EY Japan
2019年ライフサイエンス企業は、特定の疾患領域への注力強化と、成長ギャップの縮小により、過去最高のM&Aを達成
■2019年のライフサイエンス企業によるM&A取引額は過去最高の3570億米ドルを達成
■特定の治療分野への注力戦略が2019年のM&A増加を牽引
■投資ポートフォリオ最適化、深刻な成長ギャップおよびファイヤーパワーの余力により、2020年のライフサイエンス企業のM&Aは堅調に推移
EYは最新の EY M&A Firepower report を発表しました。本レポートによると、2019年のライフサイエンス企業の合併・買収(M&A)は、製薬会社による買収の活発化に後押しされ、2014年の記録を更新し、過去最高の総額3570億米ドル(11月30日時点)に到達しました。一方で、医療機器およびバイオテック企業は静観を続け、すべてのライフサイエンス企業が等しくファイヤーパワーを利用したわけではないことが示されました。
本レポートでは、ライフサイエンス企業は2019年、深刻な成長ギャップ(企業の収益成長と業界全体の売上拡大とのギャップ)およびマーケットのボラティリティによって、4件の大型合併(合計で2310億米ドルに相当)を含む、大きなM&Aの機会を生み出したと伝えています。特定の疾患領域への注力によるポートフォリオの最適化、短期的な収益増加の模索、イノベーションにアクセスするための新たなディールストラクチャーにより、2019年のM&A活動をけん引した推進力が、2020年も引き続きディールを活発に推し進めていくと見られます。加えて、とりわけ医療機器企業や大手バイオテック企業にとって、M&A案件に向けたファイヤーパワーは依然として潤沢な状況が続いています。
本レポートが報告している主要な調査結果は次の通りです。
・ファイヤーパワーの活用は企業によって異なる:ファイヤーパワーの35%を使用した大手製薬会社が、2019年のM&A活動の過去最高更新の要因となった。大手バイオテック企業および医療機器企業はターゲット企業の高額な評価額に意欲を削がれ、それぞれ10%、16%のファイヤーパワーの使用にとどまった。マーケットでは1.4兆米ドルのファイヤーパワーの余力があり、2020年も引き続き豊富な機会が存在する。
・買収サイドと売却サイドの企業評価額のギャップが過去最高となり、取引件数は減少:M&A取引数は前年比で14%減少、過去5年間の平均値を29%下回った。資本市場が活況であることから、買収側企業の想定額と売却側の希望額のギャップが増大した。2019年9月に実施されたEYの調査では、回答した企業の69%が、評価額におけるこのギャップは2018年以降で最も高い水準にあると答えている。
・特定疾患領域への集中戦略が引き続きM&Aを推進:23社のバイオ製薬企業について、収益を基に特定の疾患領域に注力しているかどうかを判断し、分類した。分析を行ったこれらの23社のうち、特定の治療分野により注力した10社が、5つの指標(収益成長、投資資本リターン、EBITDAマージン、平均評価額)のうち4つで、その他の企業を上回った。特定の治療分野への注力が低い企業は、株主総利回りで、より注力している企業を上回った。
本レポートは、企業は2019年も引き続き製品中心のイノベーションを重視していたと述べています。一方で、将来の価値をより高めていく可能性のあるデータテクノロジーには、十分な投資を行っていないことも報告しています。
EY Global Health Sciences and Wellness Industryリーダーのパメラ・スペンスは次のように述べています。
「企業が成功するために必要なのは、知的財産権を所有だけではなく、重要なデータにアクセスし、AIを活用して分析を行い、そこから洞察を引き出すことも不可欠です。こうした洞察を活用することができれば、ヘルスケア体験、臨床上の判断、そしてアウトカムを向上させることができます。」
【2020年の展望】
本レポートでは、2020年およびそれ以降のM&Aを推進すると思われる、ライフサイエンス業界の重要なトレンドは以下のように示しています。
・医療機器企業および大手バイオテック企業は、成長ギャップが拡大する中、買収ターゲット企業の評価額が手の届く範囲となれば、M&Aにより積極的に取り組むようになると予想されている。本レポートの調査に回答した大手バイオテック企業5社のうち4社が深刻な成長ギャップを抱えており、現段階では2023年の売上目標の10%以上が達成されない見込みとなっている。
・マーケットのボラティリティと疾患領域の集中が、より多くのM&Aディールの機会を生み出していくとみられる。大手製薬会社は優先順位の低い治療分野からの撤退を続け、特定の疾患領域およびビジネスモデルに特化するとみられる。EYが100社以上の中小バイオテック企業を分析したところ、その60%の企業で、株価が過去一年間の平均を下回っていることが判明し、買い手にとってチャンスが生まれている。
・M&A活動以外にも試行期間戦略を活用しながら、提携または製品の取得に優先して取り組むことは、引き続き持続可能な成長を生み出すとみられる。
・最も有望な投資エリアは、引き続き遺伝子細胞治療分野であるとみられる。こうした個別化医療分野での科学的進歩は目覚ましく、その可能性に対する期待が高まり続けているためである。また、遺伝子細胞治療提供の規模拡大に必要な、大規模製造およびサプライチェーンの専門知識を蓄積する機会も増えている。遺伝子細胞治療分野におけるM&A活動は非常に活発で、2014年から2015年までの一年間と、2018年から2019年までの一年間を比較した場合、M&A案件数は880%上昇しており、2020年もこの分野への高い関心が継続することを示唆している。
EY Global のHealth Sciences and Wellness Transactionsのリーダー、ピーター・ベーナーは次のように述べています。
「マーケットのボラティリティ、また特定の疾患領域への特化を強める動きは、2020年も引き続きM&A活動を促進していくでしょう。2019年は製薬会社がM&Aをけん引した大型化の一年でした。2020年もファイヤーパワーは依然として潤沢で、医療機器企業および大手バイオテック企業がM&A活動をより活発に行い、大きな成長ギャップを抱えた企業が大型合併を行っていくとみられます。また、遺伝子細胞治療やがん免疫療法の分野でもM&Aのチャンスが生まれていくでしょう。この分野のスタートアップ企業の評価額は比較的安値な状況が続いており、中小のバイオテック企業は平均株価を下回る価格で取引されていることから、大手製薬企業の関心を惹きつけるターゲットとなっています。」
本レポート(英語版)はこちらからご覧ください。
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※本プレスリリースは、2020年1月13日(現地時間)にEYが発表したプレスリリースを翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。
英語版プレスリリース:
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〈EYについて〉
EYは、アシュアランス、税務、トランザクションおよびアドバイザリーなどの分野における世界的なリーダーです。私たちの深い洞察と高品質なサービスは、世界中の資本市場や経済活動に信頼をもたらします。私たちはさまざまなステークホルダーの期待に応えるチームを率いるリーダーを生み出していきます。そうすることで、構成員、クライアント、そして地域社会のために、より良い社会の構築に貢献します。
EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバル・ネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。詳しくは、ey.com をご覧ください。
本ニュースリリースは、EYのグローバル組織のメンバーファームであるアーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッド(EYGM)によって発行されています。EYGMは顧客サービスを提供していません。
〈EY Firepower指数について〉
EY Firepower指数は、企業がトランザクションを実行するための資金調達能力を、貸借対照表の健全性に基づいて測定します。Firepower指数が考慮する4つの主要データは、1)現金および現金同等物、2)既存債務、3)債務負担能力(貸付限度額を含む)、4)時価総額です。Firepowerモデルの前提として1)買収企業の現在の時価総額の50%を上回る企業は買収のターゲットとしない、2)結合後の企業の負債資本率は30%を超えないという2点が設定されています。
一部の医薬品企業ではこの上限を超えた買収も行なわれていますが、Firepower指数は一つの水準に基づいた手法を適用して、数値の相対的な変動を測定することを目的としています。また、Firepower指数は現金もしくは借入を資金源としたM&Aの実行能力を測定するためのものであり、株式交換による取引能力の測定は行いません。ただし、Firepower指数の公式上、株価の上昇は数値の上昇につながります。これは株式価値の上昇によって資金調達の際の借入能力が高まるためです。
本報告書では、医薬品企業を企業規模、地理的範囲、製品ラインアップに基づいて、大手製薬会社(ビッグファーマ)、スペシャルティファーマ/ジェネリック医薬品企業および大手バイオテクノロジー企業(ビッグバイオテック)に分類しています。
〈About EY Health Sciences and Wellness〉
The rise of the empowered consumer, coupled with technology advancements and the emergence of digitally focused entrants, is changing every aspect of health and care delivery. To retain relevancy in today's digitally focused, data-infused ecosystem, all participants in health care today must rethink their business practices, including capital strategy, partnering and the creation of patient-centric operating models.
The EY Health Sciences and Wellness architecture brings together a worldwide network of 28,000 professionals to build data-centric approaches to customer engagement and improved outcomes. We help our clients deliver on their strategic goals; design optimized operating models; and form the right partnerships so they may thrive today and succeed in the health systems of tomorrow. We work across the ecosystem to understand the implications of today's trends, proactively finding solutions to business issues and to seize the upside of disruption in this Transformative Age.
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