「働きやすい会社」ランキングの常連、ヴイエムウェアのIT部門担当副社長が明かす同社の「働き方改革」
2017年10月31日〜11月1日に開催された「vFORUM 2017 TOKYO」では、デジタルトランスフォーメーションによって従業員の生産性を高めた数々の事例が紹介された。米ヴイエムウェアのIT部門ビジネスIT担当副社長エイボン・プーリ氏が、ヴイエムウェア自身の取り組みを紹介したセッション「【社内事例】VMwareにおけるモバイル活用の取り組み 〜モバイル時代における革新〜」の内容をレポートする。
「働きやすい会社」ランキング常連の取り組み
ヴイエムウェアでは従業員がいつでもどこでも働くことができる「デジタルワークスペース」を実現する製品として「VMware Workspace ONE」を提供している。プーリ氏の講演はこのWorkspace ONEを活用してヴイエムウェア自身がどのようにデジタルワークスペースを構築していったかを解説するものとなった。

VMware, Inc
IT部門 ビジネスIT担当 副社長 エイボン・プーリ氏
ヴイエムウェアは「働きがいのある企業」ランキングの常連だ。2017年にはGreat Place to WorkとFortuneが選ぶ最も働きがいのある企業に3年連続で上位にランキングされている。そんなヴイエムウェアが社内IT環境の取り組みに着手したのは4年前のこと。プーリ氏によると、背景には2つのニーズがあったという。
1つは、社員がコンシューマ向けのシンプルなITを単一の環境で使いたいというニーズだ。当時の社内ITはレスポンシブWeb技術に対応しておらず、画面遷移なくアプリを操作することができなかった。また、SalesforceのようなSaaSのようなアプリの利用も難しかった。
一方、会社側では社員のプライバシーや、顧客の重要情報を保護するため、セキュリティ、コンプライアンス、ID管理を徹底したいというニーズが強かった。これらを徹底しようとすると、社員向けのアプリの利用を制限せざるをえないシーンも多かった。
プーリ氏は「2つの相反するニーズがあったのです。これを満たすプラットフォームはどうすれば作ることができるのか。我々は当時開発を進めていたWorkspace ONEの技術を取り入れながら、社内ITを整備していきました」と振り返った。
Mobile CoEを設置してアジャイル開発を推進
まず取り組んだのは、組織体制の整備だ。社内でモバイル活用を推進する拠点として「Mobile CoE(Center of Excellence)」を設置した。 CoEではまず、「従業員向けモバイルアプリケーションの開発とデプロイ」、具体的にはレスポンシブWebやSaaSに対応することに取り組んだ。そして次の取り組みが「ID管理やアクセス性、エンタープライズモビリティ管理などを実現する基盤構築」。これはセキュリティやコンプライアンスに対応する取り組みだ。この2つは背景にあった社員と会社側、両方のニーズに直接的に対応するものと言える。
その一方で、今後に向けた新しい視野の取り組みもあった。CoEの3つめの柱となったのが実際のビジネスに好影響を与えることができるユースケースの拡大だ。実際のグローバルサポートサービスやアナリティクス、ビジネス生産性に寄与するようなユースケースを積み上げていくことになった。
「CoEで取り組みを推進するためのフレームワークを作りました。イノベーションのためのアイデアを推進するために、社内でベンチャーキャピタル的に資金を募る仕組みや、クラウドネイティブなアーキテクチャ設定の仕組みを整え、アジャイル開発やリーンスタートアップの方法論を使ってプログラムを進めていきました」(プーリ氏)
「インキュベーション」と「エクスペリエンス向上」の取り組み
取り組みは大きく3つのフェーズに分かれている。3つのフェーズにおけるそれぞれのテーマは「インキュベーション」「エクスペリエンス向上」「ビジネスイノベーション」だ。
インキュベーションのフェーズでは、Webのレスポンシブ対応と社員の生産性向上にフォーカスしたアプリ開発に取り組んだ。課題となったのは、さまざまなSaaSアプリの利用が進むなか、ユーザーの認証や承認申請などをどう管理するかだ。
「カギになったのは2014年に買収した『AirWatch』の技術です。さまざまなデバイスを統合管理するもので、これらを『Identity Manager』などと組み合わせることでモバイルからの多要素認証やワンタッチアクセスを実現しました」
社員の生産性向上については、社員を検索できるアプリ「People Search」やさまざまな承認を行うアプリ「vApprove」を開発した。vApproveはマネージャーの50%以上が利用するなど、CoEの取り組みを推進する起爆剤としての役割を担った。People Searchは現在最も利用率の高いアプリだという。
2つめのエクスペリエンス向上のフェーズでは、コンシューマアプリのようなシンプルで使いやすいUI開発と、エンタープライズ利用に適したセキュリティの確保に取り組んだ。まずは実用に耐えうる最小限の製品を社内に提供するところから始め、4週間の期間で改善を繰り返すという開発スタイルを採用した。
「開発と運用は、DevOpsチームとしてまとまって動く体制に移行しました。お互いの指示を持つ必要がなくなり、開発が効率化しました。また、ユーザーにアプリを提供しニーズに沿って開発するので、誰も使わないアプリに投資することがなくなりました」
アプリとしては営業担当者向けの「Sales Pulse」、パートナー向けの「vPartners」などを開発して提供した。
ビジネスイノベーションを加速させる取り組み
現在は、3つめのビジネスイノベーションに向けた取り組みのフェーズに入っている。具体的には、自社開発したアプリケーションの機能改善と、新しいアプリの開発、アプリの全社展開などだ。
Sales Pulseは、営業に関するデータをダッシュボード上ですばやく確認できるアプリで、データのリアルタイム更新に対応した。それまでのシステムでは、基幹システムの業務データをDWHに格納するのに24時間バッチで対応していて、そこからダッシュボードに反映されるまではさらに24時間かかっていた。
「アプリだけでなく、バックエンドを変更したことで、ビジネス状況をリアルタイムに把握できるようになりました。利用効果を伝える動画を作成して社内で公開。いまでは営業担当者の25%が利用するまでになりました」(同氏)
このほか、センサを使って会議室予約を効率的に行う「Smart Workplace」や、質問に自動回答してユーザー認証などを行う「vAssist」、電気自動車向けの充電施設表示アプリ「EV charge」などを提供した。
最後にプーリ氏は「AirWatch、Identity Manager、Horizonで構成するWorkspace ONEは、ヴイエムウェア社内ITの取り組みでも欠かせないものです。デジタルワークスペースの改善とビジネスイノベーションに向けて、今後もさらに改善を続けていきます」と話し、講演を締めくくった。
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