国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)
ビル内などの大規模ネットワーク構築に適したWi-SUN無線機の開発に成功
~IEEE802.15.10推奨方法ドラフトに準拠したIP不要で低負荷なメッシュ通信が可能~
【ポイント】
■ ビル内や工場内等における大規模ネットワークに適したWi-SUN無線機を開発
■ 経路選択制御等にIP不要の省電力・低負荷のメッシュ通信が可能に
■ IEEE802.15.10推奨方法ドラフトに準拠し、将来的にWi-SUN認証による社会展開を想定
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 坂内 正夫) (リンク ») は、ワイヤレスネットワーク研究所において、短い制御データを用いてあて先を管理する簡易な制御層であるMAC層の経路選択制御方式を標準化するIEEE 802.15.10タスクグループの推奨方法ドラフトに準拠したWi-SUN無線機の開発に世界で初めて成功しました。本無線機は、メッシュ状に配置された無線機間で、冗長性の低い非IPにより、データフレームの効率的な経路選択制御を実現するため、自動的にあて先までの中継経路を見つける自律型メッシュ構築機能、データの衝突を減らすデータフレーム結合伝送機能、多様な通信サービスを提供できる無線通信仮想化機能を具備しています。
今回の成果は、従来のIPでは難しかった今後需要の増加が見込まれるビル内や工場内の大規模な無線ネットワークへの効果的な応用と、Wi-SUN認証を通じた円滑な社会展開が期待されます。
【背景】
スマートメータや各種センサに関するデータ収集・制御のための無線通信の需要増加に伴い、NICTは、研究開発・標準化・認証の一連の取組を通じて、省電力動作・マルチホップ通信を特徴とする国際無線標準規格Wi-SUNに準拠する無線通信システムの社会展開を推進してきました。これまでに、宅内エネルギー管理システム(HEMS)等への社会展開を行ってきましたが、ビル内や工場内にWi-SUN規格のシステムを適用する際には、多数の無線機が大規模な網目(メッシュ)状に連携し、マルチホップ通信を駆使して適切な経路でデータをあて先に届ける経路選択技術が不可欠です。しかし、これまでWi-SUN規格を前提とする経路選択技術としては、IPによる冗長度の高いものや、非IPであっても、後述のメッシュ構築機能等を持たない低機能なものしかありませんでした。
【今回の成果】
NICTは、非IPによる高度な経路選択技術の研究開発に基づき、京都大学大学院情報学研究科 原田博司教授と共同で、IEEE 802.15.10標準化タスクグループに対して、ビル内、工場内等における大規模ネットワークでの無線機の経路選択に適した方式提案を行った結果、平成27年8月に、IEEE 802.15.10推奨方法ドラフトに収録されました。
そして、このたび、平成27年11月、NICTは、IEEE 802.15.10推奨方式ドラフト準拠のWi-SUN無線機を世界で初めて開発しました。本無線機の特徴は、存在する無線機間の通信状況を感知し、適切な経路を各無線機が自動的に判断する自律型メッシュ構築、複数のデータフレームを結合して転送し、フレームの閉塞・衝突を低減するデータフレーム結合、各データフレームがサポートするサービスに応じて適切な処理を行う無線通信仮想化の機能をいずれも非IPで実現したことです。IP不要の省電力・低負荷メッシュ通信が可能になったことで、電池駆動センサ等の省電力・低処理機能を前提とする無線機によって、様々なものが接続できる将来の大規模ネットワーク構築への有効性が予想されます。
【今後の展望】
今後、本無線機が実装する非IPメッシュ通信が、Wi-SUNアライアンスによる適切な認証を通じて、ビル内や工場内の大規模ネットワークへの適用等をはじめ、社会へ実用化されることを目指します。
なお、本無線機は、平成27年11月29日(日)から12月2日(水)までグランドプリンスホテル広島にて開催されるITU主催「13th World Telecommunication/ICT Indicators Symposium(WTIS)」 (リンク ») で展示する予定です。
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