環境省
パネルディスカッション「アップデイトふくしま」開催
~知って応援。伝えて応援。~
「アップデイトふくしま」声明を、東京から発信!
環境省は、2月10日(土)国連大学のウ・タント国際会議場(東京都渋谷区)にて、アップデイトふくしま実行委員会が主催するパネルディスカッション「アップデイトふくしま」~知って応援。伝えて応援。~を共催しました。
福島の環境回復が進んでいる一方、その現状に関して全国・海外の人々に正確な情報が伝わっていないことなどから風評問題が生じています。このため、環境省は、それらをアップデイトするための事実、あるいは視点や手法などを明らかにし、共有することを目的として本イベントを共催しました。
会場には、一般参加募集に応募した方々と政府・福島及び教育関係者・メディアらが275人集まり、アップデイトふくしま事務局に事前に届いた質問などを踏まえて、第一章では、実行委員会の委員による問題提起や意見交換、第二章では、教育・メディア・地元高校生による福島の事例紹介、第三章では、「福島の認識をアップデイトする」「福島を伝えていく工夫をこれからも続ける」などのディスカッションとそのまとめとして、「アップデイトふくしま」声明を作成し、東京から発信しました。
当日は、冒頭で、国連大学サステイナビリティ高等研究所の竹本 和彦所長が挨拶を行いました。第一章「福島の今を考える〜理論編〜」では、アップデイトふくしま実行委員会の委員として、東京大学の早野 龍五名誉教授、東京慈恵医科大学・臨床検査医学講座の越智 小枝講師、福島大学・経済経営学類国際地域経済専攻のウィリアム・マクマイケル助教、立命館大学・衣笠総合研究機構の開沼 博准教授の4名が登壇しました。開沼准教授がファシリテーターとなり、福島の作物、食べ物、環境、健康、第一原発などをテーマに、客席と双方向での設問の解答を交えながら、福島に起こっている課題として、「放射線に対する誤解」「放射線とがんのリスクより増えている福島の健康リスク」「海外から見る福島への誤ったイメージ」の例などを挙げました。各委員は、「広く伝える 個人に伝える」「『分からない』を楽しもう」「確信×核心」などのメッセージを書いて、「ふくしまのイメージのアップデイト」をどうするのか?について意見を交わしました。
第二章「福島の今がどのように伝わっているか〜事例編〜」では、最初に、福島大学のマクマイケル助教が、福島アンバサダープログラムの留学生と登壇し、「グローバル復興教育の福島モデル構築への挑戦」として、「実際に訪れることで福島の印象が変わる学生が沢山いる」と話しました。
次に、海外メディア代表として、ディスカバリー・ネットワークス・アジアパシフィック副社長のビクラム・チャンナ制作チーフは、「ソーシャルメディア時代に福島をどう伝えるか」と題して、ディスカバリーチャンネルで放送した番組「FUKUSHIMA DIARIES」の紹介と反響を話しました。
続いて、国内メディア代表として、テレビユー福島 編成局伊藤 明チーフプロデューサーが、「テレビ番組で海外に情報発信」と題して、同番組に出演したオルタナティブスペース「UDOK.」主宰小松 理虔代表とワンダーファーム元木 寛代表と登壇し、中国や韓国そして東南アジアの計18か国で放送された海外向けドキュメンタリー番組「Fukushima Today」の制作や海外の反響を話しました。
※番組「FUKUSHIMA DIARIES」「Fukushima Today」は、下記のサイトからご視聴頂けます。
(リンク »)
事例の最後は、早野教授と福島高校2年の沖野 峻也さん、同校の荒 帆乃夏さん、ふたば未来学園高校2年の遠藤 瞭さんが、「自分たちで、測り、知り、学び、伝える」をテーマに、これまでの研究発表を行いました。沖野さんは、「放射線は、ある・ないだけではなく量の概念をもつことが大切。正しい知識をもって福島を見守ってほしい」、荒さんは、「福島の魅力や良さを伝えれば人々の心にいいイメージが残るので、うつくしまふくしまを、日本だけでなく世界にも伝え続けます」、遠藤さんは、「同じ福島出身でも被災経験や未来の捉え方は皆異なって当然のこと、柔軟な理解をしてほしい」と話しました。
第三章「知って応援。伝えて応援。〜総括編〜」では、実行委員の4名に加えて、福島高校の原 尚志教諭、ふたば未来学園高校の南郷 市兵副校長、環境省の森本 英香環境事務次官が登壇し、各自がボードに、「アップデイトふくしま」メッセージを書いて議論を行いました。
原教諭は、「高校生の教育旅行をアップデイトしたい」と書き、人の教育の重要性を強調しました。また南郷副校長は、「For FUKUSHIMA→ From FUKUSHIMA with Youth」と書き、しがらみのない若者が、積極的に意思決定に参画し、福島発の情報を世界に向けて発信していくことが求められると話しました。森本環境事務次官は、「語るだけでは伝わらない 集の学び」と書き、水俣病の経験から、信頼し合える仕組み(集の学び)作りが重要で、こうした仕組みをつくりながら、除染・中間貯蔵について理解をいただけるよう努力していきたいと述べました。早野教授は、「『産めます』『全』と『個』」と書き、個人に伝える事が大切で、基本は教育だが、これからは全体への共有するアプローチも必要になると話しました。越智講師は、「福島を語るのに資格は要らない。今・ここ」と書き、行ってない、専門外だから迷惑をかけるのではないかと思う人も、今ここから福島を考え語ることができると述べました。マクマイケル助教は、「境界線をなくす 確信×核心=革新」と書き、未来に向けて取り組んでいく、気づきの中で革新をしていくことが重要と話しました。最後に、ファシリテーターの開沼准教授が、「アップデイトふくしま」声明を会場で発表し、パネルディスカッションを終了しました。ロビーでは、福島や本イベントの出席者・協力・後援者による展示物・パンフ・書籍などが紹介されました。
■「アップデイトふくしま」声明
【序文】
2011年3月に起きた東日本大震災とそれに続く津波、福島第一原子力発電所事故という未曽有の大災害により、直接的・間接的に多くの人命が失われました。特に福島県においては大規模長期避難や精神的ストレスなどにより、直接死以上の災害関連死が引き起こされています。それだけでなく、福島に対する歪んだイメージにより、偏見やいじめ、差別といった風評被害が県内外の福島に関わる方々を苦しめています。
このような状況を踏まえ、私たちは福島の風評被害を払拭するために「ふくしまのイメージ」をアップデイト*することが必要と考え、以下の提言を行います。
(*アップデイトとは過去を忘れることではなく、過去の経験を土台としつつ最新の知見を積み重ねることです)
【本文】
「ふくしまのイメージ」のアップデイトのために、私たちは以下の姿勢で、常にかわりゆく福島のことを知り、自分自身も学び、伝えそして、新しい社会づくりに向かって進んでいきます。
1 いまも福島への誤解、偏見、それに基づく差別は根深くあります。この問題を解決するために、例えば、「被曝による遺伝影響はない。安心して子どもを産めます」という科学的事実を、教育などを通して共有していくことが必要です。
2 一方、そういった科学的・数値的な話しだけでは解決しない問題も存在します。個人の不安にアプローチするには、互いに信頼をして学び合える顔の見える関係、集団での取り組み(集の学び)を皆で支え合っていくことも必要です。それだけではなく、国内外の様々な人に幅広く伝えていくようなアプローチも必要になっています。
3 同時に、福島について語る時に、様々な境界線ができていることも直視すべき課題です。東京と福島、外国人と日本人、世代間だけでなく、被災の悲しみや葛藤、様々なことを乗り越えてきた経験を持つ方と持たない方の間にも境界が存在します。そういった中で、誰もがその経験を自分事と考え、立場を超えて福島を語れることを大切にします。
4 さらに、福島では新たな魅力や、「新しい社会づくりのヒント」が生まれています。それは福島の外で、世界で価値を持つものでもあります。その点を積極的に伝えていくべきだと考えます。例えば、様々な立場の人への教育旅行・研修等の学びの場となるよう様々な試みをしていく、若い人が地域の未来を考える取り組みをしていくなどの知見を福島発のモデルとして発信していきます。
For FUKUSHIMA からFrom FUKUSHIMA with Youthへ。
確信をもってふくしまの核心を学び、伝える。その中で革新を生み出していきます。
2018年2月10日 アップデイトふくしま実行委員会
※本声明は、会場参加者からのご意見や事前質問を考慮し、序文を付け加え、「宣言」を「声明」にいたしました。また議論の基本的な軸は守りながら、発言の趣旨をわかりやすい文言に修正しました。
◇関連URL:
アップデイトふくしま公式サイト (リンク »)
環境省 (リンク »)
※パネルディスカッションの様子は上記URLで後日公開予定です。
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