■ 取組みの背景
昨今、自動運転や防犯、安全管理、店舗マーケティング等の用途で、AI搭載カメラによる行動認識AIの研究開発が活発になっています。行動認識AIの構築には、大量の人物データが必要となりますが、以下に挙げるような理由から十分なトレーニングデータセットを整備することが困難なケースがありました。
1. 世界的な個人情報保護規制の強化
EUのGDPR[1]や米国カリフォルニア州のCCPA[2]、日本の改正個人情報保護法等の個人情報保護に関する規制整備がグローバルで急速に進み、人物データを利用する行動認識AIの開発には、適切な情報管理体制が必要となり、開発コストが増大してしまう。
2. 事故シーンや危険行動シーン等のエッジケース[3]のデータ取得が困難
エッジケースは発生頻度が少ないため、現実のデータとしての網羅的に取得することが困難な事が多い。また、意図的にエッジケースの状況を作る際には、実施時の危険性が高く、十分な安全管理を必要とすることもあり、大量のシーンを作ることが困難である。
このような背景から、個人情報に該当しないデジタルヒューマンを活用して、多様なエッジケースもカバーした合成人物データセットを構築し、行動認識AIの開発に適用するニーズが高まっています。
■ ジェネレーティブAIによるデジタルヒューマン合成技術
3D技術とAI技術であるGAN[4]を組み合わせることで、低コストで様々な人物モデルで自由に動作や視点角度を操作するデジタルヒューマン合成技術を有しています。
[1] General Data Protection Reguration:一般データ保護規則
[2] California Consumer Privacy Act:カリフォルニア州消費者プライバシー法
[3] エッジケース:一般に、発生頻度は低いが、万一発生した場合には、重大なインシデントに繋がるようなケースを指す
[4] GAN: Generative Adversarial Networks、敵対的生成ネットワーク
[画像1: (リンク ») ]
■ 取組みの概要とその成果
合成人物データセットが行動認識AIのトレーニングデータとして有効であるかを検証するために、複数のシナリオのデータセットに対して、以下の2つの行動認識AIを構築し、精度比較を行いました。(※)
1. 実在データセットで学習した行動認識AI
2. 合成データセットで学習した行動認識AI
(※) 人物行動解析ソリューションを展開するパナソニック コネクト株式会社と共同で検証を実施
その結果、2.の精度が1.と同等以上であり、当社の合成人物データセットが行動認識AIのトレーニングデータとして有効であることを確認できました。これにより、行動認識AIのトレーニングデータセットの準備コストを大幅に削減できるため、行動認識AIの開発期間の大幅な短縮が期待できます。
[画像2: (リンク ») ]
■ 今後の展望
自動運転や防犯、安全管理、店舗マーケティング等の具体的なユースケースに対して、各領域の企業と共同で、合成データセットを活用したAI開発を加速させていきます。さらに、今後は人物だけでなく、多種多様なドメインのトレーニングデータを合成することにより、AI構築におけるデータ基盤を目指していきます。
■ 本件に関するお問い合わせ先
株式会社データグリッド
TEL:075-286-4470
E-mail:info@datagrid.co.jp
■ データグリッドについて
「すべてのデータ、に命を与える。」をミッションに掲げ、AIにより合成された動画像や音声といったデジタルデータ(=合成データ)の産業活用を進めています。デジタル社会におけるデータの量と質を高め、あらゆるものにAIを深く、自然に浸透させた未来社会の実現を目指します。
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