この「株式会社名古屋産業大学グリーン・ソーシャルビジネス」(以下、名産大GSB)は、名古屋産業大学が目指す「共育課程」の一環となるもので、伊藤雅一学長が一般社団法人日本CO2濃度マップ普及協会(1)に参画する企業経営者に共育への協力を呼びかけ、設立に至ったもの。環境ビジネスを展開する企業との連携のもとに、大学生が名産大GSBの社員となって経営企画、営業部門や業務管理部門など企業経営全般に主体的に関わり、CO2をテーマとしたソーシャル・ビジネス(社会的事業)を展開します。
今回の名産大GSB設立発表について、同社の代表取締役に就任した伊藤学長は「これは『株式会社を教室に』をコンセプトとした産学連携の学習モデルである同時に、新しいビジネスモデル。PBL(Project Based Learning)型の企業講座の開催、これに基づく省CO2化の提案とその実践を通して、環境ビジネスの即戦力となる人材の育成に取り組んでいく」と抱負を述べています。
名産大GSBの環境ビジネスとしては、企業や地方自治体を対象にLED照明普及による省CO2化の支援や企業と共同開発したCO2濃度測定器の販売などが挙げられています。初年度(平成23年度)は、専門ゼミナールの一環として、3年次以降の大学生約100名が名産大GSBに参画します。また、大学生以外にも幅広く参加の機会を提供していく予定です。
平成24年度にスタートする新カリキュラムからは、3年次春学期(4月~9月)を対象とした長期インターンシップを実施する計画で、この履修によって18単位の取得が可能です。また、希望する学生には3年次秋学期以降についても、会社運営に継続的に参画できる体制づくりを準備しています。
そして事業収益は、CO2濃度測定局の拡大とこれに基づく環境教育の普及など低炭素社会
への貢献と学生支援に還元されます。平成28年度には、取締役全員が学生により構成され、企業経営は学生の自治と責任において運営していくことを目指しています。
日本経済の成長を牽引する戦略分野の一つとして政府の新成長戦略では、グリーン・イノベーションによる新たな市場開拓と雇用創出が望まれています。その一方で、大学教育においては、昨今の厳しい雇用情勢などを踏まえ、大学生の社会的、職業的な自立に関する指導(キャリアガイダンス)の推進が求められています。
こうした背景の中で、名古屋産業大学では、2009年4月より建学の精神に沿ったより質の高い教育を目指して、「幅広く学ぶ」、「実践力を身に付ける」、「専門力を身に付ける」、「多様な学び方ができる」という4つの学びのステップアップに向けた教育課程の見直しを進めてきました。
また、学びのステップアップに当たっては、経済産業省の「体系的な社会人基礎力育成・評価システム開発・実証事業(2)」、文部科学省の「大学教育・学生支援推進事業(3)」、「大学生の就業力育成支援事業(4)」の採択を受け、企業や地域と連携した実践型学習の導入などを通じて、キャリアガイダンスの充実に取り組んでいます。
すでに名古屋産業大学では、東海3県を中心とする小・中学校、高等学校等との連携のもとに、学校周辺のCO2濃度を調査し、その成果をCO2濃度マップにまとめ、地域環境、地球環境への関心と理解を高める環境教育プログラムの開発に取り組んできました。この「CO2濃度マップに基づく環境教育」には、大学生も自らの卒業研究の一環として参画するとともに、受講した児童・生徒は、これまでに2,000人を超えています。また、環境教育の基盤となるCO2濃度測定局の設置とこれを結ぶCO2濃度常時測定システムの整備も進められています。
今回の名産大GSBの設立は、CO2濃度測定局の拡大やこれに基づく環境教育の普及、環境ビジネスの即戦力となる人材の育成など低炭素社会の実現に向け大きなステップとなります。
注釈
(1)一般社団法人日本CO2濃度マップ普及協会は、後述する「CO2濃度マップに基づく環境教育」の全国的な普及を目的に設立された産学連携の組織。
(2)学生が入学してから卒業するまでの間に受講する様々な科目を体系的に編成することで、学生の社会人基礎力を育成、定着させる教育システムモデルの開発・実証を行うことを目的とした事業。
(3)大学等の学士力の確保や教育力の向上を図ることを目的とした事業。教育の質保証の取組の高度化(テーマA)、就職支援の強化など総合的な学生支援(テーマB)の2つのテーマによって構成される。名古屋産業大学は、テーマBの採択を受けている。
(4)教育課程の内外を通じて、学生が社会的、職業的自立につながる就業力をしっかりと身に付けさせるための大学教育改革の取り組み支援を目的とした事業。名古屋産業大学では、企業や地域等と連携した「共育課程」の仕組みづくりや多彩なインターンシップの機会づくりに取り組んでいる。
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