・会 期:2021年3月24日(水)~4月12日(月)
・会 場:日本橋高島屋S.C.本館6階美術画廊X
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「時空ヌード・即(151)」181.8×227.3cm 油彩・キャンバス 2020年
このたび高島屋では、「王(ワン)舒野(シュウイエ)展―非認識的視覚の瞬間」を開催いたします。
王舒野は1963年中国黒龍江省に生まれ、北京中央工芸美術学院(現・清華大学美術学院)を卒業後1990年に来日、それから10年間は作品の発表はせずに、宗教・哲学など東西の精神世界の探究と独自の絵画表現の創出に専心しました。2017年には現住の鎌倉のアトリエとは別に、中国の最先端アートシーンの中心をなす北京の798芸術区にも広大なアトリエを構え、現在、日中で精力的な活動を行っています。
自身の理想とする思想哲学を、絵画などの美術作品による視覚化した表現で追求し続けている王は「世界の見方」にこだわります。「見る」という観念と行為を解体し、人間のあらゆる知識や感情を不純物として取り除き、改めて私たちの目の前に「見る」ことを提示します。そこで私たちは、母親の胎内から生れ出て初めてこの世に接した赤子のように無垢な精神で、世界の原形とも言うべき王の作品と対峙します。その作品世界を導き出す為の、王の創り出す独特の絵肌は、今までの美術史の文脈には見られない特異な表現でありながら、無限の可能性と宇宙の奥底に潜む普遍の真理を呼び覚ますような感覚を与えてくれます。
高島屋では7回目となる今回の個展では、油彩画や鉛筆・パステルによるドローイングの他、大きな薄い楮紙をレイヤー状に数枚重ねた立体作品と、装飾性を意識したアクリル絵具による作品を初めて発表いたします。
このパンデミックの中、国際的に注目され始めたこの作家も、昨年ヨーロッパや中国で予定されていた大きな個展の中止などを余儀なくされました。世界や社会の分断がさらに加速される今、人間本位、自己本位的な相対的ものの見方から、区別を超える知恵としての非認識的ものの見方に転換し、感性的な体験を広めることを重視している王は、美術によって語ります。既存の人間の価値観の拘束から視覚を解放することで心を平らかにし、新しいもうひとつのものの見方の提示を試みる王芸術の世界を、ぜひご高覧ください。
【王舒野アーティストコメント】
〈非認識的視覚の瞬間〉
通常の「見ること」は、まず対象が何であるかの認識の働きだ。それで主体の立埸による理解の仕方によって視覚世界を区别規定し、明確に把握しようとする。これは一般的な視覚方式であって、その有効性や正当性は言うまでもなく重要である。
けれどもこのような視覚には、根本的な欠点もある。それは世界へ意識的に介入する一方的な性質で、その世界観は主体の立場に縛られ、人間本位、自己本位的な解釈と感じ方に制限されるものだ。したがって、それでは人間中心的な見方に限定されない大きな視覚世界、あるいは人間の考えや感情にとらわれない —— もっと開かれた安らかなあるがままの世界に触れることはできない。
私が視覚芸術において実験しているのは、まさに「非認識的視覚」の体験とその可能性の表現である。つまり通常の人間中心的な見方によって遮蔽されている知覚次元に触れる試みと言っていい。それは人間本位的に対象化する思考を退け、いわゆる認識的意識に限定されない視覚世界に触れる瞬間瞬間を実践するものである。それで私は瞬間瞬間に、人間の思考や感情にとらわれない、廓然たる世界の清々しく展開する姿を見ることができる。
これは、視覚と芸術においての新たな知覚次元を開く試みである、と同時に、現代の人間中心的な偏った世界観への対極的な平衡増補の次元の提示でもある。
2021年春 王舒野
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