行の手間の少なさだ。互換性の高いRHELの利用料は高く、いずれにしても新しいOSへの移行は別途エンジニアの稼働が伴う。想定外の支出となるなかで、ベストな選択だったと言えるだろう。

図:導入ソフトウェア動作検証
CentOSの利用者は多いため、日本コムシスにはすでに多数の顧客からの問い合わせが来ている状況だという。最近需要の多いコンテナ技術を管理するKubernetesの提供も行っており、SUSEが提供するコンテナ管理プラットフォーム「Rancher」も扱っている。須藤氏は「研究のために数百台規模の計算機に並列計算される用途も多いのですが、コンテナ技術を使えばコスト効率もよく安定した環境を提供できます」と話す。

日本コムシス株式会社
ITビジネス事業本部
ソリューションビジネス事業部 営業部
課長代理
益田 博成氏
また、日本コムシスITビジネス事業本部 ソリューションビジネス事業部 営業部 課長代理の益田 博成氏は、今回の取り組みについて、「デル・テクノロジーズと組み、別のアプローチでの提案を予定しています。弊社はもともと工事会社から始まっているためそのイメージが強いかもしれませんが、SUSEやデル・テクノロジーズといったパートナー企業との連携によって、お客様がお困りの状況を理解し、電源/配線工事からファシリティ、ネットワーク、サーバ、ミドルウェア、コンテナまで、ICTインフラに関わるあらゆる提案とインテグレーションを一貫して提供しています。」とアピールする。

日本コムシス株式会社
ITビジネス事業本部
オペレーションサービス部
課長代理
清水 裕樹氏
日本コムシスは、SUSEのパートナーとしてCentOSサポートのヘルプデスクも担当する。ITビジネス本部 オペレーションサービス部 課長代理の清水 裕樹氏は、「SUSEと協力することによって、私たちが足りていなかった部分を補うことができました。また今後お客様からの要望によってハードウェアが必要になれば、デル・テクノロジーズとの連携も生まれるでしょう。SUSEとのCentOSサポートを機に、新しい価値を提供することでビジネスが広がることを期待しています」と話す。
CentOSサポートは、DELLにとっての
カスタマーファーストの一環
SUSEとデル・テクノロジーズは20年以上前からのグローバルでのビジネスパートナーだ。デル・テクノロジーズとしては、同社のハードウェアにSUSEなどのOSをバンドルするOEMはもちろんだが、顧客の要望にあわせてOSや周辺機器も含めて他社製品も取り入れたソリューションを展開している。カスタマーファーストの精神によって、自社製品だけではカバーできない要望に応えるべく、さまざまな他社製品をフラットに提供している。こうした活動は、結果的に自社製品の利用拡大につながっていくという。今回のCentOSサポート終了に伴うSUSEのCentOSサポートを日本コムシスとともに提供するのも、その精神に基づくものだ。
デル・テクノロジーズ社公共・医療分野担当者は、「研究所をはじめ、CentOSを利用されているお客様は多いです。今回のCentOSのサポート終了の解決策としては別のOSという選択肢がありますが、移行にはコストがかかります。また、サポートを無視して利用すると、CentOS向けの業務アプリケーションの動作に責任を取ることができません。SUSEの延長サポートなら、利用している皆さんも幸せになると思っています」と話す。
2029年まで提供されるSUSEのCentOSサポート。すぐには移行できないなど、環境の移行計画に余裕を持たせたいといったケースに大いに役に立ちそうだ。
※サイバートラストが提供する「MIRACLE LINUX」につきまして、2021年10月にリリースした「MIRACLE LINUX 8.4」からライセンスフリーとなりました