「アレキシサイミア」は、日本語では「失感情言語化症」、「感情言語化困難症状」あるいは単純に「失感情症」と呼ばれています。この傾向を有する人は、感情を言葉に出して表現することが不得意です。その原因は表現力などの問題ではなく、そのベースとしての「感情を認識する」ことが不得意なことにあります。つまりストレスがあっても、今自分がストレスを持っていて苦しい状態にあること自体を認識できない。苦しさだけでなく、悲しみ、怒り、あるいは喜び、幸せ、愛情などを感じることもないといいます。その意味で、外からは問題が認識されにくいのです。
■最初の提言
「IT技術者の能力開発に重点を置き技術者を孤立させず、的確に問題が解決できる体制/仕組みの構築を」
IT業界の経営者や管理者はまずIT技術者の能力開発に重点を置き、その開発された能力をベースにして、業務を遂行するというプロセスを厳守して頂きたい。さらに技術上の問題などを積極的に吸い上げ、技術者を孤立させず、的確に問題が解決できる体制/仕組みの構築をお願いしたい。
具体的には、ツールボックス・ミーティング 、ウォークスルー会議 、エキストリーム・プログラミングでのペア・プログラミング の採用などは、技術者の孤立を防ぐための解決策になるものと考えられます。そして技術者が不安や悩みを抱え込まないよう、ストレスマネジメント能力の育成にも尽力して頂きたい。
そして最も重要なことは、これらの前提としてIT技術者が所属する組織が情報化に関する高い理念を持ち、IT技術者が自分の将来を託すに値すると思える企業・組織にすること、その上でそれを経営者や管理者が自信を持って積極的に部下や社員に働きかけ、語り続けていくことです。
ただしこのことは一般のIT技術者を対象としたもので、アレキシサイミア傾向を有する人に対しては「更なる配慮」が必要となります。
■第二の提言
「アレキシサイミア傾向を有する人を個人情報保護の趣旨を前提に識別し、その人のストレスの蓄積を回避する方策を採る」
「さらなる配慮が必要」ということは、アレキシサイミア傾向を有する人は既にストレスを蓄積していても、本人がそれを自覚することがないためです。
ストレスを自覚しないために、それについての不満や苦情を口にすることがない。周囲の人も、その人に当然ストレスがあるはずと認識していても、本人がそれについて普通の人のように不満などを一切口にすることがないので、「著しくタフな人」と誤解する可能性があります。それでもストレスはその人の体内に蓄積し、しきい値を超えると心身症などが発症します。
今ではアレキシサイミア傾向を有する人は、20個程の質問に回答するだけ、というような簡単な検査で識別できます。この方法でアレキシサイミア傾向を有する人を識別し、その人のストレスの蓄積を回避する方策を採るようにしようということが、IT業界の経営者/管理者に向けた2つ目の提言です。
また政府は、まずアレキシサイミアについて認識し、それについての実態調査を実施するところから始めて頂きたい。
■まとめ
日常我々が「タフな、ストレスに強い人」と考えている人でも、本人が自覚しないままストレスを蓄積していることがありうる。そして突然それがしきい値を超えてうつ病を含む深刻な病気が発症する危険性があることを、IT業界の経営者・管理者は強く認識し、それに対する対応をお願いしたい。
アレキシサイミアは病気ではありません。私達がアレキシサイミアについてもっとよく知り、適切に対応することができれば、少なくともIT業界でうつ病や心身に関わる問題を減らせることができます。そしてその結果として、IT技術者や企業、さらには業界全体の負担を一層軽減することが可能となります。
一般社団法人 情報システム学会「アレキシサイミア(失感情症)への対応についての提言」の全文及び参考文献は、下記アドレスで読んでいただけます。
(リンク »)
■情報システム学会(Information Systems Society of Japan)について
設立は2005年。2011年4月1日より一般社団法人として活動を開始。
学会の主要なテーマとして、情報システム人材の育成、実務家と研究者の交流、これからの情報システムのあり方の追及が挙げられます。
事務局所在地:〒102-0081東京都千代田区四番町4-13 I・S四番町ビル4F
会長:杉野 隆
電話:03-6380-9514(事務局員不在時は留守番電話、FAX兼用)
URL: (リンク »)
お問い合わせにつきましては発表元企業までお願いいたします。