独立行政法人 情報通信研究機構(NICT)
UWBを利用した高精度の屋内測位システムを開発
【ポイント】
■UWB技術を利用して、リアルタイムで数10cm程度の高精度の屋内測位システムを開発
■UWBの測定距離を従来の3倍以上に増大させることで実用的なシステム開発が可能に
■ショッピングでの顧客サービス向上や物流倉庫での作業効率化、視覚障がい者の歩行支援などに活用が期待
独立行政法人情報通信研究機構 (リンク ») (以下「NICT」、理事長: 坂内 正夫)は、UWBを活用した高精度の屋内測位システムを開発しました。リアルタイムで数10cm程度の高精度で位置測定ができ、スマートフォンやタブレットなどの携帯端末と組み合わせて用いることで、利用者の位置情報に連動した多様なサービスの実現が可能です。
今回開発した高精度の屋内測位システムをショッピングモールや物流倉庫に設置し、顧客位置に連動したショッピング情報等の提供や会計まで行かなくともクレジット決済できるサービスの実証実験や、作業員やフォークリフト等の動線把握による作業効率と安全性向上のための実証実験を行っています。また、本システムは、音声による読上げと音声入力ができるため、視覚障がい者の歩行支援などへの活用が期待されます。
【背景】
UWBを用いた屋内測位システムは、ナノ(10のマイナス9乗)秒オーダーの非常に短いパルスの電波を用いることで、Wi-Fi(数m程度の精度)やIMES(10m程度の精度)等の屋内測位システムより一桁以上高い数10cm程度の精度で位置測定することができます。しかしながら、UWBの利用には、測定距離が短いため、測距のための固定機を多数設置しなければならないといった課題があり、コスト等の面から実用化の支障となっていました。
【今回の成果】
今回開発したUWB(7.25-10.25 GHz)を利用した高精度の屋内測位システムは、UWBの測定距離を増大させる技術を取り入れることによって、NICTが平成24年に開発した「視覚障がい者歩行支援システム」の測定距離を3倍以上上回る30mに増大させることで、測距のために必要な固定機の数を減少させることが可能となりました。また、利用者が携帯しやすいようUWB移動機として、スマートフォンに連結した形状の端末や作業ポケットに入れられる小型端末などを開発しました。
さらに、この屋内測位システムは、エリア内の移動機の位置情報をリアルタイムで測位できるだけでなく、視覚障がい者が歩行する上で主な障害となる段差、階段の有無や道幅などの状況を考慮したルートを算出できるため、目的地までの距離と方向を音声読上げと音声入力によりナビゲーションする、視覚障がい者の歩行支援などへの活用も期待されます。
今回開発した屋内測位システムを利用して、以下の実証実験を実施しています。
(1) ショッピングモールでの顧客サービスの向上
・顧客位置に連動したショッピング情報の提供やスマートオーダー等に対応
・店員の移動端末により店内どこでもクレジット決済できるサービス
(2) 物流倉庫での作業効率と安全性の向上
・作業員及びフォークリフトの動線の可視化
なお、本実証実験は、ノースポート・モールとセイノー情報サービスの船橋物流センターのご協力を得て行われています。
【今後の展望】
今回のショッピングモールや物流倉庫での実証実験を通して、事業者や一般ユーザからの意見を取り入れ、更に利便性や機能を向上させていくとともに、UWB測位の精度向上に努め、UWBを利用した屋内測定システムの早期の実用化に向けた研究開発を進めていきます。
なお、5月28日(水)から30日(金)に東京ビッグサイトで開催される「ワイヤレス・テクノロジー・パーク2014」( (リンク ») )で、本システムについてデモ展示を行います。会場では、実際に携帯端末を持っていただき、画面上で現在位置の標記及び目的地(エリア内の展示ブース)までのナビゲーションを体験していただけます。また、今回のUWB測位システムの概要をわかりやすくまとめた動画をNICTのビデオライブラリに掲載しております。 (リンク »)
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