マーサー 「グローバル年金バイアウト指標」: 2014年の金融市場の変動に関わらず、年金バイアウト価格は安定的に推移

マーサー ジャパン株式会社

2015-05-15 17:00

世界最大級の人事コンサルティング会社マーサーが公表する「グローバル年金バイアウト指標」によると、2014年の5つの主要な年金バイアウト市場では、いくつかの大きな変動があったものの、会計上の負債額に対するDBバイアウトの平均的コストは、概ね安定的に推移した。
・年金バイアウトは、今後北米および英国にて増加する見込み
・グローバル全体では、年金バイアウトの相対的なコストは概ね安定
・事前準備があれば、各国の市場での急激な価格変動は、年金バイアウトの良い市場機会

世界最大級の人事コンサルティング会社マーサーが公表する「グローバル年金バイアウト指標」によると、2014年の5つの主要な年金バイアウト市場では、いくつかの大きな変動があったものの、会計上の負債額に対するDBバイアウトの平均的コストは、概ね安定的に推移した。本指標は、アイルランド、米国、カナダ、英国、オランダの5ヶ国における年金会計上の債務に対する年金バイアウトのコストをトラッキングしたものである。中でもオランダについては他の市場と異なり、2014年の年金バイアウト指標は顕著に低下していることは注目に値する。指標から、各国毎に好条件で年金バイアウトができる期間が、大抵の場合数週間のみであるが存在していることがわかる。人員構成や給付水準、資産やガバナンス体制を改善すべく制度運営を行っている年金基金や企業は、このような好機を逃さず利益を享受することができる可能性が高くなっている。

「グローバル年金バイアウト指標」は、年金バイアウトへの関心の高まりを受け、2014年にマーサーが開発したもので、企業会計上の債務を100%とすると、年金バイアウトを行う際に必要となるキャッシュが何%になるかを指標化したものである。

当指標は、企業会計上の計算前提と、保険会社が債務を引き受ける際に用いる計算前提の差の変動が反映されるだけではなく、大きなディールが行われた後であれば指標が上昇するといった、年金バイアウト市場の実環境が広く反映される画期的な指標である。

マーサーのDBリスクのグローバルリーダーであるフランク・オルダムは以下の通りコメントしている。「保険会社が提示する年金バイアウトの価格設定は変動の激しい市場に対し概ね安定的に推移しましたが、年金債務比での価格を見ると月毎に大きく変動した市場もありました。即ち、年金基金や企業は、彼らの年金制度の年金バイアウトコストが下がった場合にすぐに行動を起こすことができるように、市場機会に備え、事前に設定された閾値に対する保険会社の提示価格を常時モニタリングすることが重要です。」

マーサージャパン年金コンサルティング部門のコンサルタント 、坂元琢治は以下の通りコメントしている。「2014年後半の円安により、円ベースでの年金バイアウトコストは高くなっています。日系企業にとっては為替変動による影響が露呈した今、コストを一括拠出して年金バイアウトを実行するのは得策とは言えず、現地法人が保有する余剰キャッシュの有効な使い道とも考えにくいのが現状です。年金バイアウト指標の示す最適なタイミングで実行するためにも、各国で積立比率をモニタリングした資産運用およびリスク軽減策を着実に講じることが必要ではないでしょうか。」

英国
英国の年金債務は一般的にインフレに連動するため、英国の年金バイアウトコストは、他の市場に比較し高くなっている。2014年の上半期の年金バイアウトコストは、2013年12月の124%から2014年6月の121%へと僅かに下落しているが、その後徐々に上昇し、2014年12月には127%となった。英国における年金バイアウト市場は引き続き堅調で、2014年には全てのディールのプレミアムの総額は120億ポンドを超えた。マーサーは、現在までに英国で行われた年金バイアウトのディール総額ベースにおいて、25%相当のメインアドバイザーを務め、 10億ポンド以上のプレミアムを扱ったバイアウト4件全てにおいてもメインアドバイザーを務めている。その4件のディールは、以下の企業年金のバイアウトである。

ソーン:11億ポンド
ターナー・アンド・ニュー ウォール(T&N):11億ポンド
EMIグループ:15億ポンド
TRWオートモーティブ:25億ポンド

マーサーの年金保険アドバイザリーのリーダーであるデヴィッド・エリスは、以下の通りコメントしている。「10億ポンド超のディールが、この記録的な金額のディール総額の原動力となりましたが、小中規模サイズの年金プランにおいても、低い市場利回りにもかかわらずバイアウトの動きは活発でした。」

米国
米国におけるバイアウトの動きは2014年に発表された2つの大きなディール(BMYの14億米ドル、MSIの31億米ドル)や、2015年2月に行われたディール(Kimberly-Clarkの25億米ドル)を含め活発化している。2011年以来、これらの年金バイアウトに加え、300以上の少額ディールを含めると、市場規模は合計およそ90億米ドルから100億米ドルとなる。これまでの年金バイアウトは、そのほとんどが年金制度全体を対象としたものであったが、近年では退職者のみを年金バイアウトの対象とする企業の割合が顕著に増加している。

この年金バイアウト増加の動きは、米国の年金規制機関であるPBGC(Pension Benefit Guaranty Corporation, 年金給付保証公社)による保険料率の引き上げ、および、会計上の年金債務と比べてより有利な年金バイアウトの価格設定によるものである。指標によれば、2014年において、会計上の債務に対する年金バイアウトコストはおおよそ109%と比較的安定していた。しかしながら年度末の会計計算において新たな予想死亡率が採用されたため、年金バイアウトプレミアムの平均は約105%に減少した。この予想死亡率の変更は、2014年10月に米国アクチュアリー会によって発表された新たな死亡率表に対応したものである。しかし、おそらく以前より保険会社でも長寿化は想定されており、一般的に年金バイアウトの価格自体には影響は出なかった。結果として、年金バイアウトは現在米国においては会計上の年金債務と比較してさらにより有利なものとなっている。そのために、マーサーでは2015年においても年金バイアウトの動きが加速していくものと予想している。

カナダ
カナダでは、2014年を通じて年金バイアウトの相対価格において大きな変動がみられた。年金バイアウトコストは2013年12月の年金債務の105%だったが、2014年6月には103%に落ち込んだ。企業の財務諸表への影響度という点では、2014年上半期は、年金バイアウトを行う好機であったようだ。ただし2014年の下半期では、クレジットスプレッドの変化や保険会社による保守的な価格設定の結果、相対価格は上昇し110%へ向かう動きがみられた。しかしながら、約25億カナダドルの年金バイアウトもあり、2014年を通して市場は引き続き活発だった。この約25億カナダドルのディールは2013年の22億カナダドルという過去最大記録を更新した。年金制度を持つ企業が引き続き年金リスクを軽減する道を模索する中で、マーサーは、年金バイアウトに対する需要は高まるものと予測している。

2015年3月には、カナダ史上初の年金長寿スワップが発表された。このディールには年金バイアウトは含まれていないが、50億カナダドルという規模においてはカナダ最大の年金リスク移転ディールであり、年金債務に関連したリスク軽減の気運が高まっていることを示している。

アイルランド
2014年のアイルランドにおける年金バイアウト市場は、会計上の年金債務に対する年金バイアウトの相対コスト(2013年12月時点の118%から2014年12月の115%へ下落)は1年を通じて僅かに下落したものの、比較的穏やかに推移した。2014年は、長期債利回りの低下とともに、多くのアイルランド企業では会計年度末において、その年金債務は前年度に比べ大きく増加した。欧州中央銀行の量的金融緩和政策の枠組み形成は、おそらく短期的には引き続き利回り低下への圧力となり、年金債務、および年金バイアウトコストの増加が急反転する見込みは薄い。市場状況が許せばリスク軽減のためのより充実したガバナンス体制が整っている一方で、リスク調整後の収益確保に注力する年金プランが多く、そのためアイルランドの年金バイアウト市場は引き続き比較的静かに推移した。

オランダ
オランダではほとんどの年金基金において、自由裁量で受給額を増額できる選択肢が付与されている。従って、国際会計基準に基づいた場合、企業会計上、年金債務は予測される給付増加分を含んだ数値となっている。マーサーのグローバル年金バイアウト指標は、年金債務に含まれる増額分と同水準の増額分を含む年金バイアウトのコストの概算値を提示しているという点で同一条件での比較となっている。しかし、オランダでの年金バイアウト行使時の年金増額分を含む年金債務の実購入価格は、企業会計で計上されている金額とは異なる場合もあり、その差額は決済益、または決済損として計上されることを留意しておくべきである。

オランダの年金バイアウト市場は、ここ数年は、年間20億ユーロから30億ユーロの規模であった。オランダ市場における清算中の年金制度の総数、及びオランダ年金市場において進む年金統合の動きを鑑みると マーサーは、バイアウト市場は将来も引き続き活発化していくものと予測している。オランダのバイアウト指標は、2014年に著しく低下しており、2015年も引き続き下落している。これは、退職給付企業会計上使用される優良社債に対するクレジットスプレッドの動き(2013年の年末で約70ベーシスポイントだったものが、2015年1月末には約40ベーシスポイントに低下)によるものである。このスプレッドの低下は、欧州中央銀行の量的緩和政策によるものであり、結果として会計上の負債額を押し上げる要因ともなった。ただし、保険会社の価格設定は相対的にスプレッド低下による直接的な影響はあまり受けていないようだ。

年金バイアウトについて
負担の重くなった企業年金制度の給付義務を、生命保険会社等の金融機関に、保険料と引き換えに売却することを「年金バイアウト」と呼ぶ。これにより、企業年金の母体企業は、退職給付債務を削減するとともに、給付に関する一切の義務から解放されることになる。このような仕組みは英国を中心に発展し、近年、米国をはじめ、カナダ・アイルランドでも大きな広がりを見せている。日本では法制上の観点から実施は難しいが、在英の日系企業でも導入が増えている。

マーサー、英国における過去最大の年金バイアウトをトラスティアドバイザーとして主導(2015年2月)
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マーサー、新指標「グローバル年金バイアウト指標」を発表(2014年3月)
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全世界約20,000名のスタッフが40カ国以上約180都市の拠点をベースに、130カ国以上で、25,000超のクライアント企業のパートナーとして多様な課題に取り組み、最適なソリューションを総合的に提供しています。

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マーシュ・アンド・マクレナン・カンパニーズはマーシュ(保険仲介とリスクマネジメント)、ガイカーペンター(再保険仲介・コンサルティング)、マーサー (組織・人事マネジメント・コンサルティング)、そしてオリバーワイマン(戦略コンサルティング)から構成されており、年間総収入130億米ドル超、全世界に57,000名の従業員を擁し、100ヶ国以上で顧客に分析、アドバイスを行い、各種取引を支援しています。

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