イケてる中堅中小企業のための
マルチクラウド実現方法 「ZDNet Japan Next Generation IT Infrastructure Day Vol.2」レポート

「ITインフラのモダナイズ」こそが、デジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた最初の一歩となる。ITインフラのモダナイズが、データ活用、働き方改革、業務のデジタル化、クラウドネイティブアプリの活用など競争力を生み出す施策を実施するための原動力になるからだ。そして、モダナイズの理想形として浮かび上がるのが、マルチクラウド環境の構築である。8月23日に開催された「ZDNet Japan Next Generation IT Infrastructure Day Vol.2」では、予算や専門人材の確保に制約を持つ中堅中小企業を対象に、マルチクラウド環境構築の基礎から応用までを解説された。

中堅中小企業のIT活用、できる企業とできない企業の違いとは

中堅中小企業でIT活用がなかなか進まず、DXへの移行が難しいと言われて久しい。その解決策として注目されているのが「越境思考」というキーワードだ。最初の講演では、「越境思考」を提唱し、多数の企業変革支援、講演・執筆活動を行っている、あまねキャリア株式会社の沢渡あまね氏が登場した。

中堅中小企業のIT活用の実態について沢渡氏は、「二局化している」と指摘する。デジタルマーケティング、ブランディング、テレワークなどを採り入れた新しい働き方を実践している企業と、そうでない企業の間の格差が広がっている。静岡県浜松市のある調査では、テレワークを実施している企業が5%に満たなかった。

失敗の要因は、社員がみな同じ働き方をすることを正義とする考え方が定着していることにあったという。それがITや人材育成など見えないモノへの投資を抑制し、結果としてデジタル化が遅れてしまう。雇用、職種転換が進まず「デジタル経験格差」が生じてしまった。「テレワークができなくても、クラウドサービスなどのITの仕組みを使いながら、管理にかかる時間を圧縮し、利益を生み出す体質に転換する必要がある」と沢渡氏。さもなければ、人材採用が難しくなり、イノベーション力の格差につながってしまう。

さらに「IT活用により既存の職種の意味を再定義するべき」と続ける。それにより、営業担当者がデジタルマーケティングの役割を担うなど、職種の再定義が可能になるという。

「成功の条件はトップが決意を持つこと」(沢渡氏)。IT人材に貧乏くじを引かせず、十分な権限、リソースをIT部門に付与する。このようにして、高利益体質への転換、脱下請けなどの課題に経営側がどこまでコミットするかが重要だ。実現するためには、社員が外に出て、稼ぎ方や働き方が違う他の地域や職種の人と交わる、すなわち「越境」するのが得策である。それが新たな勝ちパターンを生むことにつながると沢渡氏はまとめた。

クラウドの高コスト化を避ける最適解とは

続いて講演したのは、システムインテグレーターであるJBCCのPFS事業部でソリューションアーキテクトを務める長門祐介氏だ。テーマは「“ムダがクラウドを高くする”ベアメタルと従来型IaaSを最適配置」である。クラウド移行をなるべく早く成功させ、定着化させるまでの道のりについて語った。

クラウドを前提にしたインフラのコストについて「サイジングと調達の最適化によって大幅にコストは下げられる」と指摘する。ただし、その際には丁寧なコスト比較をする必要があるという。JBCCはそれを実現するために「クラウド移行コンサルテーションサービス」を無償で提供している。クラウド移行を、構想・計画・アーキテクチャ策定という3つのフェーズに分け、JBCCが蓄積してきたノウハウを生かしてクラウド移行アセスメントを提供するものとなっている。

また、クラウド移行における制約についても詳しく紹介する。ソフトウェアライセンスポリシーや非機能要件制約、ネットワーク構成変更、物理デバイス制約、クラウド技術制約、社内情報セキュリティポリシーの6つを挙げている。

クラウドの採用について、移行ノウハウだけでなく制約にも触れながら、コストを抑制した手法を述べており、実施検討企業にとって役立つ情報になっている。

オンプレミスのクラウド移行をスモールスタートで実現できるサービス

長年にわたりビジネスを支えてきたオンプレミスシステムを、そのままクラウドに移行させたいという企業は多い。その要望を叶えるのが、VMwareとAWSが共同開発したサービス「VMware Cloud on AWS」である。VMware vSphereベースのオンプレミスシステムをAWS上にアプリケーションに手を加えることなく移行できるものである。

伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)のサービススプリント部 エキスパートエンジニアの川村篤史氏は、オリジナルサービスとし提供する「VMware Cloud on AWS マルチテナント」について講演した。これは、CTCがいったんリソースを借り入れ、VMware Cloud Directorサービスを利用することで、アプリケーションを各ユーザー企業にとって適切なサイズに分割して管理できるというメリットがある。通常は、ユーザー企業は1社でリソースを持つ必要があるため、有効に使い切るためには規模やお金が必要となる点がネックになることが多いという。

「例えるならCTCが土地とマンションを用意し、ユーザーは利用規模に応じて必要な数の部屋を借りるというイメージです」と川村氏。これであれば、新たな事業を立ち上げる際に必要となるインフラをスモールスタートで用意できる。利用リソースが限られていることの多い中堅中小企業にとって、自社でマンションを建設するよりも高いコスト効率を実現できることが分かる。

有力な災害対策およびランサムウエア対策としてのクラウドDR

ヴイエムウェアとして講演を担当したクラウドサービス事業部シニアプロジェクトマネージャーの荒井利枝氏は「災害対策としてのクラウドDR(ディザスタリカバリ)のすすめ~ランサムウエア被害からの迅速な復旧も可能」をテーマとして設定。実現するためのヴイエムウェアのクラウドサービスを紹介している。

荒井氏は、DRを取り巻く市場動向について、BCPにおける想定リスクが変動しているため「BCPの必要性は高いにもかかわらず策定が進んでいない」と説明する。2017年度の想定リスクは上位から自然災害、設備の故障、火災爆発事故だったのに対して、2022年度は自然災害、感染症、そして情報セキュリティが上位に入ってきた。特にランサムウエアの被害状況が悪化しており、情報セキュリティが新たなリスクとして認識されている。

「従来の災害対策には課題があった」と荒井氏。DRでは本番サイトとリカバリサイトの両方を持つことになるため、実質的に設備投資と運用負担が倍になってしまう。コストの最適化が求められるだけでなく、オペレーションの簡素化、信頼性の向上、さらに情報セキュリティの安全性確保もDR実装の課題になっている。

これを解決するのが、ヴイエムウェアのクラウド環境である。具体的には、CTCも紹介したVMware Cloud on AWSを、安全で隔離されたクラウドインフラをリカバリサイトとして利用する「VMware Cloud Disaster Recovery」である。DRの取り組みにかかるコストを大幅に削減できることに加え、DRプランを事前定義することによる有事のオペレーションの簡素化、フェールオーバーテストなどを通じて安全で確実な災害対策を実現できることなどさまざまなメリットがある。

また新たな脅威であるランサムウエアへの対策として、VMware Carbon Black Cloud Workloadと連携できることも、詳しく説明している。

提供:ヴイエムウェア株式会社
[PR]企画・制作 朝日インタラクティブ株式会社 営業部  掲載内容有効期限:2022年10月31日
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