もうひとつは、経営体質をどこまで変えることができるかどうかだろう。
会社更正法の適用後も坂本社長の続投が明らかになっているほか、社員のリストラも行わず、広島工場も操業を続けると同社ではコメントしている。
会社更正法を申請すると、一般的には従来の経営陣は退任することになる。しかし、今回の会社更正法申請ではDIP型と呼ばれる手法をとっており、従来の経営陣が引き続き経営を担うことが可能だ。
会見に同席した小林総合法律事務所の小林信昭弁護士は、「DRAM業界には高度な専門性が背景にあり、半導体事業に関して素人である弁護士の管財人に果たして経営ができるのかという点もある。坂本社長が継続することが、抜本的な経営責任を果たしていくことにつながる」とした。
坂本社長自らも、「会社の行く末をちゃんと見届けなくてはいけないと考えている。責任をとってやめるのは簡単だが、覚悟を持ってやっていく」と発言。「DRAMの火を消したくない」といった言葉を用いて、事業継続する姿勢を自ら強調してみせた。
だが、2009年に公的資金を注入してまで延命措置をしたものの、今回の経営破綻につながった責任は大きいといわざるを得ない。操業を続けるといった広島工場の売却や、米Micron Technologyとの提携なども噂されており、なにかしらの手を打って経営体質の転換に踏み出す必要があるのは明らかだ。
提携については、今回の会見では「今後、事業再建のためスポンサーを選定することも視野に入れている」としたものの、「裁判所などの監督のもとに進めていく」との姿勢を示したに留まった。
水面下で進んでいたとされるMicron Technologyとの提携では、今年2月3日にSteve Appleton会長兼CEOが飛行機事故で急逝。同氏がエルピーダメモリとの提携に前向きだったとされていただけに、これも同社の先行きに暗雲をもたらしたといえる。
2002年に米Texas Instrumentsでの経験などを背景に、鳴り物入りでエルピーダ社長に就任した坂本氏に対する経営手腕への期待は、残念ながら薄れている。そうした世論を吹き消すことができる復活劇を演出できるか。もう次はない。
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