エンドユーザー開発の位置づけがNotes移行のキモ--企業のコラボレーション基盤を考える(8) - (page 2)

富永康信(ロビンソン)

2008-10-13 09:00

簡易DB開発がNotesを使い続ける最大の理由

 Notes移行の最右翼であるマイクロソフトは、「SharePoint Server」でポータルを、「Exchange」でメールに対応しつつ、.NETフレームワークによって高度なアプリケーションを巻き取ろうという戦略を打ち出している。しかし、SQL Serverなどを利用したDB開発には専門知識が必要になるため、Notesのように現場が開発を行うことは難しい。

 NTTデータの「intra-mart」にはメールはないが、ウェブシステムの開発プラットフォームを軸に展開する。反対にネオジャパンの「desknet's」は開発プラットフォームを持たないがグループウェアと簡易なポータルを武器にする。サイボウズ「ガルーン2」はグループウェアとメールに割り切って、Notesを小規模で使っているユーザーを取り込もうとしている。

 各社の動向を見ると分かるように、Notesの大きなメリットのひとつである「簡易DB開発」が実現できる環境が他にないことがひとつの問題となっている。他ツールへの移行後、Notesで可能だった簡易DB開発をExcelやAccessを使うことで代用するといったケースもあるが、運用面で統制を利かせる方法を考えておかないと、結果的に情報漏えいなどのリスクは増大する。

森本圭一氏 「行き過ぎたEUC規制の反動によって、再び現場におけるDB開発環境が見直されている」と語るドリーム・アーツの森本圭一氏

 「実は、この簡易DB開発こそ、ユーザーがNotesを使い続ける理由の7〜8割を占めるほど大きい部分。業務を構造化し、共有化するための重要な手段となっていた」と語るのは、ドリーム・アーツの営業統括本部でテクニカルセールスサポート部の部長を務める森本圭一氏だ。この機能の周辺に、現場の生産性を向上させるノウハウが集結しているという。

再びEUCが求められているが……

 高く評価されるNotesのEUC特性だが、一時は規制が強化される方向にあった。Notesは現場の開発力を引き出すことに貢献したが、その前提に統制の概念が無かったことがDBのはん濫を招き、問題となった。そのため、企業は現場のEUCを制限しガバナンスを強化する方向へと動いた。

 その結果、生産性が著しく低下する現場も表れた。さらに内部統制によって文書管理にワークフローを付与するとか、承認して公開するといった作業が発生。DB改修の依頼が情報システム部に殺到したが、複雑なスクリプトが入れ込んであるDBには手が出せず、数十件もスタックしたままという例もあったという。

 「統制なく開発を許容したことで、DB資産がどこにどれだけ存在するのかを正確に把握できなくなっているのが現状。再構築しようとすると膨大なコストがかかってしまうという理由から、なかなか移行できず、移行してもそこだけ手つかずになっていた」(森本氏)

 その反動からか、再び現場におけるメンテナンスや開発を促すことへのニーズが高まりつつあり、統制を失わない範囲でEUCを復活させたいと考える企業も増えているという。

 Notesからの脱却を考えるユーザーが多い理由はそこにあるという森本氏は、「現代のEUCは作りっぱなしではなく、ワークフローが仕様として可視化できるとか、GUIでフォームが作れるようなメンテナンスの容易性など、利便性のみならず統制が反映でき、証跡も残るようなものが求められている」と説明する。

 EUCの弊害を繰り返さないことを前提に、必要となる権限を委譲して現場のユーザーにも開発に協力してもらう環境が整いつつあるという。

顧客企業の要望から生まれたウェブDB製品

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