2014年度 電子書籍コンテンツ市場動向調査

株式会社ICT総研

2014-10-15 12:00

株式会社 ICT総研 (東京都千代田区)は10月15日、2014年度電子書籍コンテンツ市場動向に関する調査結果をまとめた。本調査における「電子書籍閲覧端末」は、「電子書籍専用端末」と「タブレット端末」を合算したものと定義する。

■電子書籍ストアの利用率は、楽天koboストアがkindleストアをわずかに上回りトップ

 利用者が電子書籍コンテンツを購入するにあたり、利用するのは電子書籍ストアである。電子書籍ストアは現在、電子書籍メーカー、書店、コンテンツ事業者などさまざまな企業が独自の方法で展開しており、どのストアを利用すべきか判断しにくいのが現状と言える。インターネットユーザー 4,409人に電子書籍ストアの利用有無を尋ねたところ、「過去1年以内に電子書籍ストアを利用したことがある」とした回答者が23.3%。これは無料コンテンツのみの利用も含んでの数値であり、インターネットユーザーの4人に1人以下という現時点の利用率は、この市場の拡大がまだまだ途上であることを裏付けている。
 具体的な電子書籍ストア名を尋ねてみると、「楽天kobo電子書籍ストア」が利用率6.6%であり、次点の「kindleストア」(6.5%)をわずかに上回りトップ。他のストアの利用率は2~3%前後であり、この2つのストアが他を大きく引き離している。1年前に実施した同調査では、利用率が1~2%程度であったため、利用率は軒並み増加している。
全体的に、10代、20代の若年層の利用率が高く、年齢層が上がるにつれて利用率は下がっている。その中で、「楽天kobo電子書籍ストア」と「kindleストア」の2者については、シニア層の利用率も比較的高い。特に「kindleストア」は利用者に占める60代以上の割合が20.4%と、他ストアの平均の2倍近い。


■電子書籍ストアの満足度は大きな差はないが、「eBookJapan」が76.1ptでトップ

 電子書籍ストアの利用者に各ストアの満足度を尋ね、100点満点換算すると、「eBookJapan」が76.1ポイントでトップ。「LINEマンガ」(75.0ポイント)、「BookLive!」(74.4ポイント)がこれに続いた。「eBookJapan」は、1年前の同調査でも満足度74.3ポイントで次点に付けており、満足度の高さを継続している。男性の満足度74.3ポイントに対して、女性は80.6ポイントと、女性の満足度が高い点も特徴的だ。コミックの品揃えが充実している点などが利用者に評価されていると考えられる。満足度ポイント2位の「LINEマンガ」は、2014年4月にサービスを開始した新しいストアだが、LINE利用者数の多さに加え、購入者限定スタンプの提供などが影響した様子。満足度ポイント3位の「BookLive!」は、1年前の満足度69.9ポイントから大きく満足度を上げている点が注目される。
 全体的にユーザーは、現在利用している電子書籍ストアにおおむね満足しており、どれか1つのストアが満足度で抜きんでている状態ではなさそうだ。


■ 2017年度の電子書籍コンテンツ市場規模は2,000億円に (2011年度比約3倍)

 ICT総研の調査では、2013年度の電子書籍コンテンツ市場は963億円と推計され、1年前時点での市場規模予測1,010億円を若干下回った。従来型携帯電話向け市場の縮小が想定よりも早かったことなどがその要因。だが、タブレット端末の普及ペースの早さなどを考慮すると、2014年度以降は順調に拡大していくものと見られる。電子書籍コンテンツ市場全体で、2014年度は1,160億円(2011年度比1.7倍)、2017年度には2,000億円(同3倍)に達すると見込まれる。従来型携帯電話向けの市場の縮小を、スマートフォン・タブレット・電子書籍専用端末向けが補完する構図は今後も大きくは変わらない。コミックに比べて普及が遅れている活字本(小説など)の普及が、やはりカギとなってくる。


■電子書籍閲覧端末の出荷台数は、2016年度に1,200万台を突破

 最後に、電子書籍閲覧端末の出荷動向を見てみると、特にタブレット端末の出荷台数が好調だ。7インチタブレットの品揃え充実や、Windowsタブレットの増加、NTTドコモによるiPad取扱い開始などプラス要因が重なり、タブレット端末の出荷台数は前年時点での見込みを大きく上回った。これにより、タブレット端末を含めた「電子書籍閲覧端末」全体では、2013年度780万台と前年比1.4倍を記録した。
 一方で、このうち「電子書籍専用端末」の構成比は8.7%の68万台と、タブレット端末と比べて存在感はまだまだ薄い。ただ、電子書籍専用端末市場を牽引するAmazon「Kindle」も、楽天「kobo」も、ラインナップを大きく拡充して多様なユーザー層に訴求できる商品構成となったこともあり、今後は電子書籍専用端末の市場も堅調に拡大していくだろう。
「電子書籍閲覧端末」全体で、2016年度 1,285万台(2011年度比4.3倍)に達する見込み。ここには含まれていないが、スマートフォンで電子書籍コンテンツを読むユーザーも増加傾向にあり、スマートフォンの大画面化により、その傾向はさらに顕著になる。ユーザーにとっては、電子書籍コンテンツを読む端末の選択肢が今まで以上に増えることになる。

 2013年度の紙媒体の書籍・雑誌の推定販売金額が前年比3.3%減の1兆6,823億円にまで落ち込む(出版科学研究所調べ)など、出版不況はますます深刻な状況だ。そんな中で、電子書籍コンテンツは市場規模では紙媒体の10%に満たないものの、着実に拡大していく有望な市場である。さまざまな課題はあるものの、「絶版本がなくなる」、「物流コストが下がる」、「在庫・返品リスクがなくなる」等の供給者側の利点に加え、「目的とする記述の発見が容易になる」、「書籍価格が下がる(ことが多い)」、「保管場所の心配が不要」などの利用者側の利点も実感されてくることで、電子書籍市場は今後も右肩上がりの拡大を期待できそうだ。

このプレスリリースの付帯情報

表1 電子書籍ストアの利用率

用語解説

【本調査における定義】

*電子書籍コンテンツ ・・・ デジタル化された書籍、コミック、雑誌を含めるが、新聞は除くものと定義。
*電子書籍閲覧端末 ・・・ タブレット端末と電子書籍専用端末を合算したものと定義。
*電子書籍専用端末 ・・・ インターネットに接続可能で、電子書籍閲覧を主目的として設計された端末。

【本資料の調査結果・推計データについて】

*本資料における全ての文章、数値、表、グラフデータは、ICT総研スタッフによる取材やアンケート調査、各種文献等を元に当社アナリストが記述・推計したものであり、当該企業や公的機関等の公表値と異なる場合がある。
*本資料における全ての文章、数値、表、グラフデータは、資料公開時点のものであり、その後の市場環境等の変化や新たな分析に基づき予測データ等を予告なく変更する場合がある。

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