アンドリュー・ハワード
サステナブル投資グローバル・ヘッド
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シュローダーは2019年に独自のESG評価ツール、「SustainEx」を開発しました。SustainExは、企業業績に反映されていない、企業が社会に与えるポジティブ・ネガティブな社会的インパクトの評価を目的に構築されたツールです。同じロジックをベースに、今回新たにSovereign SustainExを開発しました。分析の対象を国へと広げたもので、その国が他国に与えるポジティブ・ネガティブな影響を定量化でき、シュローダーのアナリストやファンドマネジャーがこれに基づき社会的、環境的影響やリスクをより効果的に評価し、管理することができます。
Sovereign SustainExとは
Sovereign SustainExは具体的な活動に起因する世界全体のコスト・利益を評価し、それに対し各国がプラスの影響を与えているか、マイナスの影響を与えているかを判断するためのツールです。例えば、オンラインにシフトする人々が世界中で増え、取引のデジタル化が進む中で、サイバー犯罪は世界経済にとって深刻かつますます増大するコストです。一部の試算によると、サイバー犯罪の世界的コストは世界のGDPの1%強に相当します。別の例では、主には先進国から発展途上国に対する対外援助は、社会的課題を軽減し、持続可能な発展を支えるための国際的な富の移転の代表例です。
国に注目した新しいSustainExでは、その国に起因する26の社会的、環境的な影響を評価します。そのベースとなるのが750を超える学術および業界研究の知見です。これに基づき世界全体のコストおよび利益を定量化し、分析結果は150を超える政府に適用されます。
Sovereign SustainExが目指したこと:
包括的:国レベルと位置付けられる幅広い社会的、環境的外部性が盛り込まれています。重要度を主観で判断することなく、経済的外部性分析に基づきそれぞれの問題の相対的重要性を分析します。
客観性、透明性:すべてのモデル化では、可能な限り客観的評価と学術または業界分析を基にしています。こうした分析や何らかの仮定を用いる場合は、十分に定義し、透明性を確保します。
一貫性、体系性:結論は体系的かつ客観的分析に基づき導き出します。私たちの判断がモデルのフレームワークに影響を与えることはありますが、個々の投資判断に当てはめる際に影響を与えることはありません。
影響範囲のマッピング
シュローダー独自の分析に基づき影響を特定しますが、その際、国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)や生態系と生物多様性の経済学(TEEB)イニシアティブなどの現行の枠組みを最大限考慮しています。
図表1は、企業および国の分析についてSustainExに盛り込まれているさまざまな影響を示しています。それぞれの影響をプロットすることによって、企業や国が責任を負う可能性のある範囲や、各影響の範囲が国レベルなのかグローバルレベルなのかを示すことができます。今後、指標を追加し、モデリングの精度を高めたいと考えています。
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影響をコストに換算
特定した影響はすべて、金銭を基準に経済的コストまたは利益に換算します。この定量化は、世界的な影響のコスト・利益、国別エクスポージャー、影響の帰属を体系的に分析することによって行います。外部性を社会的、環境的影響に置き換えるために3つの幅広く定義されたアプローチを用います(図表2参照)。評価基準が重なる部分については、国と企業とで一貫した仮定を用いることで、比較を可能にしています。
1.グローバルバリュー:その国の活動割合に応じて影響を帰属させる
グローバルでの影響が確実に推測される場合は、コストまたは利益の合計を活動割合に応じて各国に帰属させます。
例えば、生物多様性の喪失は社会に対する最も大きな世界的リスクの一つです。経済協力開発機構(OECD)によると、天然林は2010~2015年に年間650万ヘクタールのペースで失われ(合計すると英国よりも広い面積)、自然の湿地帯は1970~2015年に35%減少しました。現在、サンゴの30%以上が白化現象の危機にあり、1970年以降、脊椎動物の60%が絶滅しました。土地利用の変化や、天然資源の乱用、汚染、侵略的外来種、気候変動が脅威に拍車をかけています。
生物多様性の保護は、食糧安全保障や、貧困の削減、よりインクルーシブで公平な発展を実現するための要です。その国の土地面積と生態系の保護ランキングとを組み合わせ、生物多様性に対する国別貢献度を算出しています。この合計に占める各国の割合に、公共部門に起因する生物多様性の喪失に伴い生じるグローバルでの年間コストが乗算されます。
2.単位あたりの活動:国別の結果と単位あたり影響予測の合算
二酸化炭素排出量1トンあたりのダメージ等、一部の社会的、環境的影響は、単位あたりの影響を基準に評価します。
例えば、国ごとのカーボンフットプリントのコストは、世界全体で一貫したカーボンコストの前提条件を用いて試算します。複数の学術研究に基づき、炭素排出量1トンあたり平均コストを85ドルとしました。炭素排出量に対する各国の影響の分析においては、すでに企業に帰属させているコストの重複を避けるため、国全体の排出量ではなく、各国の公共部門に起因する予測年間排出量を用いています。
3.金銭的価値:各国の行為の金銭的価値を分析する
3つ目のアプローチでは、その活動に対する国の支出に着目します。
例えば、教育において、教育に重点的に投資している国と急速な経済成長を遂げている国との間には明確な関連性があります。教育の中心が若年層であることを考えると、投資のメリットは将来に現われることになり、一方、投資が不足すれば将来の成長の足かせになります。教育の社会的利益を算出するために、20歳未満の1人あたり公的教育支出と、国の収入から示唆される必要支出水準との差を計算し、それに20歳未満人口を乗算します。
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分析の評価結果
評価の対象とした世界175カ国の分析の総合評価を表したものが図表3です。マイナスからプラスに至る全体評価を図示しています。
影響度合いから見た最もインパクトが大きい要因は、概ね想定の範囲内でした。最大の世界的コストの要因は炭素排出が引き起こす環境へのダメージです。一方、イノベーションは最も大きな利益を与えています。
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Sovereign SustainExの活用方法
投資ツールとして
Sovereign SustainExを活用することによって、アナリストやファンドマネジャーが一貫した指標を基準に国別比較を行うことができ、最も大きなリスクを抱えている国を特定し、その原因を突き止めることが可能となります。
その国が最終的に他国に与える影響がプラスかマイナスかを判断するために、当フレームワークで用いている指標について影響の総計を算出します。
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ポートフォリオへの影響の評価
投資ポートフォリオ全体の社会的、環境的影響を把握したいと考える投資家が増えています。シュローダーのSovereign SustainExフレームワークは、新興国債券ファンドなどの幅広い国債のポートフォリオレベルでの影響評価に活用できます。SustainExと組み合わせれば、株式や社債、国債ポートフォリオの評価も可能です(図表5)。さまざまな角度から柔軟に評価することによって、各投資家が自身にとって重要な項目にフォーカスすることができます。
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