今日、ほとんどの表示ツールはBIツールに統合されている。有名な表示ツールを挙げるならば、例えばウェブレポートを作成する「Crystal Reports」がある。Crystal Reportsは世界中で使われており、今やレポーティングのデファクトスタンダードとも呼べるツールだ。OEM提供もされており、マイクロソフトの統合開発環境である「Visual Studio」には、標準のレポート作成ツールとしてCrystal Reports for Visual Studioが含まれている。また、Eclipseに統合することも可能だ。Crystal Reportsの開発元であったCrystal Decisionsは2003年にBusinessObjectsに買収され、現在はSAPの傘下となっている。現在は、SAP BusinessObjectsのソリューション製品として提供されている。
結果を操作できるインタラクティブなレポート
表示ツールを使い、BIで得られた知見や問題点を見える化する。それを見て、どのように判断し、どう行動するのかは人間が決める。あるいは、あらかじめ結果に対するアクションを決めておき、それを業務プロセスに組み込んで自動化してしまう。後者は、市況を常に分析しながら、生産ラインを自動運転して生産量を調整したり、株価に影響を及ぼす様々なデータを分析し、自動的に株を売買したりするイメージに近い。
「表示」のプロセスでは、「誰が」「何を目的として」「どのようなデータを見たいのか」が大切になる。仕事の中での役割(ロール)によって、見るべき指標(観測するポイント)がまったく異なるため、適した表現方法も様々となる。
経営者は経営目標が今どのくらい達成されているかを見たいものだし、企画担当者は顧客満足度を高めるために、顧客の声に耳を傾けたいと考えているかもしれない。また、製造部門のある担当者は、サプライチェーンの効率化をさらに進めるヒントが欲しいと考えているかもしれない。
こうした多様な見える化のニーズに応えるために、最近の表示ツールは集計、分析した結果を表現力豊かに可視化することができる。中には、100種類近いグラフやチャートを用意し、見るべき指標に合わせて選択できるツールもある。また、表示したレポートの中のグラフで気がかりなところを見つけたら、直接そこをクリックして詳細情報を参照(ドリルダウン)するといったことが当たり前にできるようになっている。
一般的なBIツールでは、表示ツールでデータを操作したとしても、元となるソースデータは保護されている。もし、あなたの会社であなた自身がBIツールを使える環境があるのであれば、遠慮せずに自由にデータをいじって、さまざまな側面から「見える化」してみるといいだろう。データの見方を少し変えるだけで、これまで気づかなかった傾向や問題点が浮き彫りになることもある。また、多くのスタッフが自らデータを分析して共有し、それに基づいて行動する企業文化が醸成されれば、競争力の向上にもつながるだろう。
今回は、状況を把握し次のアクションにつなげるBI、「見える化」あるいは「見せる化」する表示ツールについて見てきた。次回は、BIツールを使った「予測」について考えてみよう。